不動産投資のその先―新法の下で問われる民泊の意義 民泊総合研究会代表 阿部ヨシカズさん

「グレー」の中で特に気を付けていた点は?

何が一番リスクか、というのは常に考えていました。

例えば旅館業法違反といっても、それはどういう時に取り締まられるのかと考えると、結局は何かトラブルが起きた時です。そういう意味では、トラブルにならないような運用を一番心掛けていました。細かいところで言うと、ゴミの捨て方などもそうですし、近所迷惑をかけないような心掛けですね。

 

副業で民泊をしていて困ったエピソード

第一に、サラリーマンだと、何かあった時に自分自身は日中すぐに駆けつけられないということですね。近隣とのトラブルでゲストにご迷惑をおかけしてしまったこともあります。ちょうど運用代行業者も現れ始めた頃だったので、それをきっかけに何件かは代行業者を任せるようになりました。

第二に、鍵をなくしたというのはよく聞く話ですよね。平日の夜中でも、ゲストが明日飛行機で飛び立たなければいけないのに家の鍵を無くしたという連絡が入ったりします。終電時間を過ぎていたので、タクシーで駆けつけることもありました。今は鍵のトラブル等も対応できる代行業者にお願いしています。

あとは、物件のセットアップに土日が潰れてしまうことがあるぐらいですかね。メッセージ対応は、私は主にスマホ使い臨機応変に対応していますが、仕事中一切スマホを使えないという職場にいたらリアクションが遅れてしまい、ゲスト・ホスト共に疲弊してしまう可能性があります。ここは柔軟な対応が重要ですね。対応時間を記載しておくとか、マニュアルを充実させておくとか。

 

副業としての限界

今から2年ほど前の段階で、同時に10物件ほどの運用に関わるようになっていたのですが、自分1人で対応するのはしんどいと感じるようになっていました。レビューを保たなけば収益も下がってしまいますし、一人でそれ以上やるには限界がありました。

それからは物件を増やしていくというより、運用の仕方やトラブルの回避方法、民泊やAirbnbについての知識をどんどん広め、ちゃんとした仕組みとして日本に定着させることが新たな目標となりました。2015年の夏ぐらいですかね、ちょうどその頃に出版のオファーもあったので。

 

ちょっとだけ教えてください、儲かるために大事なこと

積み重ねが予想以上に評価されていること、ですかね。レビューの部分などですね。

あとは、安い高いだけではなく、外国人が好む建物があります。これは意外にも、清掃業者の方から情報を仕入れられたりします。

民泊:投資方法としての厳しさ

2014年から2016年にかけて、民泊業界は大きく変わっていきました。2015年に入ったぐらいか、予約数がピークを過ぎました。それまでの予約数の多さがそもそも異常だったとは思いますが、民泊が儲かるという噂が広まり、人気エリアに競合する物件が増えたことが一つの要因でしょう。

宿泊料金も日々変わっていますし、一般的な不動産投資と違って民泊は先が読めない水物です。先月まで黒字だったのに、次の月赤字なんてよくあることです。その上、先程お話ししたように代行業者に任せるとなると、そのフィーも含めて利益を上げるというのは、なかなか難しいです。

オーナーに黙って民泊を運用する方法が、賃料も負担せず収益を上げる手っ取り早い方法かもしれません。しかし、不動産側から入った者としては、やはりオーナーに無断で「又貸し」することは契約違反であり、その中でビジネスを行うのであれば、これは非常にリスクの高いビジネスだと考えていました。利益は出さないといけませんが、私はただ儲かればいいということをしたくありませんでした。民泊が無断転貸に当たらないとしても、オーナーに黙って運用するのでは、いつかバレますし、いつまでも持続できる投資方法ではありません。特に最近は、オーナーに知られてしまったという相談者も増えていますね。

 

「面白くない決まり」への悲観

2013年に特区民泊の法が制定され、2016年に最初の特区民泊が始まりましたが、結局あまり広まりませんでした。その時点で、行政が積極的に民泊を取り入れることに対しての限界が現れてしまっていました。試みが面白いと思っていても、行政はちゃんと管理するまでの責任はとれない。

しかし、さすがにこのままではオリンピックを迎えられないので、今回の住宅宿泊事業法(民泊新法)につながったのだと思います。オリンピックを理由に行政も動きやすくなっています。

ただ、民泊新法は旅館業界と不動産業界の話し合いで決めていたので、どう転んでも民泊業界側に有利な法はできませんよね。「法律はこうだから」となってしまうと、民泊としてのせっかくの便利な機能やメリットなどが削がれてしまう危険があります。

180日という日数規制に関しては、世界的に言えば、とても中途半端ではあります。しかし、そこから各地域がどう条例を定めていくかは今後重要になりますね。例えばアメリカですと、ニューヨークとカリフォルニアでは、ニューヨークの規制のほうがかなり厳しいです。そのような地域差が日本でも生じうるでしょう。

新法による民泊の合法化は、大手企業の参入に繋がり、市場規模の拡大に貢献するかもしれません。だとしても、やはり民泊は個人と個人の関係で成り立つものであり、大手企業が民泊をやるというのにはピンときませんし、それはホテルなのでは?と思ってしまいます。私が問題意識として持っていた、遊休不動産をどう活用するか、という課題と、大手企業が成し遂げようとしているものでは、違いがあります。

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