【民泊新法対応】「民泊経営と税金」を徹底解説 ITアカウンティング代表 宮嵜 雄仁さん

「民泊大学」の講義が始まります。今回の教授は、会計税務サービスを専門としている株式会社ITアカウンティング(本社:神奈川県横浜市)の代表取締役、宮嵜雄仁さんです。

民泊を始めるにあたって必要な「税」の基本知識について、講義していただきました。

本記事内には、「民泊と税金」を宮嵜さんがライブで講義して下さる、「【民泊新法/特区民泊/簡易宿所対応】民泊のための会計税務を徹底解説!」(10/14開催)についてのご案内もあります。

民泊に出会ったきっかけ

2015年9月です。その頃、民泊がかなり収益性が高いという話を聞いて、友達と始めたのがきっかけです。

当時は「民泊」などというワードを聞いたことがなく、専門家でありながら民泊にかかる税金などに目を向けるわけもなく、ただ面白そうという興味先行で始めた次第です。当然のごとく、ネットにも民泊の税金について書いているサイトなどは存在していなかったと記憶しています。民泊運営自体は、最盛期に19部屋くらい運営をしていました。

その後、民泊の運営を進めるにあたり、税金の問題が今後は大きな問題になるな、という直感から、急遽自分の本職である民泊の税務を研究し始めるに至った次第です。

 

まずは民泊税務の基本的なところから

まずは民泊に関係しそうな税目を整理していきます。民泊を個人で始めた場合と、法人で始めた場合に分けましょう。

「固定資産税」は、民泊をする物件について自らがオーナーである場合にかかります。不動産を持っていることでかかる税金です。

上に記載されている税目の他にも、民泊と関係する税金として「宿泊税」があります。宿泊税は、宿泊客側に、東京と大阪でのみかかります。これは旅館業法上のホテル・旅館を営業している場合に、宿泊客に課されますが、今後、民泊における課税の強化という側面から、課税ベースを広げてくることが予想されます。もちろん民泊新法上の民泊においても宿泊税の議論は進んでいくと思います。

 

「グレー」の民泊にも税金はかかる?

違法な民泊でも、税金は課されます。基本的に税金は、違法か合法かで区別しません。「儲けたなら払え」というのが原則で、違法か合法かは刑法やその他の法律の領域であって、税法はその線引きとは関係ないんですね。極論、麻薬取引で収益を上げている場合でも、税金がかかるのと一緒ですね。

「グレーだから」、「違法だから」と言っても、税法上は無影響なので、所得として認識され、課税されることには変わりありません。

 

ズバリ民泊のホストができる節税対策は?

まず民泊をするにあたって、自ら不動産を所有して民泊をする場合の「オーナー型」と、不動産を賃貸してそれを民泊として貸し出す場合の「転貸型」があると思います。

実は私自身、「転貸型」については、節税する余地がほぼないに等しいと思っていました。というのも「転貸型」は、結局のところ、ゲストから宿泊代金をもらい、そこから諸費用や不動産のオーナーに払う賃料を差し引いた額が所得になるというシンプルなビジネスモデルです。入ってくる所得に対して所得税や法人税を払うというだけなので、節税する余地がほぼないと思っていたのです。

ところが!あったんですね。大きな節税ポイントを見逃していました。民泊を運営するクライアント様の会計税務を担当させていただく中で気付いた、ものすごく大きな節税ポイントです。

それは、法人税や所得税ではなく「消費税での節税」です。

税務上、消費税は法人税や所得税に比べて非常に地味ですが、節税額が数十万円から、人によっては数百万円を超えてくるものまであり、ばかにならないものなんです。

そこに気付くまでは、以下に述べるくらいの節税策くらいしかないかなと思っていました。代表的な節税策である、個人における「所得区分」の変更や、法人を利用したスキームをまず先にご説明しますね。

 

個人における「所得区分」の変更

まずは一般的な節税策である、個人における「所得区分」の変更についてです。

個人として民泊をする場合ですが、所得税は12の所得区分に分かれています。例えば「事業所得」、「雑所得」、「不動産所得」などの区分があり、まずは自分が得た所得は12区分のうちどの区分に属するのかという選別から、税金の算出が始まります。

通常なら、サラリーマンで副業をされている方は、副業からの所得が「雑所得」になることが多いのです。なぜなら、本格的に事業的な規模まではいかない限りは、副業である民泊から得る細かい収入は、「雑所得」に当てはまるからです。

一方、本格的に事業としてされている方は、「事業所得」や「不動産所得」になります。事業所得になると、算入できる経費の範囲も広まります。

「雑所得」では、経費の範囲が狭くなりやすく、つまり計上できない経費が出てきます。これは非常にセンシティブな言い方ですが、副業(雑所得)と専業(事業所得等)では、その認められる必要経費の範囲が狭くなる可能性があるということです。サラリーマンにとっては給与所得が主体なわけですから、専業の起業家と比較し、副業についてはいろんな点で必要経費に算入できる割合が狭まってくるのが当然のことと考えます。

算入できない経費があると、コストとして差し引けないので、利益が高く出てしまいます。利益が高くなればなるほど、課税額は高くなるので、税務上マイナスです。

たとえば「小規模企業共済」は、どこの節税の教科書にも出てくる制度で有用なものですが、副業のサラリーマンは入れません。この企業共済は、最大年間84万円の所得圧縮ができる節税案です。ここに所得区分の変更による節税の可能性が出てくるということです。 

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