IT企業などで構成する経済団体「新経済連盟」(代表理事・三木谷浩史)はこのほど、2017年度からの新たな「観光立国推進基本計画」案に対するパブリックコメントを提出した。
この基本計画は2017〜2020年までを期間とし、訪日外国人旅行者(インバウンド旅行者)4000万人達成などを目指すための施策を示したもので、民泊を含むシェアリングエコノミーなどを活用した地域の観光振興やデジタルマーケティング戦略などについて書かれている。
空き家の有効活用推進を
新経済連盟はこの基本計画案における「民泊サービスへの対応」について、法整備や運用の面で「観光立国や空き家の有効活用の推進等の観点から過度に抑制的なものとならないように」とコメントした。
基本計画案では民泊について、治安や衛生、近隣トラブルなど懸念される課題について「適切に対応しつつ、多様な民泊サービスの健全な普及が図られるよう、規制改革実施計画及び「『民泊サービス』のあり方に関する検討会」の最終報告書(平成28 年6月取りまとめ)の内容を踏まえ、必要な法整備に取り組む」としている。
厚生労働省:「民泊サービス」のあり方に関する検討会」の最終報告書
ライドシェア導入への法制度を
基本計画案では、観光旅行者の利便性の促進については、「高齢者、障碍者、外国人その他の観光旅行者が円滑に旅行できる環境整備」を強調している。
新経済連盟はこれについて、「訪日外国人のニーズに沿った移動手段を提供することが重要」と強調した上で、「東京オリンピックまでにライドシェアを全国的に導入するための法環境整備を盛り込むべき」ととしている。
その理由としては、ライドシェアと活用することで日本に滞在中の外国人のモビリティが大きく向上し、「外出を容易にすることにより外出先での消費拡大に資する」としている。
また、外国人が使い慣れた交通手段を提供しないことは「旅行中の不満要因となり、リピーター化を阻害する」と指摘した。
2030年までに訪日客1億人に
新経済連盟はまた、訪日外国人旅行者数の目標値について、2030年までに1億人、旅行消費額を30兆円をすることを前提に目標を設定すべきであるとしている。
基本計画案では、2020年時点での訪日外国人旅行者数の目標値を4,000万人、旅行消費額の目標地を8兆円と設定している。
新年度からの新たな「観光立国推進基本計画」案に対する新経済連盟のパブリックコメントの内容は、おおむね民泊を初めとしたシェアリングエコノミーの推進を後押しするためのものとなっている。
民泊やライドシェアについては、国内のホテル・旅館業やレンタカー事業者との調整も時間を掛けて行われているが、中長期的な視点でみれば、外国人観光客誘致、すなわちインバウンド観光のさらなる推進に向けて追い風になることは間違いない。
また、政府が「2020年までに4000万人」とよりも、先の将来を見据えた目標値として「2030年までに1億人」を提案したことについては、より長期的なスパンで観光施策を考えるべき、という新経済連盟の考え方が反映しているように感じる。