【速報】住専地域の民泊禁止、事業者側「新法に反す」→ 大田区側「合理的規制」 民泊条例案パブコメ、論点鮮明に

東京都大田区が2週間実施した民泊条例案(→閲覧)の意見公募(パブリックコメント)で、計4件(2個人、2団体)の提出があったことが15日、明らかになった。大田区の条例案では、住居専用地域での民泊禁止規定を盛り込んでおり、提出意見の中には「民泊新法(→閲覧)の趣旨を滅却する」「営業の自由を侵害しており違憲」などの批判的な内容も目立った。

【速報】大田区、民泊完全禁止エリア設置へ 住宅専用地域と工業専用地域 民泊条例で特区民泊との矛盾回避|民泊大学

大田区は10月24日から11月6日の2週間、民泊条例案(特区民泊及び民泊新法)に関するパブリックコメントを実施した。提出意見の内容と区側の回答は14日の区議会健康福祉委員会で説明され、提出内容を意見別に分けた分類(計19件)では、実施地域・期間に関するものと周辺への影響に関するものが各7件、認定要件に関するものが1件、その他が4件あった。

意見の中には、「住居専用地域であることのみを理由として、その全域について制限すること」が、民泊新法(→閲覧)第18条で定める「特に必要である地域内の区域」を超えた規制であり、違法・無効だと指摘するものもあった。これに対して区側は「住居専用地域は生活環境の保全を優先させる地域として、生活環境の悪化を防止する必要性が高い地域」と説明した上で、「合理的に必要な規制」と回答している。

実施可能期間を「0日」とすることについて、健全な民泊促進を目指す民泊新法の趣旨に反するという意見について、区側は「旅館業法(→閲覧)の今後の改正(→改正案閲覧)や民泊新法制度が及ぼす影響など不明な点が数多くある」とした前置きした上で、「実施可能な期間について検討しているところ」と回答した。

区が15日に公表した意見要旨と回答の全文は下記の通り。

 

【全文】提出された意見要旨と回答

 

  • 特区での良い面を踏まえて行政・自治会・近隣利害関係者とホストコミュ(民泊事業者)との連絡協議会を組織化し、電鉄などの推進する地域の用途地域指定解除を行っていただきたい。

(回答)多くの事例に基づく貴重なご意見をいただきありがとうございます。ご意見として承ります。

  • 特区民泊条例の最低滞在期間が3日に短縮された場合、民泊の供給が拡大すると予想される。区民生活への悪影響を予測し、対策を検討しているか。

(回答)特区民泊の最低滞在期間を短縮することによる特区民泊の供給の拡大について、ご指摘いただきありがとうございます。これまでの特区民泊の運用実績を踏まえ、区民生活への影響を検討し、特区民泊の最低滞在期間の短縮を検討してきたところでございます。短縮により、これまで法の制度に則らずに行われていた、いわゆる違法民泊の一部についても特区民泊に誘導できるようになり、適切に指導できると考えております。今後も、安全・安心な区民生活を維持できるよう適正な条例等の運用をより一層図っていきます。

  • 特区民泊を計画中だが、部屋の広さが特区民泊基準に満たない。管理規約の変更が出来ないため、部屋の広さの緩和を願う。

(回答)貴重なご意見をいただきありがとうございます。特区民泊に定める一居室の床面積は、外国人旅客が快適に滞在できるようにする趣旨から、国家戦略特別区域法施行令(平成26年政令第99号)第12条第3号に基づき、床面積25m²以上とされております。ご理解いただきますよう、よろしくお願いいたします。

  • 民泊新法において、住居専用地域での民泊を認めないのは、法律の趣旨を滅却するものと考える。
  • ホテル・旅館業は年中営業が可能なうえに、近隣住民とのトラブル防止措置等が法的義務としては定められていない。民泊新法では年間180日までしか実施することができず、地域住民とのトラブル防止措置義務が課されている。住宅宿泊事業者に対して、特区民泊・ホテル・旅館業と同様の立地規制を課すことは、住宅宿泊事業法18条の委任の範囲を超えている。ホテル・旅館が立地できない地域でも住宅宿泊事業を可能とした住宅宿泊事業法の趣旨に反するので、同じ立地規制を適用すべきではない。

(回答)貴重なご意見をいただきありがとうございます。住宅宿泊事業法(平成29年法律第65号。以下「法」という。)における実施区域については、法第18条に基づき、住宅宿泊事業に起因する騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化の防止のため、必要最小限の適切な地域指定と考えております。これらの規制については、ホテル・旅館業に対する規制とは別個のものと考えております。いただきましたご意見は、今後の規制立法や民泊事業の実施状況、地域の生活環境に与える影響などに鑑み、今後の検討課題とさせていただきます。

  • 住居専用地域であることのみを理由としてその全域について制限することは、生活環境の悪化を防止することが「特に必要である地域内の区域」を超えた住宅宿泊事業の規制であり、施行令に定める基準に従っていないことは明らかである。住居専用地域であることのみを理由としてその全域について住宅宿泊事業の実施可能期間を制限する条例は、住宅宿泊事業法18条の委任の範囲を超えるものとして、違法・無効となる。
  • 住宅宿泊事業法18条の委任に基づき、特定の区域について住宅宿泊事業の実施可能期間を0日とすることは、事実上住宅宿泊事業を禁止するものといえる。そのような条例は、必要な規制を加えたうえで健全な住宅宿泊事業を促進するという住宅宿泊事業の趣旨・目的に反し、住宅宿泊事業法18条の委任の範囲を超えるものとして、違法・無効であるものと考えられる。

(回答)貴重なご意見をいただきありがとうございます。実施地域については、法第18条に基づき、住宅宿泊事業に起因する騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化の防止のため、必要最小限の適切な地域指定と考えております。ご指摘いただきました住居専用地域は生活環境の保全を優先させる地域として、生活環境の悪化を防止する必要性が高い地域であり、合理的に必要な規制と考えております。また、実施可能な期間を0日とすることに対するご指摘ですが、現段階では、実施可能な期間の制限については、旅館業法の今後の改正や民泊新法制度が及ぼす影響など不明な点が数多くあることから、実施可能な期間について検討しているところでございます。いただきましたご意見は、今後の規制立法や民泊事業の実施状況、地域の生活環境に与える影響などに鑑み、今後の検討課題とさせていただきます。

  • 本件条例案における区域及び期間の制限が、住宅宿泊事業法18条の委任の範囲内であっても、届出制の下で自由に実施することが認められている事業を特定地域において実質的に禁止する規制は、「良好な住環境保全」を理由として、営業の自由を極めて強度に制約する。本件条例案における区域及び期間の制限が営業の自由を侵害し、違憲・無効となる可能性がある。

(回答)貴重なご意見をいただきありがとうございます。営業の自由においても公共の福祉の観点からの制約を受けるものであり、法第18条の委任の範囲にあるかぎり、違憲・無効ではないと考えております。ご理解いただきますよう、よろしくお願いいたします。

  • 本件条例案において、住宅宿泊事業者に対して、宿泊者に施設の使用方法の説明を対面で行う義務を課すことが示唆されている。この説明義務を課すことは、説明内容を効果的に宿泊者に理解させるという目的に照らし、不合理に法令上の義務を超えた義務を課すものであり、必要な規制を加えた上で住宅宿泊事業を促進するという住宅宿泊事業法の目的に反し、加えて、営業の自由を制限するものといえる。特に外国語による説明は、住宅宿泊事業者が受け入れ可能な宿泊者の範囲を制限し営業を制約するものであり、営業の自由の侵害として違憲・無効となるおそれがある。

(回答)貴重なご意見をいただきありがとうございます。施設の使用方法については、火気設備その他機器の操作を誤ることによる意図しない怪我等を防止し、宿泊者の安全を守るうえでも、宿泊者がその内容を理解しうるよう対面その他確実に宿泊者を確認できる方法を用いて説明ができる体制を確保することがより好ましいと考えております。このため、このような体制を確保することを推奨することといたしますが、届出の必須要件とはいたしません。ご理解いただきますよう、よろしくお願いいたします。なお、宿泊者を専ら外国人旅客以外とする場合には外国語を用いることは不要であると解しております。

  • 住宅宿泊事業者が有料ごみ処理券の購入及び貼付により区の収集を利用できる場合には、住宅宿泊事業者にごみの事業系廃棄物としての処理を義務付けたとしても、零細な個人であって事業系廃棄物の自己処理は困難となり得る住宅宿泊事業者に対する規制として合理的な範囲であり、法の趣旨に反することなく営業の自由の保障にも適合的な規制として、適切であるものと考える。

(回答)貴重なご意見をいただきありがとうございます。ごみの捨て方については、東京都廃棄物条例に従い適正な処理をするようガイドラインを定めるなどして、区民生活への悪影響を防止しつつ、安全・安心な民泊事業の推進に努めてまいります。

  • 区条例案にある緊急事態が発生した場合の情報提供義務は、住宅宿泊事業者には、既に法令上、外国語を用いて火災、地震その他の災害が発生した場合における通報連絡先に関する案内をする義務が課されており、国の法令と重複した不要な規制である。旅館・ホテル業の事業者に対して課されていない規制を住宅宿泊事業者に課すことは、住宅宿泊事業の促進という同法の目的に反するとともに、そのような規制は不合理に営業の自由を過剰に制約することから、営業の自由の侵害として違憲・無効となるおそれもある。なお、特区民泊は法律で外国人の滞在に適したサービスの提供と定義されている。法文上外国人の滞在に適したサービス提供を目的としていない住宅宿泊事業に、特区民泊と同様の外国語による情報提供義務を課す場合、住宅宿泊事業の振興という同法の目的に反する。以上より、緊急時における情報提供義務に関する規定は、内容によって、不要か、過剰な規制である。

(回答)貴重なご意見をいただきありがとうございます。民泊は通常、利用者の居住地から離れた地域での宿泊を想定していることから、緊急事態が発生した場合の避難や救急医療等に係る適切な情報提供を行うことは、利用者の安全・安心を図る観点から好ましいものと考えております。このため、このような体制を確保することを推奨することといたしますが、届出の必須要件とはいたしません。ご理解いただきますよう、よろしくお願いいたします。「旅館業における衛生管理要領」には、防火安全対策として災害時の事故防止を図るため従業者の防火対策、火災時の措置等の必要性が記載されております。このことから、緊急時における避難及び緊急医療等の情報提供は宿泊者及び周辺住民の安全・安心を担保するうえで行われるべき必要な措置と考えております。なお、宿泊者を専ら外国人旅客以外とする場合には外国語を用いることは不要であると解しております。

  • 近隣住民への周知を届出要件に追加する条例は、そのような届出要件の加重を認める規定が住宅宿泊事業法上存在しないことから、法に違反する。また、当該条例が住宅宿泊事業法と異なる目的にある場合にも、同法の目的及び効果を阻害する。いずれにせよ「法律の範囲内」であるとはいえない。

(回答)貴重なご意見をいただきありがとうございます。近隣住民への周知については、住宅を用いて事業を行うことから、事前に事業計画を周知することにより、近隣住民の不安を解消し、近隣住民との調和を図り円滑な事業運営を確保することが民泊事業の推進を図るうえで、より好ましいと考えております。このため、このような事前周知の記録を作成することを推奨することといたしますが、必須要件とはいたしません。ご理解いただきますよう、よろしくお願いいたします。

  • 近隣住民への周知義務の賦課は、近隣トラブルの円滑な解決等を目的とする規制として、営業の自由の規制に該当する。住宅宿泊事業法は、近隣住民との間のトラブル解決の様々な義務に違反した場合に業務停止命令、業務廃止命令及び一部義務の違反は罰則の対象としている。様々な義務を課されている住宅宿泊事業者に対し近隣住民への周知の義務の賦課は、過剰な規制であって近隣トラブルの円滑な解決等を実現する手段として合理的とはいえず、本件条例案上の当該禁止は違憲無効となる。

(回答)貴重なご意見をいただきありがとうございます。近隣住民への周知については、営業の自由と近隣住民の生活環境の保全との調整を図る観点から好ましいものとして推奨することといたしますが、必須要件とはいたしません。また、法に定める近隣住民とのトラブル解決に関する規定については、指導に努めるとともに罰則を適用するなどして適切に運用されるよう努めてまいります。ご理解いただきますよう、よろしくお願いいたします。

  • 個人である住宅宿泊事業者が、事業計画の周知に際してその氏名、連絡先等を近隣住民に対して周知することが義務付けられるとすれば、プライバシーにかかわるものとして保護されるべき情報を強制的に不特定多数の第三者に対して開示させられることになる。私生活上の不安、嫌悪感、不快感といった精神被害が生じ得ることは明らかであるため、そのような情報の開示を義務付けることはプライバシーの侵害に当たり、許されないものと思われる。

(回答)貴重なご意見をいただきありがとうございます。事業における責任の所在を明確にすることは、近隣住民の不安を解消し、近隣住民との調和を図ることにより円滑な事業運営を確保するためにも必要な措置と考えております。このため、法第13条に基づき、住宅宿泊事業者は、緊急連絡先を記載した標識を届出住宅ごとに公衆の見やすい位置に掲げることとされております。また、緊急連絡先以外の事項に関する近隣住民への周知については、営業の自由と近隣住民の生活環境の保全との調整を図る観点から好ましいものとして推奨することといたしますが、届出の必須要件とはいたしません。ご理解いただきますよう、よろしくお願いいたします。

  • 一軒家シェア型は、大田区で一軒家ホストの大多数が存在する住宅専用地域の解除を大田区でも解除すべきである。

(回答)貴重なご意見をいただきありがとうございます。法においては、一軒家シェア型を含む家主居住型と家主不在型との定義や区分等が明らかでなく、現在は一律規制の対象としております。今後の家主居住型の民泊の運用状況などに鑑み、今後の検討課題とさせていただきます。

  • 民泊新法では、年間180日以下の宿泊しか認められず、特区民泊とは大きな違いがある。にも関わらず、規制の水準を同程度においている。バランスを欠いていると思う。

(回答)新法民泊と特区民泊を比較したご指摘ありがとうございます。ご指摘のとおり、新法民泊においては、人を宿泊させる日数は1年間で180日を超えることができません。しかし、新法民泊も特区民泊もともに人を宿泊させる施設である以上、安全・安心に宿泊できる環境を整備するとともに、区民の良好な生活環境を守る必要がございます。区は特区民泊を平成28年1月29日から実施しており、着実に定着していると認識しております。これらの実績を踏まえ、新法民泊においても適正に指導していきます。ご理解いただきますよう、よろしくお願いいたします。

  • 民泊新法で地域限定をする場合、住居専用地域で民泊を実施している区民は違法事業者となる。救済措置はないのか。

(回答)貴重なご意見をいただきありがとうございます。法における実施区域については、法第18条に基づき、住宅宿泊事業に起因する騒音の発生その他の事象による生活環境の悪化の防止のため、必要最小限の適切な地域指定と考えております。実施地域ついては、今後の検討課題とさせていただきますが、現時点において実施地域以外での事業者に対する救済措置等は想定しておりません。ご理解いただきますよう、よろしくお願いいたします。

  • 住宅専用地域用途用地の禁止解除をすべきである。空き家課題を抱える大田区の田園調布、大森山王、久が原地区などの一軒家在宅型の築20年以上を経た古家の用途解除を認めるべきである。

(回答)空き家の活用を視野に入れた貴重なご意見をいただきありがとうございます。特区民泊における実施地域は、住民の生活環境の悪化を防ぐ観点から、東京圏の「区域計画」により指定されております。区内の都市環境や区民の住環境を守るために必要最小限の適切な地域指定と考えております。また、法における実施区域については、法第18条に基づき、生活環境の悪化の防止のため、必要最小限の適切な地域指定と考えております。今後の規制立法や民泊事業の実施状況、地域の生活環境に与える影響などに鑑み、今後の検討課題とさせていただきます。

  • 民泊規制緩和により地域弱者を合法化支援すべき。大田区課題の空き家対策と子育て待機児童の施設のシェア型ハウスなど、先行した特区のさらなる発展にて、社会的弱者への民泊施策の規制緩和を図るべきである。

(回答)貴重なご意見をいただきありがとうございます。現行法では、他制度への転用は予定されていませんが、ご意見として承ります。