「民泊大学」の講義が始まります。今回の教授は、日本橋くるみ行政書士事務所の代表行政書士、石井くるみさんです。
日本の民泊業界に早期から着目し、行政書士として数多くのホストや参入業者にアドバイスをされてきた石井くるみさんに、住宅宿泊事業法(民泊新法)の成立を受けた今、今後の業界の動向を講義していただきました。
民泊に出会ったきっかけ
2年前の秋冬頃、大学時代に仲の良かった先輩二人が起業して一周年ということで、その創立記念パーティーにお招きいただいた際でした。お二人の創業時についてのお話の中で、創業資金はAirbnbからの収益で集めていたということを伺いました。
最初にそれを聞いた時は、正直「そんなうまい話があるのかな」という疑問を持ちました。まず、不動産を借りるための賃料もかかるのに、宿泊客があまり来ない時はどうするのか、それが不思議でしたね。伺ってみたら、「お客に困ることはないから、赤字なんかあり得ない。」と、そう返されました。
でも、それほど上手い話があれば、なぜもっと多くの人が昔から民泊という不動産投資方法を選んでいないのか、不思議に思ったんです。
色々調べてみたら、どうも旅館業法
それまでも不動産を専門にしていた行政書士として、民泊にはとても興味を持ちました。
「民泊行政書士」の誕生
旅館業法の存在は知ったものの、詳しい書籍や情報があまり存在して
自ら法律を読んで調べていくうちに、知識がついたので、それを発信していこうと思いました。ブログでまず発信して、2015年末には初回のセミナーを開催しました。セミナーは思った以上に反響がよく、参加者の方からも、「これまでは運用代行業者のセミナーばかりで、『儲かる』という話しかなかったので、法律面の話は新鮮です」と言っていただいたり、好評でした。
セミナーの回数を重ねていくうちに、色々なところで登壇のお誘いをいただくようになりました。
民泊における行政書士の役割
民泊の個人ホストは、そもそも許可を取得して民泊を事業として営むことを考えている方は少数なので、あまり行政書士としては出番がありません。基本的に行政書士は、事業成功のための許認可取得のサポートをビジネスにしています。したがって、弊事務所では新たな事業開拓として民泊に取り組む事業者の方を対象にして旅館業の許可取得の申請を行ってきました。
民泊行政書士を始めた時に難しかったことは?
旅館業の許可が取得できるか否かの見極めですね。最初の見極め判断を誤ってしまうと、許可取得のために高額な工事を実施したのに、結果として許可が下りないという事態に陥ってしまいます。今でもそこに一番神経を使いますね。
具体的には何をするのか
申請をする前に、まずは物件の調査をします。
調査で、そもそも旅館業の許可取得が可能か不可能かを判断します。可能だとしても、どのような工事が必要か、工事費用が相当かかりそうかどうか、などを依頼者にお伝えします。そこで投資に見合わなければ、許可申請をしないという人もいます。物件を民泊にした場合の収益のシミュレーションは、別途専門の事業者に見積もってもらっています。
地域によって仕事の内容も全く異なります。許可の基準が違いますし、行政担当官の温度感も違ったりします。
調査の際に着目する部分は?
まずは、用途制限地域かどうか。あとは、旅館業の対象面積が100㎡を超えているかどうか、建築確認申請図書等の資料がどれぐらい揃っているのか、戸建住宅の場合は3階以上か否か、構造が耐火建築物か否か、などに着目します。
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