政官民、民泊新法の「見直し」決議 石破議員が苦言「何のための新法か」

東京都内で開催された住宅宿泊事業法施行を祝う会

住宅宿泊事業法(民泊新法)が、見直しに向けて動きだす。政官民の代表者らが参加する「住宅宿泊事業法施行を祝う会」が新法施行の6月15日に東京都内で開かれ、法制度の見直しを行うことを全会一致で決議した。開会の挨拶で衆議院議員で元地方創生大臣の石破茂氏は「蓋を開けてみれば非常に厳しい規制。何のための新法か」と苦言を呈した。

会の主催は「地方創生宿泊施設推進実行委員会」。同委員会は会の開催に伴って発足した組織で、ホテル業界最大の広報団体「財団法人宿泊施設活性化機構(JALF)」と民泊事業者で構成する「全国民泊同業組合連合会(jasmin)」、賃貸管理業界のビジネス団体「全国賃貸管理ビジネス協会(全管協)」で構成される。会には、シェアリングエコノミー協会やAirbnb、HomeAway、百戦錬磨など民泊仲介サイト運営企業の代表も参加。

会合では、民泊の健全な発展・普及に向けての法制度や自治体の規制の見直し、「ヤミ民泊」の徹底的な取り締まりなどの3点を決議した。石破氏は民泊をめぐる日本国内の状況について「ホテル旅館など既得権益があることは事実。しかし対立してはいけない」と指摘した。

民泊新法では地方自治体が独自条例の制定による上乗せ制限が認められている。しかし観光庁の新法ガイドラインでは一律の規制を不適切としているものの、住居専用地域や平日を全面禁止するなどの条例が各地で制定されている。

石破氏は「規制は必要だが過度な規制にならないようにしてもらいたい」と強調。全国賃貸管理ビジネス協会(全管協)会長の高橋誠一会長は「地方の上乗せ条例の規制が厳しすぎる。届出を出しても、消防関係だけであっというまに2、3ヶ月かかる。予防ばかりしている」と指摘した。

■上乗せ条例に批判、芦屋市の完全禁止「法令違反だ」

シンポジウムで観光庁観光産業課の鈴木貴典課長は「民泊は住宅やスペースの有効活用が柱。ビジネス向けには改正旅館業法を同時に施行している」と説明した。

厚労省生活衛生課の竹林経治課長は「(旅館業法における)簡易宿所は元から帳場はいらなかったのに、帳場を義務付けている自治体もある」と指摘。その上で国から再度、帳場は要らないことを通知したことを説明し、「一部自治体にはまだ帳場規制が残っており、その規制を緩和するためにサテライト型簡易宿所での運用を発表した。」と自治体側の取り組みに疑問を投げかける異例の展開となった。

全国民泊同業組合連合会の沼田美穂会長は「上乗せ条例は厳しすぎる」と指摘した上で、兵庫県芦屋市で1年を通じて全域で民泊を禁止する規制を行うことについて「全面禁止は法律違反ではないか」と指摘した。

民泊新法の施行で、民泊を営む選択肢としては①民泊新法②旅館業法(旅館・ホテル/簡易宿所/下宿)③特区民泊④イベント民泊—に広がった。

ゲストの募集を仲介する民泊サイトもAirbnbやBooking.com、HomeAway、途家、AsiaYoなどのほか、国内事業者では楽天LIFULL STAYや百戦錬磨なども既に民泊予約サイトを運営しており、掲載先が多様化している。

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