「法律という土俵で民泊の発展に尽くす」許可不要を訴える石原一樹弁護士

「民泊大学」の講義が始まります。

今回の教授は、東京都港区の窪田法律事務所に所属する石原一樹弁護士(31)。

弁護士でありながら、東京都江東区や大阪市に対して「民泊を行うためには旅館業法に基づく営業許可を受ける義務はない」と確認訴訟を起こすなど、民泊業界においても広く注目を集めています。

大阪市に対して3月9日に訴訟を起こした理由や、ヤフー株式会社で企業内弁護士として勤務する中で民泊に関わるようになった経験、政府が今国会に提出する予定の「民泊新法」(住宅宿泊事業法)の問題点や「旅館業法」などについて、幅広くお伺いします。

民泊に出合ったきっかけは何ですか?

ヤフー株式会社には企業内弁護士として2013年から2年間在籍しました。そして2014年に会社が始めた軽井沢の貸別荘事業に関わった経験が、私と民泊との最初の出合いでした。

執行役員の小澤隆生さん発案のプロジェクトとして、軽井沢の高級別荘に1泊から宿泊できる「Yahoo! トラベル 軽井沢の別荘特集」が進められることになり、私がその法務担当者に指名されました。

このプロジェクトはマンスリーの1日単位版、言うなれば 「デイリー貸別荘」というものでした。

最初に事業内容を聞いた時は「旅館業法に抵触しないか?」がポイントになると思いました。しかし最終的に、「短期賃貸借」というスキームに違法性はない、という判断をしました。

そして一般的な賃貸借契約と同様に、ゲストが「原状回復義務」を持ち、「寝具の提供」もしない。あくまで短期の賃貸事業としてサービスを提供する、という考え方です。

この「原状回復義務」とは、賃貸物件を引き払う際には借り主側がクリーニング費用を負担する、というものです。「デイリー貸別荘」でも宿泊者側に清掃をする義務がある、という同様の形をとりました。

寝具や清掃サービスについては、当該提供事業者会社のリンクを貼り紹介することで、貸主は寝具や清掃サービスを提供しないという整理をしていたと思います。

結果的に、サービスを休止することになりました。保健所を通して、(仲介をするヤフーではなく)別荘貸主の行為は「旅館業法に抵触する恐れがある」と指摘されたからです。

民泊との関わりはその後どうなりましたか?

私は、ヤフーを退職した以降も、デイリー貸別荘や短期のマンション賃貸は、賃貸借事業であって旅館業法は適用されないと考えていました。

そのため、別件で同じような相談を受け保健所と折衝したときも、保健所から旅館業法違反の可能性を指摘された際、賃貸借について定めた「借地借家法」に則って事業を行う以上、違法性がないと主張することもできると考えていました。

保健所との見解の相違において、ポイントになった点の一つが「契約期間」でした。

「借地借家法」には建物の賃貸借契約の契約期間について、 「何日以上でなければ賃貸借契約とは認めない」という規定がなく、下限がありません。

「1日単位であっても賃貸業ができるはずだ」と考えていたのですが、保健所からは「旅館業法が適用されるので違法の疑いがある」と言われてしまいました。そこで「ではマンスリーマンションも旅館業法違反ということですよね?」と保健所の担当者に聞くと、「30日以上であれば問題ない」という返答でした。

賃貸借と旅館業は一般的に、滞在・宿泊日数が30日以上か未満かで区別されると思われがちですが、実際には法律の規定においてこの「30日ルール」は一切登場しません。

つまり、保健所や厚労省が述べているこの「30日」という境目は、実際にはないんです。

ただ単に、不動産業と旅館業の管轄省庁が異なるがために、便宜上、管轄をするために設けられたのではないかと推測しています。

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