賃貸住宅フェア2017in東京
日時:7月25日、26日 10時〜17時
場所:東京ビッグサイト(江東区)
主催:全国賃貸住宅新聞社
当イベントは賃貸住宅市場に関わるセミナーの開催及び関連企業のブース出展による展示会であり、福岡、東京、大阪、名古屋の各会場で毎年開催されており、総勢4万人以上の業界関係者が来場しているイベントである。
賃貸住宅とは決して切り離すことができない存在である「民泊」。住宅宿泊事業法が成立し、合法化による民泊運営が可能になるということで、来年の住宅宿泊事業法施行を目前に多くの企業が当イベントに参加していたので、その模様を一部レポートした。
【セミナー】
Airbnb Japan ホームシェアリング事業統括本部長の長田英知氏より、「民泊ホスト・ゲスト利用者ニーズから読み解く日本の賃貸住宅と観光業の未来」というテーマで講演が行われた。
Airbnbは、社会貢献活動を積極的に行なっておりその一環として緊急避難場所が不足している災害時には周辺地域にて部屋を無料で貸し出すという取り組みを行なっており、実際に熊本地震に置いても無料にて部屋の貸し出しを行なっている。また、Wantedlyを運営するウォンテッドリー株式会社と共にAirbnbを利用し就職活動で上京する学生に対して「地方学生インターン宿泊費支援キャンペーン」なども行っているとのこと。
今後は合法化により法人向けサービスを行うとのこと。法人アカウントの場合プロフィール画像は法人ロゴ、登録認証は法人の登記情報で行うなどして法人が掲載している物件を一覧で閲覧できるようなページも作られる見込み。仮にサイト内からAという法人を検索した場合、Aが全国に保有している物件を一覧で見ることができるのでブランディングも可能となる。
SQUEEZE代表取締役の館林真一氏(写真上)とファミリアリンク営業部長の湯澤大介氏(写真下)により「180泊規制の新法施行後に民泊市場はどう変わる?」というテーマで座談会が行われた。
館林氏より旅館業法、国家戦略特区、住宅宿泊事業法という3点の観点から民泊について説明が行われた。新法施行後の行方としてはまだ内容がはっきりとしていないことから不透明と述べたものの、既に運営の日数制限を設けられた中でホームシェアリングを行なっているヨーロッパ諸国を先行事例を今後の見通しを次のように語った。「民泊新法施行後は実際そこまで大きくは変化はなく、規制の度合いを意識しながら緩やかに大手が参入、グレーの業者が撤退していくという流れだと思う。また、マンスリーマンション、サービスアパートメントという形態で退去者が出た後、入居者が入るまでの空室期間を民泊で運用して埋めていくようなケースも増えてくると思う。一方で、特区民泊や簡易宿所という法律に準拠した投資手法が増えてくることが予想されるが、個人的には中でも一戸建ての物件が伸びて行くと思う。」
一方で、湯澤氏は民泊新法後の運用について以下のように語った。「新法施行後の合法民泊の手段は①合法民泊(180日以内)②合法民泊(180日以内)+マンスリー賃貸(タイムシェア)③特区民泊④簡易宿所型民泊の4つがあり、その中で③、④という選択が今後正しい選択である。また、特区民泊又は簡易宿所は、集客を行う際に民泊マッチングサイトに加えOTAの両方から集客可能であるので、高稼働・高単価を維持でき、投資回収期間の短縮を実現できる。民泊運用を成功させるには動向をしっかりと把握することが非常に重要である。その上でエリアマーケティングなどを行い、いかに収益をあげることができるか。」
以下、会場の参加者より質問
「融資はどこが貸してくれるか?」
湯澤氏:日本政策金融公庫やみずほ銀行など。
館林氏:なかなか前例がないので難しいというのは現状。もしも2020年以降運用がうまくいかなくなったというケースをしっかりとケアして行くようなプランニングを準備して提案を行うのが良いと思う。
行政書士の石井くるみさんはエリア別「民泊許可」取得のポイントについて講演を行いました。
百戦錬磨株式会社 上山康博氏より「合法民泊仲介サイト運営会社が解説する、知っておくべき民泊新法のポイント」について講演が行われた。
観光庁は訪日外国人数を2020年4000万人、2030年で6000万人という目標を掲げている中で直近の数字としては2016年2403万人、2017年1〜6月までの半期で1376万人。6月単月で235万人という明らかに増加の一途を辿っていることをデータにて示した。
28年度の観光庁の予算が前年比倍増しているなど、国としても投資をしている分野だというのが明白であるとのこと。
年間6000万人の訪日外国人を受け入れるには船、飛行機など移動手段の拡充と宿泊整備の二つを整えなければならないとのこと。
また、今はあまり日本にきていないヨーロッパ圏の方々が2019年ラグビーW杯によって来日するというビッグイベントを控えている。開催期間である約2ヶ月の期間、地方でも開催され流ので多くの外国人が訪れることが予想され、中でも空き家の多くある地方は極めてチャンスであると語った。
特区民泊は360日利用できるということから上手く活用した方が利益が上がりやすいが、簡易宿所については旅館業法の緩和がされているにも関わらず各地域の条例によって設置すべきトイレの個数が違うなど利用しにくい部分があるのが現状だが、次回の国会で法案の改正が行われることが予想されるとのこと。
サテライト型簡易宿所(地域内に簡易宿所物件が点在している場合に、一拠点をフロントとしそこから各物件へいくという形態)の案も上がってきているので今後はそのようなものも増えてくる可能性もあるとのこと。
また、住宅宿泊事業法の詳細の政令が秋までには発表される見込みだが、ホームステイ型に関してそんなにも高いハードルではないのではないかと述べた一方で、無人型に関しては特区民泊と同じぐらいの煩雑な手続きになるだろうと予想している。
宿泊仲介事業者も新法に準拠する必要があることから、海外プラットフォームも必然的に適用されるということなので、現状とは異なり違法物件を掲載することができなくなる。つまり、来年の新法施行のタイミングまでには全てがクリーンな状態であるべきと主張した。
現状、日本国内では数兆円の市場規模だと言われている民泊が一度リセットされて、再スタートとなるのが来年であるとのこと。
また、住宅宿泊事業法において外部不経済の「匿名性の排除」というのもポイントであると解説した。住宅宿泊事業法のフローとして都道府県の各保健所等に情報を登録するのだが、何か起こった場合にどこの誰が民泊運営をしているというのが近所の人も国も把握しているという状態とのこと。
同時に現行のヤミ民泊で納税をしていない人も中にはいるかもしれないが、国税との連携などがあるので免れることはできない。つまり、国のあらゆる機関と連携しているので逃れることはできないということになるだろうと述べた。
ホームシェアリングの法整備が整っている先行事例としてヨーロッパでは2割が有人型のもの、8割無人型のものだが、物件の多くは別荘のようなものになるので、そのケースからいうと地方が今後活躍してくると思うとのこと。
楽天LIFULL STAY株式会社 事業戦略室 室長 齋藤恵亮氏「マンスリーインバウンドとは」
現行では合法的に行うには旅館業法もしくは特区民泊のどちらかしか選択肢がない中で、先日国会で成立した住宅宿泊事業法の年間180日規制による残り日数の有効活用法について説明が行われた。
楽天LIFULL STAYの取り組みとして狙う領域は、マンスリー利用。
今後、民泊新法施行により、不動産業界からの進出が増えると考えており、既存の限られたパイの中からシェアを取り合うというのが不動産業界の現状の構図だが、今後は民泊新法施行により不動産業界から宿泊市場の顧客を収益源として獲得に乗り出してくると予想する。
具体的にはマンスリーマンションを運営している不動産会社が退去者が出たのち、次の入居者がくるまでの空いた期間を民泊として利用するというケースが増えてくるとのこと。
また、賃貸管理会社がこれまで空き家で家賃収入が得られなかった一般賃貸物件をリノベなどして民泊物件として貸し出すというケースも考えられる。
合法化が進むことで民泊系のプラットフォームとホテルプラットフォームが同時に見れるような状態が近い将来くる可能性があることからホテルと差別化できる部屋作りを今から考えていく必要があると説明した。
また、今後は家具屋とも提携して部屋作りに最適なものを用意できるような準備や、楽天グループ内の保険の拡充も行なっていくとのこと。
【民泊関連業者ブース出展】