「宿泊者ゼロ」過去4度…五輪の切り札”イベント民泊”の重い課題

東京オリンピック・パラリンピックの開催に合わせ、観光庁と厚生労働省は「イベント民泊」の名称を新たに「イベントホームステイ」に改称したことを発表し、地元住民との交流の促進や宿泊の受け皿を増やすための取り組みを積極的に支援していく方針だ。

ガイドラインも改定され、イベント民泊が実施可能となる要件も拡充した。このことに関しては民泊大学でも「「イベント民泊」の名称が「イベントホームステイ」に 実施要件も拡充 観光庁がガイドライン改訂を発表」の記事でも触れたが、このイベントホームステイは過去の取り組み実績をみると、なかなか成果を出すのが難しい結果となっている。

観光庁は1月23日、過去のイベントホームステイの実施状況を更新した。その内容は「http://www.mlit.go.jp/kankocho/minpaku/content/001324799.pdf」から確認できるが、公表されている実施済みの54の取り組みのうち、4つの取り組みでは宿泊者数がゼロに終わっている。

具体的には「広島東洋カープ沖縄キャンプ2017」(沖縄県沖縄市)、「名護・やんばるツーデーマーチ」(沖縄県名護市)、「ラグビーワールドカップ(イタリアvsナミビア戦など)」(大阪府東大阪市)、「ラグビーワールドカップ(スコットランドvsサモワ)」(兵庫県神戸市)における取り組みだ。

いずれも7〜10物件がイベントホームステイ用に確保されたが、だれも宿泊しない結果となっており、どのようにイベントホームステイにおける提供物件を有効利用してもらうかが課題になっていると言える。

イベントホームステイでは条件を満たせば、旅行業法や住宅宿泊事業法(民泊新法)の許可を受けていない物件でも、民泊を提供することができる。ただ、旅行客を受け入れるためにはそれ相応の準備も必要で、宿泊者がゼロだと協力した世帯による準備が成果として報われる結果とならない。

東京オリンピックの開催に合わせて各地で自治体が主導してイベントホームステイが実施されることが予想されるが、どうこうした課題を解決するかが今後問われてきそうだ。

紫色での網掛け部分が宿泊者数がゼロに終わった取り組み。赤の網掛けは発表時点では未実施の取り組み(観光庁の発表資料を基に作成)