何が地方活性化の起爆剤となるか・・・。
地方創生を苦しみながら模索し続けている地方において、「民泊」が地域経済復活のキーワード、時には切り札になりつつある日本。そんな中、世界最大級の民泊仲介大手が日本最大級の広域観光組織とタッグを組むというビッグニュースが19日、発表された。
民泊仲介大手のホームアウェイ(HomeAway、米国)は同社の日本支社で、瀬戸内沿岸の観光振興組織「せとうちDMO」を構成する瀬戸内ブランドコーポレーション(SBC、広島市)との業務提携を発表した。
業務提携は、瀬戸内地域の観光資源を生かしたインバウンド観光の推進が目的。豊富な観光資源をどう世界にPRするか模索し続けてきた瀬戸内地域にとってこの業務提携は、「民泊」という枠組みを活用した上で国際舞台での存在感を高める大きなチャンスと言える。
業務提携では、同地域おいて古民家などを含む歴史的建築物を活用した宿泊施設を開発した上で、HomeAwayでの多言語掲載やブロガーの誘致などを通じて海外の旅行者に発信。瀬戸内地域の認知度拡大や観光客誘致、旅行消費の活性化につなげる。
宿泊施設の開発目標数は2021年までの5年間で100棟。HomeAwayは第1弾として同日、歴史的な街並みが残る愛媛県内子町の古民家などを活用した宿泊施設「町屋別荘こころ」と「ホテルこころ・くら」の掲載・予約受付を開始した。
そのほか、HomeAwayはインバウンド旅行者に対するマーケティングデータを、瀬戸内ブランドコーポレーションと共有。瀬戸内地域のブランディングに生かし、登録物件への誘客につなげる。
HomeAwayは、リゾート地などの住宅をオーナーが利用しない期間に貸し出す「バケーションレンタル」を仲介する世界大手企業で、旅行予約サイト運営の米エクスペディア子会社。「休日にピッタリの家を探そう!」をメッセージテーマに、世界190カ国で200万件以上の物件を運用している。
日本支社の木村奈津子支社長は瀬戸内地域について、「自然や文化、歴史、食などの観光資源に溢れている」と強調。その上で、せとうちDMOが日本最先端の広域観光地経営組織で「ユニークな経験のできる施設の増強につながると確信している」と語った。
せとうちDMOは瀬戸内沿岸7県の官民でつくる国内最大規模の広域DMOで、2016年に発足。発表会ではSBCの水上圭社長が、瀬戸内地域の国際水準の観光地域化に向けたHomeAwayとの戦略的提携に期待感を示した。
またHomeAwayは日本国内における実績についても発表。予約リクエスト数が2015年度は前年比183%増、2016年度は同94%増と順調に上昇していることを説明した。
民泊と地方活性化。そのトレンドは今後さらに熱を帯びるとみられている。昨年、国内外からの訪問客への観光促進と地域活性化に関する覚書をAirbnbと締結している岩手県釜石市はその一例だ。
HomeAwayやAirbnbなどの世界民泊仲介大手との提携をテコに、地方創生を実現を目指す・・・。その潮流に今後も注目が集まる。
【会見の質疑応答】
Q:開発した物件を管理する担い手はいる?
■SBC 水上社長
管理が非常に重要と感じている。物件ありきでなく、運営者が必要。現在はそれぞれの社員が担当している。
■SBC マーケティングスペシャリスト木村氏
実際に、担い手がいないという状況はある。
Q:想定しているのは日本人ではなく訪日外国人がターゲット?
■HomeAway日本支社 木村支社長
弊社には3つのミッションがある。優先順位として、一つ目は、訪日外国人。外国人旅行者へのインバウンドマーケティング。全世界に4,000万人のユーザーがいる弊社の強みを活かせる。二つ目は、日本人のアウトバウンド。増えるほど、日本の方にも使ってもらえる。アウトバウンドも絡めていく。三つ目は、日本人の国内観光に対する物件。
Q:古民家の運営をされる方、カギの受け渡しなどで、スマートロックなどを使う予定は?
■SBC マーケティングスペシャリスト木村氏
構想としてはあるが、具体的にはまだ進んでいない。生産効率をあげることがテーマの一つでもあるのでやっていきたい。また、具体的にはまだないが、複数の言語を喋れる方が地方になかなかいないので、"AI"などがあれば良いなと。今後、そういった新しいものにチャレンジしていきたい。
Q:日本語サイトでの掲載は。
■HomeAway日本支社 木村支社長
掲載します。
Q:インバウンドの中でもターゲットは。
■HomeAway日本支社 木村支社長
色はつけない。
Q:オーナーの初期投資額は。
■SBC 水上社長
買い取る、または基本的に物件を持っているオーナーへの負担はない形で運用する。
Q:HomeAwayは今後もこういった提携を検討しているか。
■HomeAway日本支社 木村支社長
まずは瀬戸内で成功例をつくる。そしてこれが一段落ついた後に提携を模索していきたい。
【SBCへのぶら下がり取材】
Q:HomeAwayはFIT層(個人観光客)の集客が中心となるが、ツアー客などの団体客は集客しないのか。
■SBC 水上社長
さまざまな集客の方法を考えている。
■SBC マーケティングスペシャリスト木村氏
ただ古民家などは大きくなく人数に制限があるので、団体客よりFIT層に注力し、かつリピーター客をターゲットにしている。
Q:民泊プラットフォームには、それぞれ集客に強い国やエリアがあります。訪日外国人を呼ぶにしても、その国別の比率は中華圏の比率が大半をしめ、特に中国の伸びが高いです。民泊プラットフォームでも途家や自在家など中国のプラットフォームなどとの提携はあるのか。
■SBC マーケティングスペシャリスト木村氏
今のところ考えていない。例えば広島などは、欧米の観光客が多く、欧米からの観光客を呼び込みたいと考えている。また滞在日数や消費額の観点から、アジア地域であれば、香港やシンガポール、オーストラリアなどからの観光客の誘致を想定している。