私は2年間民泊ホストをしていて、多数の外国人旅行者を自分が運営する部屋に向かい入れてきたが大半はルールを守りマナーの良い人たちばかりだった。(残念ながら一部こちらの言うことを聞かないマナーの悪いゲストも居たが、そういう人たちは一定数存在するので 仕方がないと思う。)
民泊ホストを続けていく上で一番の苦労や障害は周囲からの偏見や無理解だ。
民泊には敵が沢山居る。
近隣住民も、世論も、地方自治体も、行政も、マスメディアも、ホテル旅館業界も、一部の政党も民泊を悪だ害だと決めつける。こういう人たちの非難や嫌がらせに耐えながらしんどいリスクを取るのが今の民泊ホストの実情だと思う。
私はずっとマスメディアの報道やヤフーニュースのコメントをチェックしていたが、外国人旅行者に対する根拠ない印象だけの偏見が酷すぎると思う。チェックしていた中で一番印象に残ったのは渋谷警察署が作った民泊通報ポスター(下の写真)で、「テロ防止の為に家に入っていく外国人が居たら通報しよう」と呼びかけている。まるで家に入っていく外国人がテロリストの様に描写されているこのポスターは民泊ホスト界隈では結構話題になった。
一方で住宅宿泊事業法(民泊新法)が今年はかなり話題になったが、全旅連のロビイングの成果で地方自治体が上乗せ条例で規制できる裁量権が広がり、実施前から骨抜き状態にされているのは失望を覚えた。
一番ひどい例は大田区で住宅専用地域ではホームシェア (ホームステイ型)すらできない様な条例で実質禁止とされてしまっている。 これも地域に与える影響を考えての事と地方自治体は自分たちの上乗せ条例を正当化して いるが、要するにそれは外国人は地域社会にとって有害だと言い換えている様なものではないだろうか。警察の発表資料に目をやると、実は短期滞在する訪日外国人の犯罪発生率は日本人住民のそれと比較してかなり低い。日本に遊びに来る訳で、害を及ぼしに来る訳ではないから当然とい えば当然だが、こういうエビデンスを無視して「外国人は治安を悪くする」という印象だけが一人歩きして広まっている。
民泊→外国人増える→ゴミ・騒音問題多発→治安悪化
これが今の一般的な日本人の外国人に対する見方ではないだろうか。
確かに日本のマナーやルールを判らず悪意なく粗相をしてしまう外国人旅行者は居る。しかし、同じような粗相を日本人だって海外でやっているし、多少の事はお互い様という意識で寛容になるべきではないだろうか。上から目線で厳しいことばかり言って気分を概して国に帰り、結果日本の悪評が広まったら、そのツケは別の日本人の同胞に返ってきかねない。
日本は今後本当の意味で観光立国になる為に必要な事は過剰な法規制ではなく、許容と寛容の心だと思う。 おもてなしの心とは法で強制するものではなく、相手に寄り添う心ではないだろうか。 同志である民泊ホスト達も日々周囲の偏見に耐えながら、どうやって続けていけるのか必死に模索している。
既得権益者の利益を守るばかりではなく、挑戦者を理解し応援する社会であって欲しい。 既得権益者には政治的影響力が有るが、我々新参者の民泊ホストはそんな影響力は無く弱い存在なのだ。 世論も政府も自治体も、そこにいくらか考えてやって欲しいと思う。
斎藤 総太郎(さいとうそうたろう)
Airbnbスーパーホスト。民泊リサーチャー。Facebookグループ「民泊Watch airbnb/インバウンド/シェアエコ関連ビジネス」を主宰。全国民泊同業組合連合会参事。