「民泊新法」に対する意見書を公開 シェアリングエコノミー協会

一般社団法人「シェアリングエコノミー協会」(東京都千代田区)は23日、政府が今国会会期中の提出を予定している民泊新法(住宅宿泊事業法)に関する意見書を発表した。民泊新法案で盛り込まれている営業上限日数(180日)の設定について、家主同居型(ホームステイ型)の場合は「反対」、家主不在型の場合には「賛成」と、異なる意見を表明。その上で民泊新法について「柔軟かつ実態に即した法律の整備を望みます」としている。

「シェアリングエコノミー」は日本語では「共有型経済」と呼ばれ、個人・法人が保有している遊休資産(モノ・サービス)などを他者と共有して利用する仕組みのことを指す。その遊休資産(例えば、車や部屋)が使用されていない時間に仲介役がそれらを有料で他の人に貸し、仲介役も貸し出した個人・法人も収入を得ることができる、というものだ。「民泊」もこれに含まれる。

同協会は2015年12月、このシェアリングエコノミーを推進するガイアトックス社やスペースマーケット社など6社によって設立された。同社のウェブサイトによると、2月24日時点では、民泊仲介世界大手のAirbnb(エアビーアンドビー)などを含む一般会員61社のほか、準会員が24社、賛助会員が53社、サポーター会員が2人おり、計140社・人の会員を抱えている所帯となった。

シェアリングエコノミー協会が今回発表した民泊新法に関する意見書は、主に民泊新法における「仲介業者の登録制」「上限日数」など4項目において見解を表明している。各項目を引用し、民泊新法の概要と読み比べていく。

仲介業者の登録制に「反対」

住宅宿泊仲介業者(プラットフォーマー)は登録制にすべきでありません

 シェアリングエコノミーはICT技術の発展を前提に世界的にもこの数年で立ち上がってきた経済領域であり、信用や安全性確保等のために活用されるICT技術のあり方も含めて変化が非常に速い分野です。政府は高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)の新戦略推進専門調査会分科会の下にシェアリングエコノミー検討会議を設置し、技術や市場の変化に柔軟に対応しながら安全安心な運営を確保できるためのガイドラインを検討してきました。法律という変更が難しい手段による規制の下、プラットフォーム事業者を登録制にすることは、急速な市場や技術の変化に柔軟に対応することが困難となり、成⻑による経済発展を妨げるので可能な限り避けるべきです。

 特に⺠泊においては、事前にすべての物件の合法性の確認を求める例は世界的にも見られず、この義務が課される場合は、日本のプラットフォームビジネスの健全な発展を阻害します。これはプラットフォームによる自主努力を推奨するものであり、国内外のプラットフォーム事業者と連携し、ガイドラインの設定などをすすめるべきです。

 登録制にせざるを得ない場合においても、安易に他の領域に拡大することについては極めて慎重に検討すべきと考えます。

 

ここで言う「住宅宿泊仲介業者」とは、仲介サイトを運営するAirbnb(エアビーアンドビー)やHomeAway(ホームアウェイ)などのことを指す。民泊新法案では登録主体は観光庁長官とされており、5年ごとに登録の更新が必要な枠組みとなっている。

シェアリングエコノミー協会は民泊新法に関する意見書の中で、「法律という変更が難しい手段による規制の下、プラットフォーム事業者を登録制にすることは、急速な市場や技術の変化に柔軟に対応することが困難となり、成⻑による経済発展を妨げるので可能な限り避けるべき」と強調している。

 

家主同居型での上限には「反対」

家主居住型(ホームステイ型)には上限日数制限に反対します

 安全面や騒音等の近隣等の騒音トラブル、地域の旅館等の経営への影響を考慮して、年間の宿泊日数に上限を設けようという意見があります。しかし私たちは、家主居住型に日数の制限は不要だと考えます。まず、近隣トラブル等については「毎日は困るが時々ならよい」という問題ではなく、軽減のための対応は、日数制限以外の措置で柔軟に検討すべきです。

 旅館等の経営への影響については、まず、居住型であれば何件も同時に運営できるものではなく、観光中心地にあるホテル地区などから離れた住宅地などにあるものが多いため、影響は少ないと考えます。逆に、宿泊密集地区を外れた場所に多いことにより、典型的な観光施設とは異なる地元の飲食店や小売店へ観光客を誘導することとなり、地域経済に恩恵をもたらします。ホストがそのような地元の小さな名所を案内することにより、典型的なガイドブックにはないような地域の魅力が価値となり、新たな国際交流の価値も生まれます。

 上限日数を設定せざるを得ない場合は、法律の附帯決議において、将来的に日数制限のあり方を外す方向で見直すことを明記すべきと考えます。

 

シェアリングエコノミー協会の民泊新法に対する意見書の中で特に注目すべき点の一つが、民泊物件の営業日数上限について、家主同居型(ホームステイ型)の場合は「反対」、家主不在型の場合は「賛成」の意を表明していることだ。2つの形態についてそれぞれ「賛成」「反対」の声を挙げる理由とは何か。

まず家主同居型について読んでみると、大きく2つの理由に分かれる。

1つ目は、近隣トラブルへの考慮を根拠とした法案における上限設定の理由について、「近隣トラブル等については『毎日は困るが時々ならよい』という問題ではなく、軽減のための対応は、日数制限以外の措置で柔軟に検討すべき」というもの。

2つ目は、旅館業者の経営への影響を理由とした上限日数の設定については、「旅館等の経営への影響については、まず、居住型であれば何件も同時に運営できるものではなく、観光中心地にあるホテル地区などから離れた住宅地などにあるものが多いため、影響は少ない」と指摘した上で、「逆に、宿泊密集地区を外れた場所に多いことにより、典型的な観光施設とは異なる地元の飲食店や小売店へ観光客を誘導することとなり、地域経済に恩恵をもたらします」と強調している。

一方で、「家主不在型」の場合には「賛成」を表明している。次の項で内容を読んでみる。