180日制限が採算に影響
新法の施行によって不動産業界による民泊参入は増えるのか。これまでは、特区民泊や簡易宿所などこれまでも合法とされてきた部分が中心だった。シノケングループによる国家戦略特区内での民泊対応型の投資用マンション・アパートの分譲などが代表的。簡易宿所では、コンバーションによってオフィスビルなどを活用するタイプを手掛ける事業者は不動産業界を含めて数多い。
新法によって供給可能エリアが広がり、新規参入を検討する企業も複数ある。ただ、これまでも可能だったことから、新法による影響は限られる。
これに対して、新法民泊は、(ホスト不在型の場合)外部の民泊仲介業者に管理を依頼しなくてはならず、営業日数にも上限がある。一部ホスト間では、採算ベースに乗るかなど様子見が広がるとともに、マンスリー賃貸と民法民泊を組み合わせた”二毛作”の検討を本格化する。
すでに民泊を運営しているホストは、新法をどう捉えているのか。
簡易宿所・合法民泊コンサルタントの児山秀幸氏によると「年間180日、自治体による制限によって、使えない制度と捉えているホストと、住居専用地域で合法的な民泊運営が可能になると歓迎するホストもいるなど賛否両論がある。リタイア世代によるホームステイ型が増える一方で、賃貸物件を活用してきたホストの一部が撤退するのではないかなど、さまざまな声がある」と話す。
「民泊ホストは、様子見、合法化、撤退に分かれ、今年前半は稼働物件数の伸びが止まった。ホスト居住型、住居専用地域で開設可能になるほか、新法民泊は市街化調整区域、再建築不可物件、リゾート地の別荘、取り壊し予定のアパートの空室部分などの有効活用に利用価値が限定される」とする。
続けて「むしろ今後予定される旅館業法改正のほうが、ホスト不在型民泊への実質的な影響は大きい。1部屋からホテル・旅館の登録が可能になり、1部屋をシェアする簡易宿所ではなく部屋単位、あるいは建物一棟を丸貸しでき合法民泊の主流となるだろう」と見る。
パソナ地方創生特命特別顧問の勝瀬博則氏は「当初は家主同居型、不在型とも参入は活発に行われると思われる。ただ、ゲストのケアは心身ともに負担が大きい。苦労してもプロとして稼ぐ事業をすると決意した”事業者型”と、アマチュアとして利益はそこそこに出会いを楽しむという”お楽しみ型”への二極化が進む可能性がある」と指摘する。
ネットメディア「民泊大学」を運営する高野勇斗・チャプターエイト社長は「今まで法律がないために、民泊に乗り出せなかった地方のオーナーや、不動産会社が民泊を始めることが可能になり、市場が広がる可能性がある」と見る。一方で新法施行後に一時民泊ホストが激減し、都心部を中心にしたいわゆる代行会社は売上高が減少する可能性があると指摘。「代行会社のなかには180日の制限内でも高収益を見込める大型物件、簡易宿所や特区民泊など新法によらない合法民泊に注力するといった動きがある」と現状を説明する。
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