日本政府が民泊新法(住宅宿泊事業法案=仮称)の今国会での提出を目指す中、民泊予約サイトで世界最大手のAirbnb(エアービーアンドビー)は21日、民泊新法による法規制(上限日数の設定)に合わせた自社サービスの適合性を考慮し、営業日数が上限(180日以内)を越えた居室・物件を、自社のサイト内で非表示にすると発表した。日本経済新聞社などが報じた。
民泊新法は民泊業界と関連サービス市場にとっても、新規参入やビジネスをさらに拡張する上での指針となることから、民泊新法における営業日数の上限設定について大きな注目が集まっていた。その民泊新法における上限日数制限において、Airbnb(エアービーアンドビー)が他社よりも一足先に対応についての見解を明らかにしたことで、ほかの仲介業者にも民泊新法の成立・施行を見据えた一層迅速な対応を求められる風潮となりそう。
Airbnb(エアビーアンドビー)を使って日本に宿泊した訪日客は、昨年2016年は約370万人に達した。これだけの数を受け入れる背景には、その数字を支える民泊サービスの提供者(ホスト)がおり、今回Airbnb(エアビーアンドビー)が発表した上限日数を超えた物件の非表示対応が実際に行われると、ホストが最も影響を受けることは確実だ。
民泊新法は今年度、つまり2017年度中の試行を政府は目指している。政府・与党は、民泊新法の施行を急ぐことで、多くの外国人観光客のインバウンド観光の取りこぼしを防ぎたいという思いも強いことは確か。政府にとっては民泊新法の施行・成立で、2020年の東京オリンピックの開催時期における観光客受け入れの裾野をなるべく広げたいということもある。
オランダや英国では導入済み
では実際に、Airbnb(エアビーアンドビー)が上限日数180日を越えた居室・物件を非表示にする機能を導入する時期はいつか。主要メディアなどの報道によると、この時期については今のところ未定で、Airbnb(エアビーアンドビー)が新法の実施時期なども勘案して検討を進めるものとみられている。この上限日数を超えた物件を非表示にする機能は既に民泊事業が拡大しているオランダのアムステルダムで導入されており、日本サイトでもオランダなどに続いてこの機能を備える形となる。既に導入実績があることから、Airbnb(エアビーアンドビー)内部における導入フローの混乱は生じなさそうだ。
オランダにおける導入が既に行われていることから分かるように、欧米においては民泊が日本よりも前に普及が進んだ。そういった背景から言えば、Airbnb(エアビーアンドビー)がそれらの国向けのサイトで既に対応を終えていることはうなずける。例に挙げたオランダは年間の1部屋あたりの営業日数は上限60日、イギリスのロンドンでは90日とそれぞれ上限が定められており、既にAirbnb(エアビーアンドビー)サイトでの自動非表示機能は実装済みだ。
法規制の範囲内における合法的な民泊事業の広がりには、Airbnb(エアビーアンドビー)のような仲介業者による法令遵守(コンプライアンス)の取り組みもカギとなる。今後もAirbnbなど大手仲介業者の対応に注目が集まる。
ホスト側の対応については?
インターネットの掲示板や民泊運営者が集まるウェブ上のグループなどでも、この日のAirbnb(エアビーアンドビー)の日本国内サイトにおける民泊新法に適合させる方針の上限対応の方向性が明らかになったことについて、さまざまな反応の声が聞かれた。例えば、複数の民泊仲介サービスなどを使って一つの部屋を旅行者に貸し出せば、年間営業日数の合計がAirbnb(エアビーアンドビー)のサイト上は180日に達することはないので、非表示になることは実質的にないのではないか、といった声などだ。
こういった民泊新法の「抜け道」となる可能性に対して、新たな法規制や取り組みの初期においては特に政府や仲介サービスの提供業者が100%完璧な対応をすることは難しいが、健全な民泊市場の発展に向けては公平性が高い市場の整備が必要になってくる。
今回の民泊新法を見据えたAirbnb(エアビーアンドビー)の発表は、日本国内の民泊運営関係者にとって注目のニュースとなった。民泊仲介サービスを行っている事業者にとっても、民泊運営の主体となる個人・企業にとっても、だ。