民泊新法・改正旅館業法の取得を後押しする「消防法施行規則の改正案・現行法」とその解説 office OTA.代表/建築士 大田聡

今回は、6月15日の住宅宿泊事業法(民泊新法)、改正旅館業法の施行に伴う、消防法施行規則などの一部を改正する省令案の意見公募(パブリックコメント)が3月に行われ、最終的な改正の詳細発表を心待ちにしている方も多いと思います。

そこで、「消防法施行規則の改正案・現行法」を確認し、改正に備えましょう。

改正案についてはこちら
https://minpaku-univ.com/news/10044/

共同住宅・寄宿舎の一部をホテル等として利用する際に関わるメインの消防設備は、「スプリンクラー・誘導灯・自動火災報知設備」の3つと考えられます。

共同住宅とホテルの基準を比較しながら、説明をします。

スプリンクラー

・共同住宅でスプリンクラーが必要な場合
(ⅰ)11階建て以上の建物の11階以上の階のみ

・ホテルでスプリンクラーが必要な場合
(ⅰ)11階建て以上の建物(すべての階に必要)
(ⅱ)4階建て以上の建物(1500㎡以上の階)
(ⅲ)(延べ面積が6000㎡以上)
(ⅳ)(地階・無窓階床面積が1000㎡以上)

スプリンクラーは11階建て未満であったり、面積の大きな建物でない場合は設置不要です。

ここで注目すべきは11階建て以上の建物です。
現行法では、10階以下のホテル利用する箇所に設置が必要になりますが、今回の改正案では、(11階建て以上の)建物の構造上の条件を満たしている場合はスプリンクラー設備の設置が免除されるとされています。

誘導灯

・共同住宅で誘導灯が必要な場合
(ⅰ)11階建て以上の建物の11階以上の階のみ
(ⅱ)(地階・無窓階がある場合)

・ホテルで誘導灯が必要な場合
(ⅰ)すべてのホテルで必要

基本的にホテルは誘導灯が必要になります。

ここでも注目すべきは11階建て以上の建物です。

現行法では、10階以下の一部をホテル利用する場合、該当階以外にも設置が必要になりますが、今回の改正案では、(11階建て以上の)建物の構造上の条件を満たしている場合は該当階のみの設置でよいとされています。

また、ホテル利用する面積が建物全体の1/10以下、かつ、ホテル利用の面積が300㎡未満の場合、「小規模特定用途複合防火対象物」に属し、地階・無窓階及び11階以上の階以外の階では設置不要です。(建物全体が(9)項ロ:一般の公衆浴場の場合を除く)

自動火災報知設備

・共同住宅で自動火災報知設備が必要な場合
(ⅰ)11階建て以上の建物の11階以上の階のみ
(ⅱ)延べ面積が500㎡以上
(ⅲ)(地階・無窓階床面積が300㎡以上)
(ⅳ)3階建て以上の建物(300㎡以上の階)

・ホテルで自動火災報知設備が必要な場合
(ⅰ)すべてのホテルで必要

すべてのホテルは自動火災報知設備は設置が必要になります。

自動火災報知設備は面積や条件で設置基準が変わるので、その部分を解説します。

・小規模特定用途複合防火対象物(ホテル利用する面積が建物全体の1/10以下、かつ、ホテル利用の面積が300㎡未満)
小規模特定用途複合防火対象物に該当する場合は、自動火災報知設備を建物全体ではなく、該当箇所のみの設置でよい。

・特定小規模施設(現行法では300㎡未満、改正案では建物全体が500㎡未満かつホテル利用する面積が300㎡未満)
特定小規模施設に該当する場合は、特定小規模施設用自動火災報知設備(ワイヤレス)を使用することができ、建設費を抑えることができる。(ホテル利用面積が300㎡以上の場合は有線タイプにする必要がある。)

ホテル・簡易宿所の取得を後押しする「建築基準法の改正」とその解説  office OTA.代表/建築士 大田聡