ベンチャー企業の弁護士から見た民泊新法 スペースマーケットに出向中の石原遥平弁護士

「民泊大学」の講義が始まります。今回の教授は、レンタルスペース予約サイトを運営する株式会社スペースマーケットの企業内弁護士、石原遥平さんです。

大手法律事務所からベンチャー企業へ出向中の石原弁護士の目には、民泊業界がどのように映っているのか、講義していただきました。

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民泊に出会ったきっかけ

大学時代に、単身でフランスに行った野球サークルの先輩が、SNSで「こんなサービスがある」とAirbnbを紹介していたのがきっかけでした。2008年から2009年頃ですね。

「シェアリングエコノミー」という言葉自体も、それほど敏感に追っていたわけではありませんでした。ただその頃、たまたま友人だった(スペースマーケット社CEOの)重松が起業したタイミングだったこともあり、シェアリングエコノミーに関心を持つようになりました。

そして、重松に今後の弁護士人生について相談した際、ベンチャー界隈に関心があることを伝えたところ、「うちは今から伸びるから来い」と、お誘いいただきました。シェアリングエコノミーを勉強し始めたのは、そこからです。

本格的に民泊に焦点を当てて勉強を始めたのは、一昨年2015年の12月ぐらいからです。スペースマーケットが2016年の夏(実際にローンチしたのは同年7月)から適法な民泊を始めることになったので、規約を修正したり、そもそも民泊をどういう条件で行っていいのかを、ウェブセミナーで講義したりしました。

最近では、一人で出張に行くとき、Airbnbで泊まったり、海外に行ったときはUberを使ったりしていますね。

 

民泊新法についての情報収集先は?

スペースマーケットは新経済連盟に加入しているので、住宅宿泊事業法(民泊新法)が起案される見込みになってから、楽天さんやLIFULLさんなどが集まって定期的に行われていた観光庁との意見交換会に、私も参加させていただいていました。 

 

企業内弁護士として、新法に関わる利害関係にはどう折り合いをつけているのか

スペースマーケットの社内の人間の立場として難しいのが、新法の日数制限がどちらに転ぼうと、残りの185日を民泊以外の目的でスペース貸しするという選択ができるので、日数制限が厳しくなるほど本業であるスペース貸しの可能性が広がるという点です。 

ただ、ホストやゲストに使いづらい制度になってしまうと、それはシェアリングエコノミーの市場自体を収縮させてしまいます。シェアリングエコノミー業界全体の利益で見ると、規制が分かりやすく合理的なものであればOKですが、極度に面倒なものや、不合理なもの、旅館業界のためにわざわざ作ったような理由がよくわからないものは、除外したほうがいいですね。業界全体の立場から、業界全体として盛り上げるための方法を発言することはしていました。

 

企業内弁護士の働き方

企業内弁護士がクライアント(雇用主)ファーストなのは間違いないですが、所属企業にはその先のステークホルダーもたくさんいますし、業界全体の繁栄も企業にとっては重要です。シェアリングエコノミー協会が伸びれば、会社の利益にもなります。 

現時点(2017年7月時点)で私が担当している業務は、スペースマーケットのプロパーの仕事が半分いくかいかないかぐらいで、認証制度関連のシェアリングエコノミー協会の仕事が6割弱ぐらいになっているでしょうか。企業内弁護士といっても、個人で仕事も受けていいという約束にしてもらっていますので、業務時間外に他のお仕事もやって事務所時代の収入に足らない分を自ら補てんしているというイメージですかね。

そういう意味では、普通の「インハウスロイヤー(企業内弁護士)」と聞いてイメージする、完全に会社の雇用に入るような立場とは違います。とはいえ、弁護士の本来的なイメージである、いろんな企業を外部から見るアドバイザーという働き方とも違うので、私の立場は二つのイメージの中間ぐらいですね。一つの企業に片足を突っ込みながら、外部弁護士としてもいろんな仕事をしているという感じです。

 

シェアリングエコノミー業界と弁護士

弁護士の世界で第一人者になろうとしたら、「何々法」と呼ばれた時点でもう遅いと考えています。法律ができる前から関わることでルールメイクの場面に関与できたりするので、シェアリングエコノミーも今ぐらいの時期が一番やりがいがあって、面白いと考えています。