空き部屋を有料で外国人観光客などに貸し出す「民泊」。シェアリングエコノミーの代表格とも言えるこの民泊で、自分の部屋などを活用して民泊ビジネスを展開してきたホストが、民泊サービスから撤退もしくは撤退を検討する事例が、にわかに目立ち始めました。
なぜ民泊からの撤退もしくは撤退を検討する事例が目立ち始めているのでしょうか。この記事では「なぜいま撤退をするホストが増えているのか」「ホストが撤退を考える理由は何か」の理由を、ホストが抱える4つの葛藤から考えていきたいと思います。
撤退理由①「違法」だから・・・
ホストが民泊ビジネスからの撤退もしくは撤退を検討する理由の一つが、民泊ビジネスの「合法性」です。
現在、日本国内で民泊ビジネスを合法的に展開するためには、基本的には次の3つの枠組みの中で事業を展開する必要があります。
- 旅館業法:旅館業法における営業許可(※主に「簡易宿所」)を得る
- 特区民泊:国家戦略特区に指定された地区において特区条例に基づいて認定を受ける
- イベント民泊:地方自治体などがイベントなどの催しに合わせて期間限定で実施するもの
しかし、旅館業法における簡易宿所の営業許可はある程度の高いハードルが設けられているほか、特区民泊は大阪府・大阪市、東京都大田区などでしか認められておらず、イベント民泊も地区・期間限定であるため、これらの営業許可または認定の取得は進んでいないのが実態です。
つまり、さまざまな理由でこれらの営業許可または認定の取得ができないことが、徹底を考えるきっかけの一つとなるわけです。
今国会に提出されて間もなく審議が本格的に始まる民泊新法案(住宅宿泊事業法案)が成立・施行されれば、合法的に民泊サービスを展開できるホストはより増えていくと思われますが、施行は早くても来年1月とみられており、まだ一定期間時間がかかるのが現状です。
「旅館業法における営業許可取得が難しくて、徹底をすることにした」「民泊新法が施行されるまでは、一時的に民泊物件の掲載を停止して一時的に撤退することにした」
徹底するホストもしくは撤退を考えているホストの方々の中には、これらの営業許可の取得難易度や合法性の側面から、撤退を決断する方々も多いとみられます。
徹底理由の一つとして、民泊サービス展開の合法性や営業許可・認定の現状について解説してきました。続いてはほかの徹底理由の一つとしても挙げられる地方自治体の監視強化や世論の批判の高まりについて説明していきたいと思います。
撤退理由②監視強化と世論の非難の高まり・・・
既に民泊から撤退したホストや撤退を検討しているホストの中には、地方自治体からの監視強化や「違法物件」に対する世論の批判の高まりがきっかけになった、という方もいます。
大阪府や京都市などは、市民からの民泊などの苦情を受け付ける専用窓口を既に設置。こういった窓口を設ける自治体は全国的に増加傾向にあります。
そのほか、「違法民泊」の存在がテレビや新聞などで報道されるようになり、ホスト本人の周囲からの風当たりが強くなっている、という背景もあるようです。
そんな中、観光庁も現在抱えているこういった民泊問題の是正に向けて、動き始めています。民泊の専用窓口を開設する、というものです。
民泊に関する苦情を一元的に受け付けるという側面もありますが、民泊施設の適切な開設の相談を受け付けていくという役割もあり、民泊の適正化につなげるというものです。