民泊新法が施行 「ヤミ」が支え続けた訪日需要 施設9割減も「民泊解禁」成る

住宅宿泊事業法(民泊新法)と一部自治体の民泊制限条例が2018年6月15日午前0時、同時施行された。民泊新法で届出が受理されたホストは、法律と条例の規制枠内で民泊事業を営むことが許可される。地域によって年間の営業可能日数は0〜180日(泊)となり、民泊を営む施設も9割減となったが、政府が訪日需要の受け皿とするために進めてきた「民泊解禁」は実現した。

民泊新法では、年間180日を上限に民泊事業者(ホスト)に民泊営業が認められる。民泊事業者は届出制、Airbnbなどの仲介業者と運営代行会社などの管理業者は登録制で事業を営むことができる。

民泊新法施行1週間前の6月8日時点で民泊事業の届出が受理された件数は1134件。日本国内の民泊施設は1万5000件以上とも言われ、瞬間的には民泊施設は1割以下に減ったことになる。

民泊仲介世界大手サイトの米Airbnbが火付け役となり、4〜5年前に世界的に広がった民泊ブームは日本へも波及した。民泊が社会的に知られていくようになってから民泊事業者は「ヤミ民泊」と呼ばれたが、その訪日旅行者の民泊需要を下支えし続けたのは、今回民泊営業の幕を下ろした多くの彼ら、彼女ら1人1人の民泊ホストだった。

■民泊条例、法の趣旨との対立を指摘する声

民泊新法では生活環境などの悪化を理由にした追加制限の裁量を自治体に与え、2018年6月1日時点では全国で民泊事業を管轄する150自治体のうち48自治体が条例を施行し、住居専用地域などの区域や平日などの期間を指定して、一律の禁止をするケースが目立った。

一方で、2017年末に観光庁が発表した民泊新法ガイドラインでは、「条例によって年間全ての期間において住宅宿泊事業の実施を一律に制限し、年中制限することや、都道府県等の全域を一体として一律に制限すること等は、本法の目的を逸脱するもの」とし、「適切ではない」としている。

各自治体が実施した条例制定に伴う意見公募では、「法の趣旨を逸脱するのではないか」という声も上がったが、一部の自治体を除いて条例案を修正することはなかった。

■自治体の届け出受理の遅れも招いたキャンセル騒動

民泊新法では施行の準備期間として、今年3月15日から民泊事業者の事前届出を受け付けた。それまでは民泊についての明確なルールが無かったため、それまで民泊を営んでいた施設のスムーズな許可施設への移行も目指した取り組みだった。

しかし民泊を届け出た民泊事業者のうち、民泊新法施行1週間前の6月8日時点で未受理率が58%に上っていることが明らかになった。民泊事業者などからは行政側の対応の遅れを招いたと指摘する声も多くあがった。

■民泊業界の大転換期、民泊が持つ可能性を活かせるか

民泊新法の施行を前に、AirbnbやBooking.comなどの一部の民泊仲介世界大手は未届け施設を非公開にした。

民泊サイト側も観光庁の通知や民泊新法への対応に最大限努めたものの四苦八苦していたとみられ、民泊新法の届け出を済ませていたホストや旅館業法の許可を取得していた施設の一部も非公開になるなどのこともあった。その後の予約の強制キャンセル措置で、ホストとゲストが混乱することにもつながった。

民泊新法の施行される2018年は、民泊業界にとっての大転換期となった。大手企業の参入も進む中、今後の業界動向に注目が集まっている。民泊を通じた地方活性化や古民家の有効活用、雇用創出なども足踏みしないか、懸念を口にする人も多い。

民泊新法だけではなく、民泊新法と同時施行された改正旅館業法における簡易宿所や特区民泊、イベント民泊など、ゲストを受け入れる方法は多様化している。増え続けるインバウンド需要の受け皿を増やすため、今後の政府の取り組みも注視していきたい。