消えた「受理」の文字 民泊業界で一悶着…「宙に浮いた届出」、そして提訴 民泊新法と旅館業法の行政手続き上の違いも影響か

観光庁が民泊制度ポータルサイトで定期的にPDFファイルで公表している「住宅宿泊事業法に基づく届出及び登録の状況一覧」シートにおいて、一部表現が変更されている。具体的には「うち受理済件数」と表記されていた箇所から「受理」も文字が消え、いつのまにか「届出住宅数」と表現が変わっている。(平成31年2月15日時点の「住宅宿泊事業法に基づく届出及び登録の状況一覧 」より表記変更)

なぜこのように表記が変わったのだろうか。その理由は公表されていないが、届出の受付窓口となる自治体における「受理」をめぐっては民泊業界で一悶着起きている経緯があり、そのことが影響した可能性もある。

■「宙に浮いた届出」問題

過去に住宅宿泊事業法(民泊新法)を巡っては、事業者(ホスト)届出をしたにも関わらず登録が完了しない「宙に浮いた届出」が数多く存在していた。(詳しくは「【独占】民泊届け出、全国で2707件 未受理58%、受理ゼロ13県市区|民泊大学」を参照)

しかし民泊新法では第三条で「住宅宿泊事業を営む旨の届出をした者は、旅館業法第三条第一項の規定にかかわらず、住宅宿泊事業を営むことができる」(全文)と規定されており、届出をしたのに速やかに登録が完了していない状態となっていることを疑問視する声は少なくなかった。

また、行政手続きに関して旅館業法では「許可制」、民泊新法では「届出制」と異なっているが、自治体では一つの部署で対応していることが混乱を招いたと見るむきもある。

■不受理問題、自治体の提訴に発展

こうした「不受理」をめぐる問題は自治体の提訴にまで発展し、個人ホストの40代男性が東京都中央区を相手取り、2018年12月までに計136万円の国家賠償を求めて訴訟を起こしている。(詳しくは「【独占】全国初、民泊届出未受理で提訴 東京都の40代男性、中央区に136万円賠償請求 土日限定条例の違法性も指摘」を参照)

インタビュー記事
【独占取材】40代男性が民泊届出不受理で役所を提訴した理由 東京都中央区に賠償請求

民泊届出に対する対応をめぐっては、自治体側が条例に定めがない事前相談や書類の提出を事業者側に求めている点も問題視されており、観光庁が自治体側に適正化を求める異例の事態となっている。適正化を求めたあとも改善がみられない自治体も2019年4月時点でまだあり、「受理」をめぐる問題はいまも尾を引いている状態だ。(詳しくは「観光庁、民泊届出手続きの未改善自治体を「名指し」で公表 那覇市は事前相談を義務付け 千代田区は書面での手続き推奨」を参照)

冒頭紹介した表現の変更は小さなことかもしれないが、こうした点が何らかの形で影響していると勘ぐってしまわずにはいられない。

■民泊届出と「消防法令適合通知書」についても

また民泊新法では、届出の際に「消防法令適合通知書」の添付を義務付けていないが、届出番号発行後、営業開始直後からは必要とされている。しかし消防法令適合通知書の交付を受けないまま営業を始める事業者や、そもそも届け出た住宅の規模により消防法令適合通知書の交付が困難な事業者もいるという問題もある。(詳しくは「住宅宿泊事業における消防法令適合通知書の交付等について|総務省消防庁」も参照)