6月15日の住宅宿泊事業法(民泊新法)や改正旅館業法の施行に伴い、総務省消防庁予防課が3月6日から4月4日にかけて実施した「消防法施行規則等の一部を改正する省令等について」のパブリックコメント(意見公募)結果が1日、明らかになった。意見提出者数は13人(意見数27件)だった。
消防庁が消防法施行規則などの改正を実施する理由は①民泊新法下での民泊事業の開始(民泊新法)②客室の最低面積基準が収容定員1人当たり3.3 ㎡以上とする緩和(旅館業法施行令の修正)③複数の簡易宿所で共同で玄関帳場等を設置する場合の取り扱いが示されたこと(簡易宿所営業における玄関帳場等の設置について」(2017年12月15日付・生食発1215 第3号)——の3点。
パブリックコメントにおける改正案では、スプリンクラー設備の設置基準の見直しや誘導灯の設置基準の見直し、非常警報設備の基準の一部改正などが盛り込まれている。詳しくは「民泊新法・改正旅館業法の取得を後押しする「消防法施行規則の改正案・現行法」とその解説 office OTA.代表/建築士 大田聡|民泊大学」を参照。
民泊新法・改正旅館業法の取得を後押しする「消防法施行規則の改正案・現行法」とその解説 office OTA.代表/建築士 大田聡
意見公募では、不在型民泊で火災が発生した場合の宿泊客による初期消火体制や通報体制、宿泊客に対する避難誘導体制などについて、防火管理体制の充実に向けた「ソフト面」の検討が必要とする意見があった。
また旅館業法を想定した「365日稼働可能な宿泊施設」と民泊新法を想定した「最大180日稼働するにとどまる届出住宅」(民泊新法を想定)について、「火災の生じる危険性は異なる」という意見もあった。その上で意見では「火災の生じる危険性が異なることにも着目した一層の『合理化』の検討をお願いいたします」としており、消防庁は「今後の検討を行う上で参考とさせていただきます」としている。
そのほか、住宅宿泊事業の担い手が一般個人となることが多いことを指摘し、わかりやすい周知資料の作成やインターネットでの公開などをの実施を要望する意見もあった。
提出された意見と消防庁の回答の全ては下記の通り。消防法施行規則等の一部を改正する省令案新旧対照表(http://search.e-gov.go.jp/servlet/PcmFileDownload?seqNo=0000171176)も参考にしてほしい。
■意見番号 No.1(修正対応無し)
本改正案は、消防法施行令別表第一(5)項イの用途に供される部分における消防用設備等の設置基準を緩和するものだが、他の用途においても同様に緩和するべきではないか。
(ご意見に対する考え方)
今回の改正は、住宅宿泊事業法(平成 29 年法律第65 号)の施行や旅館業法(昭和 23 年法律第 138 号)の改正により、今後共同住宅の一部が消防法施行令(昭和 36 年政令第 37 号。)別表第一(以下「令別表第一」という。)(5)項イに掲げる用途に供される防火対象物の増加が見込まれることから、こうした防火対象物における消防用設備等の設置基準を合理化するものです。
■意見番号 No.2(修正対応無し)
共同住宅の一部に家主不在型の民泊が入った場合、火災等が発生した場合の宿泊客による初期消火体制や通報体制、宿泊客に対する避難誘導体制などをどのように担保するつもりなのかが不明確であるため、消防用設備等を含むハード面の改正だけではなく、防火管理の充実といったソフト面に関してもご検討いただきたい。
(ご意見に対する考え方)
いただいた御意見は、今後の検討を行う上で、参考とさせていただきます。
■意見番号 No.3(修正対応無し)
省令及び告示の改正は、法の委任に基づいて規定されるもので無ければならないと思うが、このことについて今回の各省令を単独で改正する根拠は何か。
(ご意見に対する考え方)
今回の改正は、消防法施行令の各規定を根拠としています。
■意見番号 No.4(修正対応無し)
今回の改正案が住宅宿泊事業法の施行等に伴うものであるならば、住宅宿泊事業法に基づく届出住宅に限定せず、(5)項イすべてに適用しようとしている理由は何か。
(ご意見に対する考え方)
今回の改正は、住宅宿泊事業法の施行や旅館業法の改正により、住宅を活用した宿泊施設の増加が見込まれること等に伴うものであり、住宅宿泊事業法に基づく届出住宅と旅館業法に基づく住宅を活用した宿泊施設とでは、その構造や可燃物量などが大きく変わらず、統一的な規制を課すことが望ましいためです。
■意見番号 No.5(修正対応無し)
これまでの間、住宅を活用した宿泊施設等は現行法令の規定により消防用設備等の規制を行ってきたが、今回の改正案に至った経緯如何。
(ご意見に対する考え方)
公布された住宅宿泊事業法や改正旅館業法の内容を踏まえ、防火安全性や規制の合理化等について検討したものです。
■意見番号 No.6(修正)
消防法施行規則改正案第13条第1項第1号の2が適用できる部分として、(5)項イ並びに(6)項ロ及びハの用途に供される部分の床面積の合計が 3,000 ㎡未満の防火対象物のうち、当該用途が存しない階に限っているが、消防法施行規則第13条第1項第1号では適用できる部分を限定していない理由は何か。
(ご意見に対する考え方)
御意見を踏まえ、消防法施行規則第 13 条第1項第1号の規定は、令別表第一(6)項ロ及びハに掲げる防火対象物の用途に供される部分の床面積の合計が3,000㎡以上となる防火対象物の当該部分が存する階に適用できないよう改正します。
■意見番号 No.7(修正対応なし)
消防法施行規則改正案における「居室を耐火構造の壁及び床で区画」の「耐火構造」とは建築基準法第2条第7号に規定するものをいうと考えるが、建築基準法第2条9号の2イ(2)に規定する性能が含まれない理由は何か。
(ご意見に対する考え方)
今回の改正案では、スプリンクラー設備の代替措置として、居室で発生した火災を局限化することによる延焼拡大防止や避難経路の確保等を目的とし、現行の消防法施行規則第 13 条第1項第1号などの規定と同様、当該居室の壁及び床に一定の耐火性能として耐火構造であることを求めています。
■意見番号 No.8(修正対応なし)
「(5)項イ並びに(6)項ロ及びハに掲げる防火対象物の用途に供される部分が存する階以外の階」とは、当該用途に供される部分及び当該用途と(5)項ロとの共用部分を有しない階のみをいうものと理解するがいかがか。
(ご意見に対する考え方)
「(5)項イ並びに(6)項ロ及びハに掲げる防火対象物の用途に供される部分が存する階以外の階」とは、これらの用途に供される部分の利用者により使用される部分が存しない階をいうものです。通常、当該利用者が使用しない機械室や電気室など、共用部分のみが存する階などは、当該階に該当すると考えております。
■意見番号 No.9(修正対応なし)
今回の改正案では、住戸利用施設の用途が延べ面積の二分の一以下であることとされているが、当該部分の床面積が大きくなった場合に本来設置が必要である「通常用いられる消防用設備等」とそれに替えて設置することができる「必要とされる防火安全性能を有する消防の用に供する設備等」で同等の安全性があるといえるか。
(ご意見に対する考え方)
特定共同住宅等の位置、構造及び設備の性能から総合的に判断し、通常用いられる消防用設備等と同等の安全性を有していると考えております
■意見番号 No.10(修正対応なし)
特定小規模施設用自動火災報知設備を設置することができる「特定小規模施設」は、用途だけに着目するものではなく客観的な検証に基づくものでなければならないと思うがいかがか。
(ご意見に対する考え方)
いただいた御意見は、今後の検討を行う上で参考とさせていただきます。
■意見番号 No.11(修正対応なし)
「365 日稼働可能な宿泊施設」と「最大 180 日稼働するにとどまる届出住宅」とでは、火災の生じる危険性も異なってきます。そのため、今後、規制の「合理化」の検討を継続するとともに、火災の生じる危険性が異なることにも着目した一層の「合理化」の検討をお願いいたします。
(ご意見に対する考え方)
いただいた御意見は、今後の検討を行う上で参考とさせていただきます。
■意見番号 No.12(修正対応なし)
住宅宿泊事業は、一般個人が担い手となるため、シンプルでわかりやすいルールが求められます。本案の改正内容も含め住宅宿泊事業に適用される規制の内容について、誰にでもわかりやすい周知資料の作成・インターネットでの公開、その他広報・啓蒙活動を行っていただくことを強く要望いたします。
(ご意見に対する考え方)
いただいた御意見は、今後の検討を行う上で参考とさせていただきます。なお、今回の改正案の内容を含めた民泊における消防法上の取り扱い等を説明したリーフレット作成し、消防庁ホームページ(以下 URL)に公開しております。
http://www.fdma.go.jp/neuter/topics/fieldList4_19.html
■意見番号 No.13(修正対応なし)
一般個人が住宅を活用するという住宅宿泊事業ならではの特徴、および、一般個人も容易に法令遵守できる運用について、各地域の消防署に対して周知徹底していただくようお願いいたします。
(ご意見に対する考え方)
今回の改正内容等に係る運用及び民泊における消防法上の取り扱い等を説明したリーフレットの活用について、各消防機関に周知する予定です。
■意見番号 No.14(修正対応なし)
消防に関する法令が、住宅宿泊事業法第 1 条に規定する目的の妨げとならず、安心安全な住宅宿泊事業の発展に資するため、今後も、ユーザ(住宅宿泊事業者)の声を丁寧に聞きながら、合理的かつ現実的なルールを検討いただきたく存じます。
(ご意見に対する考え方)
いただいた御意見は、今後の検討を行う上で参考とさせていただきます。
■意見番号 No.15(修正対応なし)
延べ面積 200 平方メートル未満で3階建ての宿泊施設等について、特定小規模施設用自動火災報知設備の設置を認めることを検討していただきたい。
(ご意見に対する考え方)
一戸建て住宅の全部又は一部を宿泊施設等として使用する防火対象物のうち、3階建て以下で延べ面積が300 ㎡未満であるものにおいて、受信機を設けずに特定小規模施設用自動火災報知設備を設置することを消防法施行令第 32 条の規定により消防本部の権限において認める際の考え方を「消防用設備等に係る執務資料の送付について(平成 30 年3月 15 日付け消防予第 83 号)」問4で示しています。(以下 URL 参照。)
http://www.fdma.go.jp/concern/law/tuchi3003/pdf/300315_yo83.pdf
■意見番号 No.16(修正対応なし)
住宅宿泊事業は、一般個人が担い手となるため、シンプルでわかりやすいルールが求められます。そのため、消防法の目的と住宅宿泊事業の担い手(一般個人であるホスト)のニーズの両立の観点から、本案において必要な規制の合理化を行うことに賛成いたします。
(ご意見に対する考え方)
賛成意見として承ります。
■意見番号 No.17(修正対応なし)
近年、消防設備専用の自家発電設備に加えて、多様な負荷が接続される非常電源として自家発電設備が設置される例が増加していることから、設置者が点検の重要性を認識するような広報活動を期待いたします。
(ご意見に対する考え方)
御意見として承ります。
■意見番号 No.18(修正対応なし)
自家発電設備の点検の際に、一般社団法人日本内燃力発電設備協会の専門技術資格者と同協会の非常用自家発電設備保全マニュアル及び点検済証を活用するべきと考えます。
(ご意見に対する考え方)
消防用設備等の点検を行う者の資格について、消防法令に規定されております。御質問の資格等は任意の資格となりますが、取得することにより、知識及び技術の向上に努めることは望ましいと考えております。
■意見番号 No.19(修正対応なし)
非常電源の点検の頻度を経年によって頻度を短縮することは検討したのか。
(ご意見に対する考え方)
現行の非常電源(自家発電設備)の点検の周期について、機器点検は6月、総合点検は1年となっており、この周期は改正案において変更ありません。
今回改正案において6年ごとの点検としている箇所は「運転性能」の1項目のみであり、この6年の周期は、消防用設備等点検報告制度のあり方に関する検討部会での検討の結果を踏まえたものとなっております。
■意見番号 No.20(修正対応なし)
点検報告に関する規定において、罰則規定を検討すべきではないか。
(ご意見に対する考え方)
消防法第 17 条の3の3に規定する点検報告制度について、消防法第 44 条第 11 号において罰則規定が定められております。
■意見番号 No.21(修正対応なし)
負荷運転を実施した際に、その内容を点検票に記載する欄が十分ではないので、様式の追加を検討するべきではないか。
(ご意見に対する考え方)
点検票の記載欄が足りない場合には備考欄への記載又は別紙の添付で差し支えないと考えております。
■意見番号 No.22(修正対応なし)
運転切替性能に関する点検について、電力を常時供給する自家発電設備に限定するのではなく、全ての自家発電設備において実施すべきではないか。
(ご意見に対する考え方)
今回改正案は、運転切替性能に関する点検について、常用・防災兼用自家発電設備を対象としていることを明確にしたものであり、従前からの取扱いに関して変更するものではございません。
■意見番号 No.23(修正対応なし)
負荷運転の運転時間について、「必要な時間」の提示を行った上で、点検票の様式に時間を記載する部分を加えるべきではないか。
(ご意見に対する考え方)
負荷運転の「必要な時間」について、自家発電設備の規模は建物の規模や接続する設備により様々であり、負荷運転の運転時間は、点検基準に定める事項を確認するための時間となるため、一様ではないと考えております。
■意見番号 No.24(修正対応なし)
「予防的な保全策」について、部品交換等を指していると考えられるが、メーカー及び型式毎に潤滑油等の交換推奨年数や交換部品が様々なので、公平を保つために一定の指針を示して欲しい。
(ご意見に対する考え方)
交換部品については、製品ごとに構造や材質等が様々であるため、交換推奨年数等を統一することは適当ではないと考えております。なお、「予防的な保全策」を含む具体的な内容については、今後、通知等によりお示しする予定です。
■意見番号 No.25(修正対応なし)
ガスタービンを原動力とする自家発電設備について、総合点検における運転性能点検を求めていない理由は何か。
(ご意見に対する考え方)
ガスタービンを原動力とする自家発電設備について、6月毎に実施する機器点検における無負荷運転が、負荷運転と同程度の機械的・熱的負荷がかかっていることから、総合点検での運転性能の点検項目を除くことができるとの「消防用設備等点検報告制度のあり方に関する検討部会」での検討結果を踏まえたものとなっております。
■意見番号 No.26(修正対応なし)
「内部観察等」の点検内容は何か。
(ご意見に対する考え方)
新たに追加する点検方法の「内部観察等」と、「予防的な保全策」の具体的な内容については、今後、通知等によりお示しする予定です。
■意見番号 No.27(修正対応なし)
無負荷運転は自家発に影響はないのか。
(ご意見に対する考え方)
無負荷運転を累積 36 時間(無負荷運転を1ヶ月に1回 10 分間行うことを想定した場合の 18 年間に相当)行った調査や長期間無負荷運転を実施している自家発電設備に対する設置状況調査において、自家発電設備の運転に影響ないレベルであったことが確認されております。