住宅宿泊事業法(民泊新法)において初の民泊事業者(ホスト)による定期報告の期限が8月15日に迫ってきた。そんな中、無人型民泊などのホスト側が管理業者に定期報告を委託することについて、違法性を指摘する声があがっている。
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■民泊事業者の定期報告とは?
民泊新法では第14条で、民泊事業者が都道府県知事(権限委譲している市区においては市区長)に報告することを義務付けている。
第十四条 住宅宿泊事業者は、届出住宅に人を宿泊させた日数その他の国土交通省令・厚生労働省令で定める事項について、国土交通省令・厚生労働省令で定めるところにより、定期的に、都道府県知事に報告しなければならない。
定期報告は届出住宅ごとに偶数月(2、4、6、8、10、12月)の15日までに行わなければならず、①届出住宅に人を宿泊させた日数②宿泊者数③延べ宿泊者数④国籍別の宿泊者数の内訳—の4点を報告する必要がある。
■管理業者が行える業務に含まれていない定期報告
民泊管理業者は民泊事業者から委託を受けて一定の業務を代行することができる。しかし、第14条で定められた定期報告については、管理業者が受託できる業務として定められていない。
民泊管理業者が受託して担当できるのは、民泊新法第5〜10条の業務とされている。具体的には①宿泊者の衛生の確保(第5条)②宿泊者の安全の確保(第6条)③外国人観光旅客である宿泊者の快適性及び利便性の確保(第7条)④宿泊者名簿の備付け等(第8条)⑤周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項の説明(第9条)⑥苦情等への対応(第10条)——の6業務となる。
つまり、この管理業者が行うことができる第5〜10条の6業務には第14条の「都道府県知事への定期報告」は含まれておらず、管理業者が民泊事業者に代わって行うことに違法性の懸念が生じているというわけだ。
■行政書士以外が代行した場合は最高100万円の罰金か?
定期報告の代行は、行政書士の業務範囲であるという指摘がある。確かに行政書士法「第1条の2」では、行政書士の職務は報酬を得て官公署に提出する書類などを作成することだと定められている。第19条でも、行政書士や行政書士法人でない者がこれらの職務を行うことができないことを明記している。
第一条の二 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
第十九条 行政書士又は行政書士法人でない者は、業として第一条の二に規定する業務を行うことができない。ただし、他の法律に別段の定めがある場合及び定型的かつ容易に行えるものとして総務省令で定める手続について、当該手続に関し相当の経験又は能力を有する者として総務省令で定める者が電磁的記録を作成する場合は、この限りでない。
さらにこれに違反した人には「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する」(第21条)ということが明記されている。
第二十一条 次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は百万円以下の罰金に処する。
二 第十九条第一項の規定に違反した者
■観光庁サイトでも報告ルートは「管理業者→民泊事業者」と記載
観光庁の民泊制度ポータルサイトでも、民泊事業者が正確に報告を行うために、民泊事業者に対する定期的な情報提供を管理業者に求めているが、管理業者が報告して良いとは書いていない。
(3)住宅宿泊管理業者から住宅宿泊事業者への報告について
法第11条第1項に基づき住宅宿泊管理業務を住宅宿泊管理業者に委託する場合には、宿泊者名簿の記載等を住宅宿泊管理業者が行うことから、当該報告に必要な宿泊者に関する情報を住宅宿泊管理業者が補完的に把握することが想定されます。このため、住宅宿泊事業者が確実かつ正確な報告を行うため、必要に応じ、住宅宿泊事業者と住宅宿泊管理業者が締結する管理受託契約において定期的な情報提供について取り決めを行ってください。
これらのことを考えると、民泊事業者が安易に管理業者に定期報告を委託することに、違法性の懸念が生じることはうなづける。無人型民泊で代行業者に業務を一任しているとしても、定期報告まで委託することの合法性・違法性について、民泊事業者はしっかりと認識する必要があると言えよう。