6月18日に発生した大阪北部地震。民泊施設を無料の被災者向け避難所として提供する「シームレス民泊」という枠組みへの注目が、より一層高まっている。世界では毎年2億人が災害などで被災すると言われている。そんな被災者を救う仕組みとして関心を集めるシームレス民泊の「今」を紹介する。
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■南海トラフ巨大地震に備えて徳島県が取り組む
「シームレス民泊」とは、普段は有料の民泊施設として活用されているが、災害発生時は被災者に無料で空き家や空き部屋などを避難所や仮住まいとして提供する仕組みのことを呼ぶ。
救護隊などの宿泊所や救援拠点として活用されることもあり、地震大国・日本でもシームレス民泊の枠組みが災害発生時に寄与すると期待されている。日本では徳島県が南海トラフ巨大地震に備え、早くから取り組みを進めてきた。
2016年5月に徳島県規制改革会議で「シームレス民泊制度」が提唱され、翌月には県内の阿南市新野町の地元住民が「新野シームレス民泊推進協議会」を設立。町内の「平等寺」が県内のシームレス民泊第1号として2017年4月に「坊主の宿」開業している。

平等寺は四国八十八カ所霊場の二十二番札所で、普段はお遍路さんや一般の旅行者を受け入れるが、災害時には避難所に役割が移行する。
■Airbnbが続けてきた「オープンホーム」プログラム
民泊仲介世界大手Airbnbも「オープンホーム(OpenHomes)」という枠組みで、ホストとともにシームレス民泊の取り組みを進めている。これまで既に被災者1万1000人以上がオープンホームの仕組みで避難先の提供を受けている。最近では米ハワイ州のキラウエア火山の噴火で、Airbnbのホストが避難住民に無料で部屋を貸し出し話題になった(参考:Airbnbとホスト、キラウエア火山噴火で被災者に住宅を無償提供 11人が協力申し出|民泊大学)。
日本では2016年の熊本地震のとき、オープンホームの仕組みでAirbnbのホスト100人以上が避難が必要な人向けに民泊施設を無料で提供した。熊本地震のオープンホームのページ(https://www.airbnb.jp/welcome/evacuees/southernjapanearthquake)では、部屋を提供したホストのアカウントが今も並ぶ。
民泊はインバウンドの受け皿という側面だけではなく、少子高齢化に伴う空き家増加の対策や地方経済の活性化と雇用創出、古民家の利活用などにも向けてその可能性が期待されている。自宅で子育てをする主婦も民泊による収入を得やすいほか、子供の異文化理解を促すために外国人を受け入れるホストもいる。
そして避難所としての社会貢献という方法もある。それが「シームレス民泊」だ。
2011年に発生した東日本大震災では、体育館や学校などの公共施設が一時避難所として利用された。しかし普段は「住む」ことを前提に作られていない施設では、入浴などを含む普段の生活を続けることに適しているとは決して言えない。
しかしシームレス民泊では、家主が生活している自宅の空き部屋や、人を宿泊させることを前提にした施設を提供するため、被災者がそれまでの生活スタイルを続けやすいという側面がある。
■民泊と社会貢献の可能性
Airbnb、民泊新法、旅館業法、簡易宿所、特区民泊…。民泊業界を取り巻くさまざまな要素が今後さらに活かされていけば、民泊が一層社会に貢献できる可能性は大きい。シームレス民泊の今後に注目していきたい。