【民泊新法のポイント(第1回)】住宅宿泊事業を行うことができる住宅について 民泊弁護士 野村祐美子

弁護士の野村祐美子と申します。

本連載では、民泊事業に携わられる皆様に、平成30年(2018年)3月15日より届出が開始され、6月15日に施行される住宅宿泊事業法(以下「民泊新法」又は「法」といいます。)[i]のポイントをご説明致します[ii]

第1回目となる今回は、住宅宿泊事業を行うことができる「住宅」のポイントについてです。

住宅宿泊事業を行うことができる住宅について

民泊新法において住宅宿泊事業を行うためには、届出を行う住宅が、民泊新法における「住宅」[iii]に該当する必要があります。民泊新法における「住宅」に該当するためには、設備要件居住要件を満たしている必要があります[iv]

1.設備要件

民泊新法の「住宅」に該当するには、まず、「台所」、「浴室」、「便所」、「洗面設備」が設けられている必要があります[v]

これらは、一般的に求められる機能を有していればよく、例えば、「浴室」については、浴槽がなくても、シャワーがあれば足り、「便所」については和式・洋式等の別は問いません[vi]

また、ユニットバスのように、浴室、便所、洗面設備の機能を一つの設備が有している場合でも構いません[vii]

これらの設備は、同一の敷地内の建物で一体的に使用する権限があり、各建物に設けられた設備がそれぞれ使用可能な状態である場合には、必ずしも1棟の建物に設けられている必要はなく、例えば、「浴室」のない離れについて、「浴室」のある同一敷地内の母屋と併せて一つの住宅として届け出ることもできます[viii]

なお、届出住宅に含まれていない近隣の銭湯を、浴室等として代替することはできません[ix]


2.居住要件

民泊新法の「住宅」のもう一つの要件として、次のいずれかに該当する家屋でなければなりません[x]

①  現に人の生活の本拠として使用されている家屋
②  従前の入居者の賃貸借の期間の満了後新たな入居者の募集が行われている家屋
③  随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋

①「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」とは、現に特定の者の生活が継続して営まれている家屋であり、短期的に家屋を使用する場合にはこれに該当しません[xi]

②「入居者の募集が行われている家屋」とは、住宅宿泊事業を行っている間、分譲(売却)又は賃貸の形態で、人の居住の用に供するための入居者の募集が行われている家屋です[xii]。なお、広告において故意に不利な取引条件を事実に反して記載している等、入居者の募集の意図がないことが明らかである場合は、かかる要件を満たしません[xiii]

③「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋」とは、生活の本拠としては使用されていないものの、その所有者等により随時居住の用に供されている家屋です[xiv]。当該家屋は、既存の家屋において、その所有者等が使用の権限を有しており、少なくとも年1回以上は使用している家屋であり、居住といえる使用履歴が一切ない民泊専用の新築投資用マンションはこの要件を満たしません[xv]

③の要件に該当する具体例は、以下のとおりです[xvi]

・別荘等季節に応じて年数回程度利用している家屋
・休日のみ生活しているセカンドハウス
・転勤により一時的に生活の本拠を移しているものの将来的に再度居住の用に供するために所有している空き家
・相続により所有しているが、現在は常時居住しておらず、将来的に居住の用に供することを予定している空き家
・生活の本拠ではないが別宅として使用している古民家

以上、今回は、住宅宿泊事業を行うことができる「住宅」のポイントについてご説明致しました。

野村 祐美子(のむら ゆみこ)
森・濱田松本法律事務所 弁護士
訴訟等の紛争解決、企業法務全般を幅広く手掛ける。民泊新法・旅館業法など宿泊関連分野にも注力しており、「住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)のガイドラインについて」(ARES不動産証券化
ジャーナルVol.41)を共同執筆。

──────────────────────────────

[i]      民泊新法の具体的な規制内容については、さらに、住宅宿泊事業法施行令、住宅宿泊事業法施行規則(本連載では「規則」といいます。)、厚生労働省関係住宅宿泊事業法施行規則(本連載では「厚労省規則」といいます。)及び国土交通省関係住宅宿泊事業法施行規則(本連載では「国交省規則」といいます。)の各政省令が公布されています。また、民泊新法に係る解釈及び留意事項等に関して「住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)」(本連載では「ガイドライン」といいます。)が公表されています。

[ii]     本連載の中で意見にわたる部分は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する法律事務所の見解ではありません。

[iii]    法2条1項、同条3項

[iv]     法2条1項

[v]      法2条1項1号、規則1条

[vi]     ガイドライン1-1.(1)①

[vii]    ガイドライン1-1.(1)①

[viii]   ガイドライン1-1.(1)①

[ix]     ガイドライン1-1.(1)①

[x]      法2条1項2号、規則2条

[xi]     ガイドライン1-1.(1)②

[xii]    ガイドライン1-1.(1)②

[xiii]   ガイドライン1-1.(1)②

[xiv]   ガイドライン1-1.(1)②

[xv]    ガイドライン1-1.(1)②

[xvi]   ガイドライン1-1.(1)②