「民泊大学」の講義が始まります。今回の教授は大津山訓男さん。
大津山さんが神戸の大学で講師を務める社会人向け『インバウンド民泊』の講義内容をベースに取材し、全5回の講義にてお届けします。
第一回講義は『民泊』から『民旅』という旅全体のキャッシュポイントを抑えるというテーマでした。
続いて、今回のテーマは「不動産で稼ぐ」です。注目の「民泊」分野に不動産企業が参入している現在の市場についてお話いただきます。第二回講義も楽しみです!
【経歴】 元IBM2000年コンサルタント日本の100人に選ばれ、主にIT分野の先端企業の支援や海外進出支援をNPO方式で主宰するBeB協議会を1997年より12年主宰。 日本IBM事業部長を経てCCC増田氏、PASONA南部氏、ウェザーニューズ石橋氏、ADKなどの出資で、アットマークベンチャー株式会社を起業。数多くのベンチャー上場支援や海外進出を120社を支援。12社のIPOを成功させる。 東日本大震災以降は社会貢献活動にも注力し、起業を目指す若者やシングルマザーの民泊ホストを支援。「Airbnb」を学ぶ体験型ゲストを迎えスーパーホストとして大田区や福岡、愛媛、京都でコミュニティ組織化。 また、インバウンド業界で積極的に活動し、観光庁や地域観光協会とともに地域活性化に貢献している。 |
不動産企業は民泊分野に参入し始めている?
私たちアットマークベンチャー株式会社は現在、不動産事業者に対して民泊に関するコンサルティングをしています。まず、不動産事業者の民泊参入の成功事例を紹介したいと思います。
まず、愛媛県松山市にある年商30億円規模の地元密着型不動産会社の成功例を取り上げたいと思います。この不動産会社は民泊ビジネス参入の際、まず後継者候補の方が民泊運営に携わり始めるところからスタートしました。
この不動産会社は、外国人旅行者や日本の若者に安価なお遍路宿を提供する「お遍路ハウス」という民泊事業の構想を持っておりました。
松山市で所有するマンションのワンフロアを活用し、宣伝は自社でフランチャイズ展開している「アパマンショップ」などを通じて行っていこう、というモデルでした。
ポイントは、実際の運用を主に行ったのは千葉県に住んでいた大学院生の息子さんだったということです。
後継者候補である息子さんは千葉から遠隔で宿泊予約などを切り盛りし、現地での清掃は母親が担当。松山市への帰郷の度に経営者である父に運用状況を報告しながら、大学の学費分を自分で稼ぐまでに民泊運用を成功させました。
このお遍路ハウスを実現するために、この経営者である父と息子さんたちが、我が家のAirbnbハウスに民泊体験に来られ、色々とお話をうかがいました。
現在この不動産会社は、全国的に見ても空や家率が高い松山市で、地域No.1ホストとして成功を収めています。
まずは後継者候補の方が不動産ビジネスとしての民泊運営のノウハウを見につける。これは、地方都市における不動産事業者の民泊展開モデルの典型例と言えます。
既に今回紹介した事例と同様の規模で民泊ビジネスを展開している事業者は、全国に300社ほどあります。
また、福岡市には「airBest」というAirbnb完全代行サービスを展開する会社があります。
この会社はかつて、急成長を遂げる地方発の不動産事業者として注目浴び、テレビ東京の経済ドキュメンタリー番組「ガイアの夜明け」などで特集されるなどしました。
しかし事業の急拡大が2008年の金融危機「リーマンショック」の時期と重なり、事業が破たん。しかし現在は、旅館業法における営業許可(簡易宿所)を得た民泊ホテルを展開し、また注目を集める企業として復活しました。
破たんからの復活劇。この尊敬すべき経営者は現在、この合法民泊ホテルの展開で再度、株式公開(IPO)を目指しています。
この福岡の企業はどういった事業を展開している?
オーナーが1棟所有するビルを改装して、民泊ができる簡易宿所として外国人旅行者や国内旅行者などに提供しています。
オーナーが1棟所有するビルをリノベーションし、旅館業法における簡易宿所営業の許可を得ることで民泊を合法的に行い、運用スキームをつけてビルの不動産価値を向上させる。これにより、空き室が増加した不動産を再生させます。
この会社は、不動産事業を展開していた際にビルや不動産の販売を手掛けていたため、仕事上でお付き合いがあったオーナーの方やオーナーが所有していた物件のことを、よく知っていました。
そのため、例えば「あのオーナーの物件にはまだ余裕があって民泊に向いてそうだ」とわかる。地元の不動産であるため立地的にも民泊ビジネスに適しているか、判断がしやすいという強みもありました。
そしてこの会社の経営者の息子が、東京の大手銀行不動産部のエリート社員なんです。
実はこの息子は以前、民泊仲介大手サイトである「Airbnb」が盛り上がっていること、その仕組みを勉強した上で経営者である父に教えました。
この息子さんは福岡に帰省したら自分で民泊ビジネス始めようと思っていたのですが、しかしなんと、お父さんが自身で始めてしまったというのです(笑)
築10年のビルの特定フロアを改装し、旅館業法における簡易宿所営業の許可を取得して始めた合法民泊ホテル事業。そしていまは福岡のほか、大分県の由布院でも事業を展開しています。
これから伸びる新業態のインバウンド民泊と言えるでしょう。簡易宿所を取得した1棟マンションなので、国会提出された民泊新法案(住宅宿泊事業法案)における営業日数の180日上限規制を受けずに、永続的にビジネスを運営できるというメリットも大きいでしょう。
―開発から集客まで自社でしている?
はい。
すごい部分は、不動産オーナーにリノベーションして1棟まるごと売るのですが、販売価格の10%をコンサル料金として前金でとっていることです。
つまり、1億円で販売するとすれば1,000万円が入ることとなります。代行手数料もとりますし、稼働率は9割以上。やはり不動産事業者の経験者は強いですね。
簡易宿所の取得は進んでいる?
弊社は、民泊規制が最も厳しいと言われている京都で、簡易宿所の営業取得に関するミートアップをこれまでに4回ほど開催しています。
京都では現在、民泊ビジネスを合法的に展開するためには、旅館業法における簡易宿所営業の許可を取得することしか方法がありません。
一方、京都では既に700件もの物件が簡易宿所営業の許可を取得して民泊サービスを展開しており、中には1人で営業許可を5~6件取得している強者もいます。
従来、京都のマンションでは簡易宿所営業の許可取得できないとも言われていました。しかしホストの中には1棟分まるごと営業許可を取得した方もいて、この方は稼働率90%以上で現在も運用を続けています。
さらにに、町屋タイプも展開しており100平米以下の長屋での古屋がメインです。
我々は現在、ホストなどに対してミートアップなどの活動をボランティアで行っていますが、最終的にはファイナンスやブッキングの準備までを支援したいと考えています。そして、京都で蓄積された簡易宿所営業の許可取得のノウハウを、横展開したいと思います。
また福岡では、旅館業法が昨年12月に規制緩和されたため、民泊において需要と供給がマッチしてきています。