名古屋市、「ヤミ民泊」の職員処分 仮に合法の場合、民泊は「副業」になる? 求められる基準・指針

名古屋市は、市交通局所属のバス運転手として働く男性職員(40)について、職場から副業の許可を得ないで民泊を営業していたことが地方公務員法違反(営利企業などの従事制限)に当たるとして、減給10分の1(6日)の懲戒処分とした。

報道などによると、この職員は2015年10月から2017年2月までの約1年5カ月間にわたり、名古屋市中区にあるマンションの2室を借りて民泊を営業し、計約830万円の売上を得ていた。民泊営業に関しては、旅館業法における営業許可を得ていない「ヤミ民泊」だったという。

この男性職員のヤミ民泊は、近隣住民からのマンション管理会社への相談がきっかけで発覚。マンションの管理会社から連絡を受けた名古屋市の保健所が調査・指導に動いたところ、男性職員が生活費を稼ぐ目的などとして、投資の一環として営んでいることが分かった。

地方公務員法では原則、営利目的での副業は禁止されているが、不動産業のケースでは「小規模」な場合は副業として認定されず、公務員でも許可を得た場合は営むことが認められるとされている。その基準としては、国家公務員向けの人事院規則に準拠している自治体が多いとされる。

この人事院規則の中で主に宿泊・滞在向けの不動産業については、①戸建て5棟以上の賃貸②マンション10室以上の賃貸③旅館・ホテルなどの建物の賃貸④年額500万円以上の賃貸収入がある不動産の賃貸—などの基準を超えた場合は「副業」として認定され、禁止される。一方、これより小規模な場合は副業としては認定されない。

過去の公務員の懲戒処分の例を見てみても、上記の基準を超えて賃貸収入を得ていたことで懲戒免職処分を受けたケースがある。一方でこのケースでは、該当の公務員が上記の基準以下に縮小して営業するよう改善した場合は、不動産業を営むこと自体は禁止しない方針が示されていた。

今回の名古屋市のケースはヤミ民泊だったことや、賃貸収入が大きかったこと、市から許可を得ていなかったなどの複数の理由もあり、処分に至ったとみられている。一方、来年施行される住宅宿泊事業法(民泊新法)により民泊が全国解禁されていく中で、民泊新法や簡易宿所(旅館業法)、特区民泊などの枠組みで、AirbnbやBooking.comなどを活用して公務員が営む「合法民泊」はどういった扱いをされていくのか、具体的な指針はまだ明確になっていないのが現状だ。

シェアリングエコノミーの代表格の一つともされる「民泊」。休眠資産を活用することで始められることもあり、公務員にとっても地方団体から合法的に許可を得られた場合は継続しやすい小規模事業とも言える。今後、民泊がより広く普及していく中で「公務員と民泊営業」については、国・地方自治体からの細かい指針の提示が求められていきそうだ。