大阪市の民泊事業に対する推進姿勢に注目が集まっている。多くの自治体が民泊制限条例の制定によって営業禁止期間と禁止区域を定める流れの中、大阪市は条例案の意見公募(パブリックコメント)開始に伴い、全国で初めて「実施区域と実施期間の制限はやらない」(吉村洋文市長)と宣言しているからだ。
大阪を訪れた外国人旅行者数は2016年に940万人に達し、2012年の203万人から4年間で4.6倍に増加。市によると、2017年は1100万人に達するとみられている。大阪市は宿泊ニーズの多様化に伴い、2016年10月からは国家戦略特区の枠組みにおける特区民泊の認定業務を開始し、昨年11月末時点で366件1043室を認定。簡易宿所の認定件数も11月末時点までで412件まで増加している。
吉村市長は12月28日に開いた記者会見で「仲介サイトなどの情報によると、市内には民泊施設が1万室以上あるが、8000〜9000室は違法民泊とみられる。一方で観光客の約2割が民泊を利用しているとみられ、多くの民泊需要があることも事実」と言及。その上で「大阪市ではできる限り合法民泊を増やしていく。がちがちに規制を強くして違法民泊を増やせば意味はない」と語った。
具体的には、合法民泊に移行するに当たって必要な安全面での設備設置などについて、補助制度などを整備することも検討する。吉村市長は「民泊事業者に届け出をしてもらって市も把握することで、適正な監視をできる環境を整えたい」としている。大阪市は、日本国内外から大阪市を訪れる観光客の受け入れ体制を強化することによる、市のブランド力のさらなる強化と観光産業のさらなる振興を目指す方針だ。
民泊制限条例をめぐっては、東京都中央区が区内全域で平日の民泊営業を一律禁止する案を公表したり、ほかの自治体も住居専用地域や学校周辺で民泊営業を禁止する方向性を明らかにするなど、民泊に対する風当たりが強いのが現状だ。東京都中央区の一律規制については、一律規制を「不適切」とする民泊新法ガイドライン(→全文|→解説)に反しているとの声もある。そんな中、大阪市の条例案はこれらの自治体とは一線を画すものと言える。
東京都中央区の「全域で土日限定」条例素案に波紋 民泊ガイドラインの「不適切規制」に該当か|民泊大学
大阪市が公表した文書によると、制定予定の主なルールとしては①近隣住民等への事前説明②特区民泊との重複不可—の2点を柱にする予定。パブリックコメントは12月20日から既に開始しており、受付期間は1月10日までとなっている。