【解説】民泊新法ガイドライン、必ず知っておきたい35の重要ポイント 管理業務再委託はOK? 受入拒否はNG? 非常用照明は必要? 対面確認は必須?

観光庁が26日に公表した住宅宿泊事業法施行要領(民泊新法ガイドライン)。実際に民泊事業や管理業、仲介業を行う上での民泊新法の解釈や留意事項をまとめている。そのほか、自治体の民泊条例による「0日規制」などの過度な規制について、規制方法によっては「本法(※民泊新法)の目的を逸脱するものであり、適切ではない」と釘を刺すなど、注目の内容となっている。

この記事では、実際に観光庁が発表した民泊ガイドラインを読み解き、計35の重要ポイントを解説する。民泊大学が公開している【民泊新法ガイドライン全文】ではガイドラインの全文テキストを掲載しているので、各ポイントの詳細やその他の内容についても確認できるようにした。今後の民泊事業を検討する上で合わせて参考にしてほしい。

(※注意:各自治体の独自条例により、民泊新法ガイドラインとは別の上乗せ規制が行われるケースもあるので、実際に民泊事業に携わる方は各自治体の民泊条例も合わせて参照ください)

 

Contents

①「台所・浴室・便所・洗面所」は母屋にあればOK

民泊ガイドラインでは最初に、住宅の定義について記載している。その中で、「台所」「浴室」「便所」「洗面設備」は同一の建物内に設けなくてもよく、例えば浴室のない「離れ」であっても同じ敷地内の「母屋」に浴室があれば、問題がないとしている。一方で、近くに銭湯などの公衆浴場があっても、「浴室」「便所」「洗面設備」の代替とすることはできないとした。

②「浴室」には浴槽がなくてもシャワーがあればOK

浴室については、浴室内に浴槽がない場合でも、シャワー設備があれば問題ないと記載しており。トイレについては、和式・洋式などの種類は民泊新法では問われない旨も説明されている。

③届出できる住宅の種類を定義

届出ができる住宅については、民泊新法で規定されている「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」「入居者の募集が行われている家屋」「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋」などとなる。「現に人の生活の本拠として使用されている家屋」について、ガイドラインでは「短期的に当該家屋を使用する場合は該当しない」としている。

④証拠作りの「みせかけの入居者募集」はNG

「入居者の募集が行われている家屋」は、民泊事業を行っている間、分譲・売却・賃貸向けに募集を行っている住居のことを指す。一方で、入居者からの応募がないように、故意に不利な取引条件を募集内容に記載している場合は、この「入居者の募集が行われている家屋」には該当させない旨が示されている。書類上の証拠作りのための「見せかけの募集」を防ぐためだ。

⑤居住履歴のない「民泊専用の新築投資用マンション」はNG

「随時その所有者、賃借人又は転借人の居住の用に供されている家屋」では、居住履歴が一切ない民泊専用の新築投資用マンションは該当しない旨を記載している。実際に該当する家屋の例として、ガイドラインでは「休日のみ生活しているセカンドハウス」「転勤により一時的に生活の本拠を移しているものの、将来的に再度居住の用に供するために所有している空き家」「相続により所有しているが、現在は常時居住しておらず、将来的に居住の用に供することを予定している空き家」「生活の本拠ではないが、別宅として使用している古民家」などを例に挙げている。

⑥短時間でも日付を越えていないくても「1日」

民泊新法ガイドラインでは、「宿泊料を受けて届出住宅に人を宿泊させた実績があるのであれば、短期間であるかどうか、日付を超えているかどうかは問わず、1日と算定される」としている。また日数の数え方についてはあくまで「人を宿泊させた日数」であり、「募集した日数」は含まない。

⑦宿泊拒否の制限は課されないが、差別や偏見に基づくものはNG

旅館業法では宿泊希望者を拒否することに対して制限を課しているが、住宅宿泊(民泊)事業では課していない。つまり、「合理的な範囲」で宿泊者に要件を課しても民泊新法には反していないと、民泊新法ガイドラインは記載している。一方で、「宿泊拒否の理由が差別的なものである場合や偏見に基づくものである場合は社会通念上、不適切となることもあるため留意することが必要である」としている。

⑧「住宅」とは1棟の建物である必要はない

民泊新法ガイドラインでは、建物の一部分のみを「住宅」として届け出ることが可能。届出の際に添付する図面の場合も、国が規定する事項が明示されていれば、該当の部分のみを対象とする。

⑨1つの「住宅」を重複して届け出ることはできない

住宅は複数の事業者が重複して届け出ることはできない、としている。一方で、住宅を複数の人が共同所有している場合は、連名で届出をすることも可能としている。

⑩周辺住民への説明は「望ましい」

民泊新法ガイドラインでは、届出を行う際の周辺住民への事前説明については「望ましい」という表現に留めている。また宿泊者が近隣住民が特定の物件の届出の有無を確認するために、都道府県知事などが届出番号や住所を公表することも「望ましい」としている。

⑪火災保険や賠償責任保険の加入「望ましい」

民泊事業の届出を行う際には、事業者が火災保険や第三者に対する賠償責任保険などに加入することが「望ましい」としており、民泊事業者の義務としては課していない。

⑫届出で添付する官公署発行の書類は3カ月以内に発行されたもの

ガイドラインでは民泊事業者側が届出書に添付する書類のうち、官公署が証明する書類は発行から3カ月に発行されたものとしなければいけないとしている。またそれらの書類はコピー(写し)等は認められないとしている。

⑬住宅の図面は「手書き」でもOK

民泊新法ガイドラインでは、届出する際に提出が必要な「住宅の図面」については、法律に規定されている必要事項が記載されていることを条件に、「手書きの図面であっても差し支えない」としている。

⑭マンションの場合、事前に管理組合に実施の旨を報告

マンション等の集合住宅で民泊事業を行いたい場合、「管理組合に届出住宅において住宅宿泊事業を営むことを禁止する意思がないことを確認したことを証する書類」が必要になる。その場合、「届出者が管理組合に事前に住宅宿泊事業の実施を報告」した上で、「届出時点で住宅宿泊事業を禁止する方針が総会や理事会で決議されていない旨を確認した誓約書」または「本法成立以降の総会及び理事会の議事録その他の管理組合に届出住宅において住宅宿泊事業を営むことを禁止する意思がないことを確認したことを証明する書類」が必要。

⑮消防法適合通知書の提出も必要

民泊新法ガイドラインでは、届出の際に「消防法令適合通知書を届出時にあわせて提出することを求めるものとする」としている。その理由については、「届出住宅が消防法令に適合していることを担保し、住宅宿泊事業の適正な運営を確保する目的」としている。

⑯宿泊者1人あたり3.3㎡以上の確保が必須

民泊事業を行う居室の宿泊者1人あたりの床面積は「3.3 ㎡以上」が必要。その理由については「感染症等衛生上のリスクは、不特定多数の宿泊者が一カ所に集中することにより高まる」こととしている。またガイドラインでは床面積について、「宿泊者が占有する部分の面積を指す」としており、「台所、浴室、便所、洗面所、廊下のほか、押入れ、床の間は含まない」としている。

⑰シーツやカバーなどの交換は必須

寝具のシーツとカバーなどについては、宿泊者が入れ替わるごとに洗濯したものと取り替える必要があるとしている。また設備は備品などは常に清潔な状態を保つ必要があるとし、「ダニやカビ等が発生しないよう除湿を心がけ、定期的に清掃、換気等を行うこととする」としている。

⑱家主同居で50㎡以下なら非常用照明設備器具の設置は「×」

ガイドラインでは、届出住宅の建て方や規模に応じた安全措置の適用要否を下記の表の通りに説明している。一戸建ての場合も共同住宅の場合も、家主同居型であり宿泊室の床面積が50㎡以下の場合は、一戸建てや共同住宅のいずれの形態でも、非常用照明器具の設置は「×」としている。

⑲外国人宿泊者に対しては外国語で必要事項の明示を

外国人宿泊者の快適性や利便性の確保に向けて、「必要な事項が記載された書面を居室に備え付けること」や「タブレット端末への表示」などにより、「宿泊者が届出住宅に宿泊している間必要に応じて閲覧できる方法によることが望ましい」としている。その上で「特に、災害時等の通報連絡先においては、緊急時にすみやかに確認することが可能なものを備え付けておくものとする」としている。法律で規定する「移動のための交通手段に関する情報」とは、最寄りの駅等の利便施設への経路と利用可能な交通機関に関する情報を言い、「火災、地震その他の災害が発生した場合における通報連絡先に関する案内」とは、消防署や警察署、医療機関、住宅宿泊管理業者への連絡方法などの情報を提供することをいう。

⑳本人確認は「対面」もしくは「ICT活用の方法」で

チェックイン時の本人確認について、「対面又は対面と同等の手段として以下のいずれも満たす ICT(情報通信技術)を活用した方法等により行われる必要があるとしている。ICTを活用した方法で本人確認をする場合は「宿泊者の顔及び旅券が画像により鮮明に確認できること」と「当該画像が住宅宿泊事業者や住宅宿泊管理業者の営業所等、届出住宅内又は届出住宅の近傍から発信されていることが確認できること」を条件としている。ガイドラインでは例として、「届出住宅等に備え付けたテレビ電話やタブレット端末等による方法」を挙げている。

㉑宿泊者名簿には「宿泊者全員」の記載が必須

民泊新法ガイドラインでは、宿泊者による宿泊者名簿への記載について、「宿泊者全員を記載する必要があり、代表者のみの記載は認められない」とし、その上で「宿泊契約(宿泊グループ)ごとに宿泊者が分かるように記載することとする」としている。

㉒周辺住民からの苦情には「深夜早朝問わず」対応を

周辺地域の住民からの苦情や問い合わせについては、「深夜早朝を問わず、常時、応対又は電話により対応する必要がある」と記載している。また回答を保留する場合は「相手方に回答期日を明示した上で後日回答する等の配慮が必要である」としている。

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