【全文公開】大田区で民泊条例が全国初成立 住居専用地域などで完全禁止 意見公募も内容変わらず

大田区議会で8日、松原忠義区長が提出した「大田区住宅宿泊事業法施行条例」(民泊施行条例)が賛成多数で可決した。住居専用地域で工業地域などで民泊を完全禁止する。民泊条例の成立は全国初。来年6月15日に住宅宿泊事業法(民泊新法)とともに同時施行する。

民泊新法では年間の営業上限日数を180日と定めている。一方、第18条では地方自治体が生活環境の悪化などを理由に、条例制定により区域を定めて営業日数をさらに制限することができることを定めている。

成立した民泊条例では、住居専用地域に加えて工業地域と工業専用地域でも民泊を禁止する。これは大田区が全国に先駆けてスタートした特区民泊の禁止地域と重なる内容となっている。

民泊条例をめぐっては、住居専用地域での規制を柱に新宿区や中野区、北海道、京都府・市などが検討を進めている。その中でも大田区が議会に提出した住居専用地域での民泊を完全に禁止する内容は、とりわけ厳しい規制として注目を集めていた。

大田区は民泊条例案の議会提出を前にパブリックコメントを2週間実施。寄せられた意見の中には、住居専用地域であることのみを理由にその全域について制限することが、「特に必要である地域内の区域」(民泊新法第18条)を逸脱した規制だとの指摘もあったが、内容を変えなかった。

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また、北海道などが検討している「家主同居型」を上乗せ規制対象外するなどの規定を盛り込むべきとの意見もあったが、区側は「民泊新法においては家主同居型と不在型の区分などが明らかではない」とした上で、「一律規制の対象としている」と回答。文言を修正しなかった。

大田区住宅事業法施行条例の全文は下記の通り。

大田区住宅事業法施行条例

(趣旨)
第1条 この条例は、住宅宿泊事業法(平成29年法律第65号。以下「法」という。)及びこれに基づく命令に定めるもののほか、住宅宿泊事業に起因する事象による生活環境の悪化を防止するため、必要な事項を定めるものとする。

(制限する区域等)
第2条 法第18条の規定により住宅宿泊事業の実施を制限する区域は、次に掲げるとおりとする。
(1)都市計画法(昭和43年法律第100号)第8条第1項第1号に掲げる第一種低層住居専用地域、第二種低層住居専用地域、第一種中高層住居専用地域、第二種中高層住居専用地域、工業地域及び工業専用地域。
(2)都市計画法第8条第1項第2号に掲げる特別用途地区のうち、文教地区及び特別業務地区
(3)都市計画法第8条第1項第13号に掲げる流通業務地区
(4)都市計画法第12条の4第1項第1号に掲げる地区計画のうち、大田区平和島地区地区計画、大田区東海三丁目地区地区計画、大田区田園調布地区地区計画、田園調布多摩川台地区地区計画及び大森西七丁目地区地区計画
2 住宅宿泊事業を実施しようとする住宅(法第2条第1項に規定する住宅をいう。以下同じ。)の敷地が、前項の規定により制限を受ける区域の内外にわたる場合においては、その敷地の全部について、敷地の過半の属する区域の規定を適用する。
3 第1項各号に掲げる区域での住宅宿泊事業の実施は、全ての期間、これを制限する。

(住宅宿泊事業者の責務)
第3条 住宅宿泊事業を営み、又は営もうとする者は、住宅宿泊事業の運営に当たっては、住宅の周辺地域の生活環境への悪影響を防止することが重要であることを認識し、法及びこれに基づく命令並びに他の法令に基づく規制を遵守するとともに、次に掲げる措置を講ずるよう努めなければならない。
(1)法第9条第1項の規定による説明を使用開始時に対面その他確実に宿泊者を確認できる方法を用いて説明することができる体制を確保すること。
(2)住宅の宿泊者に対し、火災等緊急事態が発生した場合において避難及び緊急医療等に係わる適切な情報提供を行うことが常時できる体制を確保すること。
(3)住宅の近隣住民に対し、当該住宅が住宅宿泊事業の用に供されるものであることについて、事前に、事業計画の適切な周知及び当該周知に係わる記録を作成すること(既に住宅宿泊事業の用に供されている住宅にあっては、速やかに、これに準じた措置を講ずること。)。

(証票の交付)
第4条 区長は、住宅宿泊事業を営み、又は営もうとする者が第1号及び第2号のいずれにも該当し、かつ、住宅宿泊事業の用に供する住宅が第3号に該当するときは、その求めに応じて、区が推奨する基準を満たした住宅宿泊事業者及び施設であることを示す証票を交付することができる。
(1)前条に規定する住宅宿泊事業者の責務を果たしていること。
(2)区が実施する講習を受講したこと。
(3)住宅が第2条第1項に定める住宅宿泊事業の実施を制限する区域以外の区域に存するとき。

(委任)
第5条 この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

付則
(施行期日)
1 この条例は、平成30年6月15日から施行する。ただし、次項の規定は、同年3月15日から施行する。

(準備行為)
2 この条例の施行のために必要な準備行為は、この条例の施行の日前においても行うことができる。

(検討)
3 区は、この条例の施行後2年以内に、この条例の施行の状況について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。

(提案理由)
 住宅宿泊事業法の施行に伴い、住宅宿泊事業の実施を制限する区域及び期間その他必要な事項を定めるため、条例を制定する必要があるので、この案を提出する。