この度、民泊新法の施行を目前に控え、石井くるみ氏の新著「民泊のすべて―旅館業・特区民泊・住宅宿泊事業の制度と合法化実務」が発刊されました。
著書では、2018年6月15日より同時施行される「住宅宿泊事業法(民泊新法)」「新旅館業法」や現在国家戦略特別区域にて実施中の「特区民泊」など、民泊運営において適用されるすべての法律について説明しています。
法律の解説書にはめずらしく、図表・フローチャートを多く用い複雑な法規制を分かりやすく解説しているので、今後民泊ビジネスに新規参入する事業者や実務家にとってバイブルとなり得る一冊です。
以下、石井くるみ氏が著書「民泊のすべて」を解説した講演で行われた質疑応答の一部を紹介します。
○住宅を宿泊施設に転用する場合、営業開始までにどの程度の期間がかかるのでしょうか?
営業開始までのリードタイムは物件の状況、申請する許認可の種別、自治体の対応状況により異なるため一概には言えませんが、最も手続が簡易な民泊新法の場合なら、最短で1週間程度で届出を完了することができます。ただし、これは家主が自宅で営む「家主同居型」で消防用設備等の設置が不要なケースにおいての話です。消防用設備等の追加的な設置が必要となる「家主不在型」のケースでは、設備の設置工事を行ったうえで消防署の検査を受ける必要があるため、届出完了まで早くても1ヶ月程度の期間を要します。
次に特区民泊ですが、こちらは民泊新法よりも多くの書類を提出することが必要となります。しかし、やはりリードタイムに一番の影響を与えるのは消防用設備の設置とその検査ですね。書類作成と消防関係の手続きを同時並行で進めれば、こちらも最短で1ヶ月程度で営業を開始することができます。
最後に旅館業法ですが、民泊新法や特区民泊と違って、対象面積が100㎡を超えると建築基準法における「用途変更の建築確認申請」が必要になり、そうするとリードタイムが一気に長くなります。私が申請を手掛けた案件を例に挙げると、墨田区で新築マンションを用途変更したケースが最短で許可取得まで4ヶ月程度。別の最近許可を取得した新宿区の例では許可取得までちょうど1年。その他、申請の着手から数カ月を経過している現在進行中の案件が複数あります。依頼主の意向等で許可取得まで長引くケースも多いですが、専門家を活用して効率的に手続きすれば、およそ3~6カ月が許可取得までの目安となります。
○行政は今後どうやって違法民泊を取り締まるのでしょうか
まずは仲介業者規制を通じた取締りですね。最近Airbnbが違法民泊のリスティングを削除したことが話題となったように、マッチングを行う仲介業者の規制を通じて違法民泊を封じ込めるのが最も効率的な方法です。
次に、仲介業者規制では対応できない違法民泊に対する個別の取り締まりですね。旅行業法及び住宅宿泊事業法の規制が十分に及ばないと考えられる海外で無登録を続ける民泊仲介サイトを利用する違法民泊は、個別にその所在を把握して取り締まる必要があります。
取り締まりの方法に関して、6月15日の新旅館業法の施行以降、行政は、これまで認められていなかった、無許可施設に対する立入調査及び報告徴収を行えるようになるため、取り締まりの実効性が高まることでしょう。
講演では、その他にも民泊・旅館業に関する様々な質疑応答が行われ、会場内は熱気で充ち溢れました。
民泊の法規制に関するより詳細な情報は、前述の石井くるみ氏の著書「民泊のすべて―旅館業・特区民泊・住宅宿泊事業の制度と合法化実務」を参照ください。正しい法律知識を身に付け、6月15日からの民泊新法と新旅館業法の施行に備えましょう。