日本政策金融公庫は5月1日、今年1〜3月のホテル・旅館の景気動向などの調査結果を発表した。業況判断DI(「良い」とみる企業の割合から「悪い」とみる企業の割合を引いた値)はマイナス52.2となり、「生活衛生関係営業」(飲食業やクリーニングなど9業種)の中で2番目に悪い結果となった。
以下が業種別の業況判断DIの推移だ。今年1〜3月は「クリーニング」がマイナス56.4で最も悪く、「ホテル・旅館」がそれに続く形となっている。ちなみに「ホテル・旅館」の4〜6月(見通し)の業況判断DIはマイナス17.8。
日本政策金融公庫は今年1〜3月の「売上DI」「採算DI」「利用客数DI」「客単価DI」の結果も発表しており、「ホテル・旅館」は売上DIがマイナス31.5、採算DIがマイナス21.1、利用客数DIがマイナス42.7、客単価DIがマイナス12.9という結果となっている。
▲厳しい状況にある生活衛生関係営業の景況 ~ 生活衛生関係営業の景気動向等調査結果(2020年1~3月期)~
https://www.jfc.go.jp/n/findings/pdf/seikatsu2020_0501a.pdf
■業況判断理由は?
ホテル・旅館業を営む事業者の業況判断理由としては、以下が抜粋として紹介されている。(調査段階のコメントなので、いまは状況が変わっている可能性も考慮を)
山形県(ホテル・旅館業)
・インバウンドはほとんどないが、新型コロナウイルスの影響で日本人の宿泊や宴会等の予約キャンセルが続いている。これから桜花見客やGW期の観光・旅行シーズンの稼ぎ時ではあるが、感染拡大の収束見通しが公表されない限り、来期も厳しい状態が続く見込み。
福島県(ホテル・旅館業)
・前期の台風19号の影響による宿泊の客足が回復しないまま、新型コロナウイルスの影響で予約キャンセルもでている。宿泊だけでなく、年度末の各種宴会も自粛する動きがみられる。
群馬県(ホテル・旅館業)
・新型コロナウイルスの感染拡大で団体宿泊客の減少に加え、春季開催予定のスポーツ・文化イベントの中止などの影響が今も響いている。
埼玉県(ホテル・旅館業)
・新型コロナウイルス感染症の拡大で訪日外国人が大幅に減っており、予約キャンセルの動きが多少出ているが、ビジネス宿泊と新年会の宴会需要でカバーしている。
長野県(ホテル・旅館業)
・スキー場の積雪不足や新型コロナウイルス感染症問題等で宿泊需要にマイナス要因はあるが、邦人宿泊がほとんどで中国等からの宿泊を受入れていないことから、2~3月の予約もキャンセルがなく影響はでていない。
三重県(ホテル・旅館業)
・1月は新年会予約が多く好転したが、2月以降は新型コロナウイルス感染症の拡大で日本人を含め宿泊キャンセルが増え、3月の送別会や卒業等パーティー、4月の歓迎会等の予約もキャンセルが出始めている。
大阪府(ホテル・旅館業)
・昨年後半から続いている韓国人客の落ち込みに追い打ちをかける新型コロナウイルスの影響で、1月下旬だけでも100名以上の予約キャンセルが入り、2月以降も客室稼働確保の見通しが立っていない。
奈良県(ホテル・旅館業)
・元々のシーズンオフに加え、新型コロナウイルスによる国内外の予約キャンセルが相次いでいる。衛生管理を徹底し、こんな時期に来てくれたお客様に心からの感謝を込めて接客している。
島根県(ホテル・旅館業)
・例年、降雪でキャンセルが多かったが、今期は暖冬で天候に恵まれたことから、客室稼働率の向上に繋がった。今のところ、新型コロナウイルス感染症の拡大による訪日外国人客のキャンセルは軽微である。
福岡県(ホテル・旅館業)
・政治的影響で韓国からのツアー客が増えないなか、新型コロナウイルスの影響で中国や台湾等からの観光客も減少。日本人も旅行や出張を自粛する動きが広がっており、宿泊客の確保に苦戦を強いられている。
宮崎県(ホテル・旅館業)
・新型コロナウイルスの感染拡大で、韓国プロ野球やKリーグの春季キャンプが中止になり、宿泊予約がすべてキャンセルになった。この時期にキャンプ観戦のファンも全国から訪れることから影響は相当に大きい。