【全文公開】新宿区でも民泊規制条例可決 住居専用地域で月〜木曜に営業禁止 苦情内容は3年保護義務 大田区に続き全国2例目

東京都の新宿区議会は11日、独自に民泊のルールを定めた新宿区の民泊規制条例(→全文テキストはこのページ下段)を可決した。住居専用地域で月曜日正午〜金曜日正午(チェックイン日ベースだと月曜〜木曜)まで民泊実施を禁止することが柱。

条例の正式名称は「新宿区住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関する条例」で、内容は全14条と附則で構成される。条例は住宅宿泊事業法(民泊新法:全文)と同時に来年6月15日に施行される。民泊条例の可決は、住居専用地域での民泊を全面禁止した東京都大田区に続いて2例目(→記事)。

民泊事業者に対しては、民泊新法に基づいて民泊施設の届出を行う7日前までに、住宅の周辺地域の住民への書面による説明を義務づける。またその説明を行った内容を速やかに区長に報告することや、周辺住民から苦情を受けた日と内容を3年間保存する義務を規定した。

また条例では、宿泊者(ゲスト)の責務も規定。民泊届出住宅に宿泊している間は、「届出住宅の周辺地域の生活環境に悪影響を及ぼさないようにしなければならない」とした。

新宿区の民泊条例素案の判明は、全国で最も早い10月上旬だった(→記事)。区はパブリックコメント(意見公募)を2週間実施して意見提出を29人(意見件数89件)から受けたが、変更されたのは下記2点にとどまった。

  • 住宅宿泊事業者及び住宅宿泊管理業者は、住宅宿泊事業に起因する事象による生活環境の悪化を防止するようにし→努め)なければなりません。
  • 宿泊者は、住宅を利用するに当たっては、生活環境の悪化を防止するようにし→努め)なければなりません。

今回成立した新宿区の民泊規制条例の全文は下記の通り。

 

新宿区住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関する条例

(目的)
第1条 この条例は、住宅宿泊事業法(平成29年法律第65号。以下「法」という。)に基づき規定すべき事項及び法に定めるもののほか住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関し必要な事項を定めることにより、住宅宿泊事業に起因する事象による生活環境の悪化を防止することを目的とする。

(定義)
第2条 この条例で使用する用語の意義は、法(第2条第4項を除く。)で使用する用語の例による。
2 この条例において「住宅宿泊事業者」とは、法第2条第4項に規定する住宅宿泊事業者であって、その営む住宅宿泊事業が新宿区(以下「区」という。)の区域内(以下「区内」という。)に存する住宅に係わるものであるものをいう。

(区の責務)
第3条 区は、第1条に規定する目的を達成するため、住宅宿泊事業の適正な運営の確保に関する施策を策定し、及びこれを実施するものとする。
2 区は、前項の施策を実施するに当たっては、警察、消防その他の関係機関と連携するものとする。

(区民の責務)
第4条 区民は、区が実施する前条第1項の施策に協力するよう努めるものとする。

(住宅宿泊事業者の責務)
第5条 住宅宿泊事業者は、住宅宿泊事業の実施により届出住宅(法第2条第5項に規定する届出住宅をいう。以下同じ。)の周辺地域の生活環境に悪影響を及ぼさないようにしなければならない。

(宿泊者の責務)
第6条 宿泊者は、届出住宅を利用するに当たっては、届出住宅の周辺地域の生活環境に悪影響を及ぼさないようにしなければならない。

(周辺地域の住民に対する説明等)
第7条 住宅宿泊事業を営もうとする者は、住宅宿泊事業を営もうとする住宅ごとに、次に掲げる事項について、法第3条第1項の届出をしようとする日の7日前までに、住宅の周辺地域の住民(住宅を構成する建築物に居住する者その他の新宿区規則(以下「規則」という。)で定める者に限る。)に対し、書面により説明しなければならない。
(1)商号、名称又は氏名及び連絡先
(2)住宅が住宅宿泊事業の用に供されるものであること。
(3)住宅の所在地
(4)住宅宿泊事業を開始しようとする日
(5)法第9条第1項(法第36条において準用する場合を含む。)の規定により宿泊者に対して説明すべき同項に規定する事項
(6)法第11条第1項の規定による住宅宿泊管理業務の委託(以下単に「住宅宿泊管理業務の委託」という。)をする場合においては、その相手方である住宅宿泊管理業者の商号、名称又は氏名及び連絡先
2 住宅宿泊事業を営もうとする者は、法第3条第1項の届出の際に、併せて、前項の規定による説明を行った旨及びその内容を規則で定めるところにより区長に報告しなければならない。
3 住宅宿泊事業者は、第1項第1条、第5号又は第6号に掲げる事項を変更しようとするときは、変更しようとする日の7日前までに、その旨を第1項の住宅の周辺地域の住民に対し、書面により説明しなければならない。
4 住宅宿泊事業者は、前項の規定による説明を行ったときは、速やかに、その旨及び内容を規則で定めるところにより区長に報告しなければならない。

(廃棄物の適正処理)
第8条 住宅宿泊事業者は、住宅宿泊事業の実施に伴って生じた廃棄物を自らの責任において適正に処理しなければならない。

(苦情等及びその対応の記録)
第9条 住宅宿泊事業者は、法第10条の規定により届出住宅の周辺地域の住民からの苦情及び問合せ(以下「苦情等」という。)に対応した場合には、当該苦情等を受けた日並びに当該苦情等及び対応の内容を記録し、当該記録を3年間保存しなければならない。

(住宅宿泊管理業務の委託がされた場合の適用除外及び住宅宿泊管理業者への準用)
第10条 第5条及び前2条の規定は、住宅宿泊管理業務の委託がされた届出住宅において住宅宿泊業務を営む住宅宿泊事業者については、適用しない。
2 第5条及び前2条の規定は、住宅宿泊管理業務委託がされた届出住宅において住宅宿泊管理業を営む住宅宿泊管理業者について準用する。この場合において、前条中「法第10条」とあるのは、「法第36条において準用する法第10条」と読み替えるものとする。

(住宅宿泊事業の実施の制限)
第11条 法第18条の規定により、住居専用地域(都市計画法(昭和43年法律第100号)第8条第1項第1号に掲げる第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域、第1種中高層住居専用地域及び第2種中高層住居専用地域をいう。以下同じ。)においては、月曜日の正午から金曜日の正午までは、住宅宿泊事業を実施することができない。
2 届出住宅を構成する建築物の敷地が住居専用地域の内外にわたる場合において、当該敷地の過半が住居専用地域に属するときは、当該敷地は住居専用地域内にあるものとして、前項の規定を適用する。

(届出住宅の公表)
第12条 区長は、届出住宅に関する次に掲げる事項を公表しなければならない。
(1)所在地
(2)住宅宿泊事業者の連絡先
(3)第7条第1項の規定による説明が完了した年月日
(4)その他規則で定める事項
2 住宅宿泊管理業務の委託がされた届出住宅についての前項第2号の規定の適用については、同号中「住宅宿泊事業者の連絡先」とあるのは、「住宅宿泊管理業務の委託の相手方である住宅宿泊管理業者の商号、名称又は氏名及び連絡先」とする。

(建物又は土地の提供者等の責務)
第13条 区内に損する建物(その一部を含む。)又は土地を他人に提供する者は、当該提供に係わる契約(その更新の契約を含む。)の締結に際して、当該建物又は当該土地に建築する建物における住宅宿泊事業の実施の可否を当該契約書に記載するよう努めなければならない。
2 区内に存する建物の区分所有者(建物の区分所有等に関する法律(昭和37年法律第69号)第2条第2項に規定する区分所有者をいう。)は、当該建物における住宅宿泊事業の実施の可否を規約等(同法第30条第1項の規約及び当該規約に基づき定める細則等をいう。)に定めるよう努めなければならない。
第14条 この条例に定めるもののほか、この条例の施行に関し必要な事項は、規則で定める。

附則

(施行期日)
1 この条例は、平成30年6月15日から施行する。ただし、第13条の規定は公布の日から、第7条第1項並びに事項及び附則第3条の規定は同年3月15日から施行する。

(経過措置)
2 住宅宿泊事業を営もうとする者であって法附則第2条第1項前段の届出をしようとし、又はしたものについての第7条第1項の規定の適用については、同項中「法第3条第1項の届出をしようとする日」とあるのは、「この条例の施行の日」とする。
3 前項に規定する者は、この条例の施行の日の前日までに、同項の規定により読み替えて適用する第7条第1項の規定による説明を行った旨及びその内容を同項の規則で定めるところよにより区長に報告しなければならない。
4 前項の規定による報告を行った者については、第7条第2項の規定は、適用しない。