民泊がその都市で盛んになることには、いくつかのメリットがある。
その一つがホテルの客室不足の受け皿になり得ること。客室不足が解消するということは、それだけ観光客の受け入れのキャパシティが増えるということだ。こうしたことを背景に行政側が民泊の振興に積極的になっているケースも少なくない。
ただその地域で民泊を受け入れることで懸念も生じる。それが、その地域における不動産物件の賃貸価格の高騰だ。
民泊には家主不在型と家主同居型の2種類があるが、家主不在型の場合はホストが自らアパートやマンションを賃貸し、そこでゲストを受け入れることになる。こうした家主不在型が主流になると、相対的に賃貸需要が増え、空き物件が少なくなることから賃貸価格が高騰するという懸念に直面する。
こうした点はその地域の住民にとっては重荷となる。生活費の一部である住宅費の負担が重くなるからだ。
■こうした懸念を示したパリ市長
民泊仲介世界最大手のAirbnbが国際オリンピック委員会(IOC)の最上位スポンサーとなったとき、フランスの首都パリの市長が懸念を示した。その背景にはこうしたジレンマがある。特に決して所得が大きくない中間層への影響は大きいと、パリの市長は危惧した。
こうしたジレンマは、これからさまざまな都市で起きる可能性がある。そのときその自治体の首長は、民泊に対してどのような政策を打ち出すのか。
そもそも賃貸物件の空室が多い地域ではこうした懸念は杞憂に終わるかもしれないが、空き物件が少ない都市部などではこうした懸念とメリットを考えながらの舵取りを迫られることになりそうだ。