【第2回】民泊と分譲マンションにおける管理規約 マンション管理士 根本駿輔さん

都市部の代表的な住居であるマンション。共同住宅であるマンションで民泊を行おうとする場合、住民から構成される管理組合との調整が必須です。民泊トラブルを避けるために必要な民泊関係の管理規約の設定方法などを整理します。

 

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民泊に関する管理規約設定例

 

 マンション管理規約は個々のマンションで自由に定めることができますが、お手本があったほうがスムーズです。そこで、国土交通省がモデルとなる「標準管理規約」を作成し、これを骨組みとして作成すれば概ね管理組合の運営に支障がでないようになっています。この標準管理規約は社会情勢や法律・規制などの変化に伴い、適宜変更されて時代の情勢に合うようにされていますが、直近では住宅宿泊事業法(民泊新法)の成立を受けて29年8月に改正されました。

 そもそも住戸の用途については、標準管理規約中の第12条に「区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。」という規定があり、住宅としての用途以外を禁止しています。この規定では、当然宿泊施設を営むことはできません。しかし民泊は基本的に「住宅」を利用するものであるため、今までの標準管理規約の記述だけでは「住宅」の定義に民泊住戸を含めてよいのかグレーとなっていました。

この改正された標準管理規約では、民泊について「許可する場合」と「禁止する場合」でそれぞれ第12条の2項に追加の記述をしています。

許可する場合

区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用することができる

禁止する場合

区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用してはならない

 

グレーの状態にしておくと後々トラブルの原因となりますので、住宅宿泊事業法が施行される30年6月、さらには事業者の登録がされる3月までに、許可または禁止の方針を管理組合で合意形成をとった上で上記の規定を第12条に追加する管理規約改正を行うことが、管理組合にとってもホストにとっても望ましいでしょう。

 なお、大阪府や大田区などいわゆる「特区民泊」の制度がある自治体では、「区分所有者は、その専有部分を国家戦略特別区域法第13条第1項の特定認定を受けて行う国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業に使用することができる(orしてはならない)。」という規定の追加も必要です。2項に住宅宿泊事業法の規定、3項に特区民泊の規定を入れる、というのが標準的な改正方法です。

▼両方とも許可する場合の例

第12条 区分所有者は、その専有部分を専ら住宅として使用するものとし、他の用途に供してはならない。

   2 区分所有者は、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用することができる。

   3 区分所有者は、その専有部分を国家戦略特別区域法第13条第1項の特定認定を受けて行う国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業に使用することができる。

 

 さらに、「責任者である事業者がマンションの住民ならOK」といういわゆる「家主居住型」のみ認める場合は、2項の規定に「~住宅宿泊事業(同法第11条第1項2号に該当しないもので、住宅宿泊事業者が自己の生活の本拠として使用する専有部分と同法第2条第5項の届出住宅が同一の場合又は同じ建物内にある場合に限る。)に使用することができる。」と規定することで限定が可能です。また、家主居住型は「住民は同じマンションだが別の部屋に住んでいる」という場合も含むため、家主が生活を営んでいる住居に宿泊させる「家主同居型」のみ認める場合は上記の規定から下線を引いた「又は同じ建物内にある場合」という部分を削除します。

 

管理規約以外の民泊についての制限

 住宅宿泊事業法の施行が来年に迫ってきているものの、管理規約の改定は総会決議、しかも区分所有者および議決権総数の4分の3の賛成がなければできない「特別決議」が必要であり、定期総会だけでは年に1回しか改正のチャンスがありません。仮に上程しても賛成数が足りなければ可決となりませんが、「出席者」の過半数で良い普通決議と異なり、委任状や議決権行使書を全く出してこないような住民も母数に含まれてしまうため、普段から住民の関心が薄いマンションではかなりハードルが高い決議です。

 そこで、国土交通省では「管理規約に明記が無くとも、理事会決議等で判断する」という方針を出しています。判断の材料として、事業者が都道府県へ届出を出す際に管理規約規定が特にない場合には「管理組合に住宅宿泊事業を禁止する意思がないことを確認したことを証する書類」を添付することになっています。具体的には、「届出時点で住宅宿泊事業を禁止する方針が総会・理事会で決議されていない旨を確認した誓約書」または「住宅宿泊事業法成立以降(平成29年6月以降)の総会・理事会議事録」が検討されています。これは、管理組合が禁止をしたければひとまず理事会で禁止する方針を決議さえすれば管理規約改正をしなくとも禁止できることを意味します(やはり管理規約に明記することがどちらにとっても望ましいですが)。

 少し裏技のような話になりますが、実は特別決議を要する管理規約改正以外にもルールを明示する方法があります。それは「使用細則に民泊についての規定を委ねる」という手段。第12条の2項に追加する規定を「区分所有者が、その専有部分を住宅宿泊事業法第3条第1項の届出を行って営む同法第2条第3項の住宅宿泊事業に使用することを可能とするか否かについては、使用細則に定めることができるものとする。」と使用細則にパスする規定だけ設け、許可または禁止の規定を使用細則に規定します。すると、使用細則の改正は普通決議であることから一般的な決議事項と同じく「出席者の過半数」で決議することができ、どちらかに統一しやすくなります。12条に規定を設けること自体はやはり特別決議が必要ですが、この方法の使い道として「先に定期総会で12条の規定だけ決議しておき、アンケートや理事会での議論で方向が定まったところで臨時総会を開催して使用細則を改正する」というやり方が考えられます(同時に上程すると、12条中に規定するのと賛否の示し方が実質的に変わりません)。

 

 なぜ急がねばならないのか?

 

 「定期総会のタイミングが3月までにないけど、遅れても大して支障はないだろう」と考えている管理組合のマンションは要注意です。最終的に許可する方向で理事会の話が進んでいれば問題ないのですが、仮に禁止する方針がありつつも理事会決議まではいかない、というような場合、基本的には民泊は許可要件を満たすことになります。既に民泊を始めた住戸がある状態で後から禁止規定が設けられると、当然ながらトラブルに発展する蓋然性が高くなってしまいます。しかも最終的には必ず管理組合が強いというような話ではなく、区分所有法第31条の「規約の設定、変更又は廃止が一部の区分所有者の権利に特別の影響を及ぼすべきときは、その承諾を得なければならない」という部分に抵触する可能性があるため、後から管理組合が禁止しようと思っても民泊ホストが反対すればできない可能性があります。

 ただしこれはまだ当然ながら民泊としての判例がありませんので、本当に民泊の禁止が「特別の影響を及ぼす」事項に該当するのかは裁判が起こってみなければわかりません。一般に同条の解釈としては「規約の必要性・合理性と当該区分所有者の不利益とを比較して、受忍すべき程度を超える不利益かどうか」で判断される、というやや曖昧な基準があります。

「特別の影響」に当てはまる例としてよく挙げられるのは「施設を新規に設置すると、すぐ前の住戸の採光が悪くなる場合」や「1F店舗の駐車場への駐車を禁止する場合」に該当するため承諾が必要とされます。一方で当てはまらない例としての代表例は「マンションに居住していない所有者に、協力金の負担を求めた場合」や「(既にペットを飼育している住戸がある状況で)ペットの飼育を禁止した場合」などです。あまりダイレクトに類似の事例というのが今のところ見当たらないため、民泊が果たしてどう判断されるのかは難しいところです。

管理組合にとってはもちろんのこと、ホストにとっても運用予定が狂うことになりかねませんので、やはり3月の事業者登録までに少なくとも理事会内での方針が固まっていることが望ましいでしょう。

 

〈著書プロフィール〉根本駿輔(ねもと・しゅんすけ)
マンション管理士、宅地建物取引士、管理業務主任者。早稲田大学商学部卒。2004年より都内マンションデベロッパーに勤務し、営業とマンション管理に携わる。2016年退職。現在、千葉県袖ケ浦市議会議員として働く傍ら、千葉県マンション管理士会に所属。

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