経済産業省は16日、旅館業法(簡易宿所営業)で民泊サービスを実施する際の玄関帳場の設置について、企業から受けた照会に対する回答を発表した。
企業からの問い合わせ内容は、コンビニエンスストアなどにチェックポイントを設け、民泊ゲストがそこで入手した電子鍵により玄関の鍵の開閉を行うスマートロックを活用する場合、旅館業法施行令上、簡易宿所営業の許可を受ける際に民泊施設に玄関帳場(フロント)の設置が義務づけられるか、というもの。
企業からの照会を受けて、経済産業省は産業競争力強化法の「グレーゾーン解消制度」の枠組みにおいて、関係省庁がこの照会について検討。その結果、旅館業法施行令では、簡易宿所営業の許可を受けるに当たり、玄関帳場の設置基準が設けられていないことから、設置を義務づけるものではないと結論づけ、照会元の企業に回答をした。
この回答の中で、「旅館業法施行令では簡易宿所営業の許可を受けるに当たり、玄関帳場の設置基準は設けられていない」とあることに改めて注目し、旅館業法施行令(2016年3月30日改正)を読み直してみる。
旅館業法の許可種別は①ホテル営業②旅館営業③簡易宿所営業④下宿営業—の4種類がある。旅館業法施行令におけるそれぞれの許可種別の玄関帳場設置についての規定は次の通り。
ホテル営業 | 宿泊しようとする者との面接に適する玄関帳場その他これに類する設備を有すること。(第1条4) |
旅館営業 | 宿泊しようとする者との面接に適する玄関帳場その他これに類する設備を有すること。(第2条4) |
簡易宿所営業 | 記載なし |
下宿営業 | 記載なし |
上記で比べても分かる通り、旅館業法施行令においては、簡易宿所営業には玄関帳場設置に関して記載がなく、今回の経済産業省の発表内容の通りとなる。
また旅館業法施行令のほか、旅館業に関する衛生確保を目的とした国から事業者への指導内容である「旅館業における衛生等管理要領」も同時に改正されている。こちらの改正内容も読んでいこう。赤字で記載した部分が、改正後に追加された文言となる。
- 【改正前】
適当な規模の玄関、玄関帳場又はフロント及びこれに類する設備を設けること。その他「第1 ホテル営業及び旅館営業の施設設備の基準」の11(玄関帳場又はフロント)に準じて設けること。
↓ ↓ ↓
- 【改正後】
適当な規模の玄関、玄関帳場又はフロント及びこれに類する設備を設けることが望ましいこと。その他「第1 ホテル営業及び旅館営業の施設設備の基準」の11(玄関帳場又はフロント)に準じて設けることが望ましいこと。ただし、宿泊者の数を10人未満として申請がなされた施設であって、次の各号のいずれにも該当するときは、これらの設備を設けることは要しないこと。
改正後においては、玄関帳場の設置は「望ましいこと」(努力目標)であり、さらに宿泊人数が10人未満で申請された施設では、玄関帳場に代替する機能を有していることや緊急時の対応体制を整えている場合には玄関帳場を設ける必要がない、としている。
Airbnbなどを通じて日本で広まった民泊。民泊施設の営業においては、来年施行される住宅宿泊事業法(民泊新法)と旅館業法、特区民泊などの枠組みが設けられている。それぞれの届け出内容や許可条件などを確認しておくことが重要と言える。