【全文&解説】民泊管理業務受託の「標準契約書(案)」が判明 業務を3分類16項目に細分化 過失責任や賠償責任も明記

民泊事業者と管理業者の間で結ぶ契約書について、国土交通省が定める「住宅宿泊管理受託標準契約書(案)」が判明した。委託業務の内容を①宿泊者などへの対応②清掃・衛生③住宅・設備管理及び安全確保—の3分類16項目に細分化した上で、管理業務上の過失で生じた損害は管理業者が責任を負う内容などが盛り込まれている。

「①宿泊者などへの対応業務」では、鍵の受渡しや本人確認、宿泊者名簿の作成・管理・備付け、未チェックイン時の報告、宿泊者に対する騒音防止などの説明、長期滞在者への対応など8項目を明記。「②清掃・衛生業務」では宿泊者の感染症罹患時における保健所への通報も含む3項目を盛り込んである。

「③住宅・設備管理及び安全確保業務」では5項目を羅列。非常用照明器具の設置・点検や避難経路の表示、災害発生時の避難体制の確立と宿泊者に対する避難支援のほか、電力やガス会社などへの諸届けの代行業務なども挙げた。

標準契約書では第5条で、管理業者が受託業務の全部(①②③)を第三者に再委託してはいけないことを明記。その上で民泊事業者からの承諾を得た場合、①〜③の一部を第三者に再委託することができるとしている。

また委託業務に要する費用などについては、第7条で説明。管理業務の際に発生する水道光熱費や備品購入費などは、民泊事業者側が負担するものとしている。

第9条では、管理業者から民泊事業者への報告について記載している。過去2カ月分の①宿泊させた日数②宿泊者数③延べ宿泊者数④宿泊者の国籍別内訳—の4点について、届出住宅ごとに偶数月(2月、4月、6月、8月、10月、12月)の7日までに報告するものとしている。


Contents

住宅宿泊管理受託標準契約書(案)

(目的)
第1条 この住宅宿泊管理受託契約(以下「本契約」という。)は、住宅宿泊事業者が住宅宿泊管理業者に対して住宅宿泊管理業務を委託するに際して、住宅宿泊事業法(以下「法」という。)及び関連法令に基づき住宅宿泊管理受託契約を締結するに当たり、当事者が契約の締結に際して定めるべき事項及び当事者が契約の履行に関して互いに遵守すべき事項を明らかにすることを目的とする。

(定義)
第2条 本契約における用語の定義は,次の各号に定めるところによる。
(1)住宅 法第2条第1項に定める家屋
(2)宿泊 寝具を使用して施設を利用すること
(3)住宅宿泊事業 法第2条第3項に定める事業
(4)住宅宿泊事業者 法第2条第4項に定める事業者
(5)住宅宿泊管理業務 法第2条第5項及び法第36条に定める業務
(6)住宅宿泊管理業者 法第2条第7項に定める事業者
(7)宿泊サービス提供契約 宿泊者に対する住宅における宿泊のサービスの提供に係る契約
(8)住宅宿泊仲介業者 法第2条第10項に定める事業者
(9)宿泊者 宿泊サービス提供契約に基づき住宅に宿泊する者
(10)宿泊者名簿 法第8条に定める宿泊者に関する名簿

(契約の当事者)
第3条 本契約において、住宅宿泊管理業務を委託する者を甲とする。甲の氏名等は、頭書(1)記載のとおりである。
2 本契約において、住宅宿泊管理業務を受託する者を乙とする。乙の商号(名称)、代表者、事務所所在地、連絡先、住宅宿泊管理業の登録番号及び登録年月日は、頭書(1)記載のとおりである。
3 甲は、乙に対し、住宅宿泊事業を営むために必要な書類(法第3条第2項の届出書及び同条第3項の書類)、その他甲乙双方が必要と認める書類の内容を通知するものとする。
4 甲又は乙は、頭書(1)に記載する内容及び前項の内容に変更が生じたときは、相手方に対し速やかに通知するものとする。

(契約期間)
第4条 本契約の契約期間は、頭書(2)に定めるとおりとする。
2 本契約は、甲乙間の協議により更新することができる。

(目的物件及び住宅宿泊管理業務)
第5条 甲は、その所有又は賃借する頭書(3)記載の住宅(以下「届出住宅」という。)につき、次の業務(以下「委託業務」という。)を乙に委託する。
(1)宿泊者等への対応に関する業務(別表第1に掲げる業務)
(2)清掃・衛生業務(別表第2に掲げる業務)
(3)住宅・設備管理及び安全確保業務(別表第3に掲げる業務)
2 乙は、前項の規定により受託した住宅宿泊管理業務の全部を第三者に再委託してはならない。
3 乙は、甲の承諾を得た上で、別表第4に定めるところにより、第1項に定める委託業務の一部を第三者に再委託することができる。この場合においても、乙は当該第三者に対し本契約の義務を遵守させるものとし、当該第三者が委託業務を行う上での過失等によって生じた甲又は届出住宅の宿泊者の損害は、乙がその責任を負うものとする。
4 乙は、別表第4に定める事項を変更しようとするときは、甲の承諾を得るものとする。

(委託業務に対する報酬)
第6条 委託業務の報酬は月額____円(1か月未満の期間にかかる報酬については、その月の日数による日割計算)とし、甲は、乙に対して、毎月末日限り翌月分の報酬を乙の指定する銀行口座に振り込む方法により支払う。但し、振込手数料は甲の負担とする。

(委託業務に要する費用等)
第7条 甲は、前条の報酬のほか、乙が委託業務を実施するのに伴い必要となる水道光熱費を負担するものとする。
2 甲は、乙に対し、前条の報酬及び前項の水道光熱費とは別に、委託業務の実施のために要した届出住宅に設置・配置する備品その他届出住宅を住宅宿泊事業に供するために必要な物品等の購入に要した費用を支払う。
3 前項の費用は、乙からその明細を示した請求書を甲に提示し、その請求書を受領した日の翌月末日限り乙の指定する銀行口座に振り込む方法により支払う。但し、振込手数料は甲の負担とする。

(緊急時の業務)
第8条 乙は、第5条のほか、災害又は事故等の事由により、緊急に行う必要がある業務で、甲の承認を受ける時間的な余裕がないものについては、甲の承認を受けないで実施することができる。この場合において、乙は、速やかに書面をもって、その業務の内容及びその実施に要した費用の額を甲に通知しなければならない。
2 前項により通知を受けた費用については、甲は、前条第3項に準じて支払うものとする。

(報告)
第9条 乙は、甲に対し、届出住宅ごとに、毎年2月、4月、6月、8月、10月及び12月の7日までに、それぞれの月の前二月における人を宿泊させた日数(正午から翌日の正午までの期間を1日として計算した日数)、宿泊者数、延べ宿泊者数、宿泊者の国籍別内訳を報告するものとする。
2 乙は、甲に対し、甲の事業年度終了後及び本契約の期間満了後速やかに、報告の対象となる期間、委託業務の実施状況、届出住宅の維持保全状況及び届出住宅の周辺地域の住民からの苦情の発生状況について書面又は国土交通省関係住宅宿泊事業法施行規則第21条第2項に定める電磁的方法(以下「電磁的方法」という。)により報告するものとする。
3 届出住宅又は住宅宿泊事業の実施に関して重大な事項が生じた場合、あるいは、甲から求めがあった場合、乙は前項の報告とは別に書面又は電磁的方法により報告するものとする。

(業務処理の原則)
第10条 乙は、信義を旨とし、誠実に委託業務を行うものとする。
2 乙は、届出住宅を善良な管理者の注意をもって管理するものとする。

(宿泊サービス提供契約、宿泊料及び宿泊者情報提供)
第11条 甲は、宿泊サービス提供契約の締結の代理又は媒介を他人に委託するときは、住宅宿泊仲介業者又は旅行業者に委託するものとする。
2 甲は、自己の責任と負担において、宿泊者より宿泊料その他料金を収受し、納税等宿泊サービス提供契約及び宿泊料の収受等に伴う処理を行うものとする。
3 甲は、宿泊者との間で宿泊サービス提供契約を締結した場合、乙に対して、速やかにその旨及び宿泊サービス提供契約の概要、並びに、宿泊者の氏名、住所、職業及び宿泊日、また、宿泊者が日本国内に住所を有しない外国人であるときは国籍及び旅券番号を通知するものとする。

(守秘義務)
第12条 乙及び乙の従業員は、正当な理由がなく、委託業務に関して知り得た甲及び宿泊者の秘密を漏らしてはならない。本契約が終了した後においても、同様とする。
2 乙は、甲及び宿泊者に関する個人情報について、個人情報保護法その他関連法令に従って適正な取り扱いを行うものとする。

(反社会的勢力の排除)
第13条 甲及び乙は、それぞれ相手方に対し、次の各号の事項を確約する。
一 自らが、暴力団、暴力団関係企業、総会屋若しくはこれらに準ずる者又はその構成員(以下総称して「反社会的勢力」という。)ではないこと。
二 自らの役員(業務を執行する役員、取締役、執行役又はこれらに準ずる者をいう。)が反社会的勢力ではないこと。
三 反社会的勢力に自己の名義を利用させ、この契約を締結するものでないこと。
四 自ら又は第三者を利用して、次の行為をしないこと。
ア 相手方に対する脅迫的な言動又は暴力を用いる行為
イ 偽計又は威力を用いて相手方の業務を妨害し、又は信用を毀損する行為
2 甲又は乙の一方について、次のいずれかに該当した場合には、その相手方は、何らの催告を要せずして、本契約を解除することができる。
一 前項第一号又は第二号の確約に反する申告をしたことが判明した場合
二 前項第三号の確約に反し契約をしたことが判明した場合
三 前項第四号の確約に反した行為をした場合

(賠償責任及び免責事項)
第14条 乙は、乙又はその従業員が、委託業務の遂行に関し、甲又は宿泊者に損害を及ぼしたときは、甲又は宿泊者に対し、賠償の責任を負う。
2 前項にかかわらず、乙は、甲、宿泊者及び第三者の故意若しくは過失によって生じた損害、届出住宅の瑕疵によって生じた損害又は乙において予見できなかった事由によって生じた損害については、その責を負わないものとする。

(契約の解約)
第15条 甲又は乙は、本契約の契約期間中であっても、相手方に対する書面による通知でもって、本契約を解約することができる。この場合において、本契約は、当該通知が相手方に到達してから3か月の経過をもって終了するものとする。

(契約の解除)
第16条 甲又は乙が、本契約に定める義務に関してその本旨に従った履行をしない場合には、その相手方は、相当の期間を定めて履行を催告し、その期間内に履行がないときは、本契約を解除することができる。

(契約終了時の取扱い)
第17条 本契約が期間満了、解約又は解除その他の事由により終了したときは、乙は、甲に対し、管理物件に関し保管していた書類及び鍵等を引渡すとともに、その他甲乙間において必要な精算を行うものとする。

(合意管轄裁判所)
第18条 この契約に起因する紛争に関し、訴訟の提起等裁判上の手続きをしようとするときは、 地方(簡易)裁判所をもって管轄裁判所とするものとする。
 甲及び乙は、法第34条の規定に基づき甲乙間で本契約が成立したことを証するため、本書面2通を作成し、甲・乙記名押印の上、各1通を保有する。

 


【別表第1宿泊者等への対応に関する業務

(1)宿泊者への届出住宅の鍵の受け渡し

①_____において、宿泊予約者であることを確認した上で鍵の受け渡しを行う。

(2)本人確認、宿泊者名簿の作成、管理及び備付け

①_____により本人確認を行い、日本国内に住所を有しない宿泊者の場合には、宿泊者が施設を利用する前に、旅券の提示を求めるとともに、旅券の写しを宿泊者名簿とともに保存する。

②宿泊者名簿を備え付け、宿泊者の氏名、住所、職業及び宿泊日のほか、宿泊者が日本国内に住所を有しない外国人であるときは、その国籍及び旅券番号を記載して3年間保存する。

(3)未チェックイン時の報告

①宿泊予約者がチェックインされていない場合には、甲にその旨の報告を行う。

(4)騒音の防止のために配慮すべき事項その他届出住宅の周辺地域(同一建物内を含む。以下同じ。)の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項について宿泊者への説明

①宿泊者に対し、騒音の防止のために配慮すべき事項、ごみの処理に関し配慮すべき事項、火災の防止のために配慮すべき事項、その他届出住宅の周辺地域の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項について説明を______による方法で行う(外国人観光旅客である宿泊者に対しては外国語を用いて行う)。

(5)届出住宅の周辺地域の住民からの苦情及び問い合わせについての対応

①周辺地域の住民から苦情又は問い合わせの申出があった場合には常時応答を行う。具体的な内容を聴取し、必要に応じて速やかに現場に赴き確認を行う。

②宿泊者が、宿泊サービス契約若しくは乙が予め説明した注意事項に反する行為又は周辺地域の生活環境に有害な行為を行っていることが確認された場合には、その行為の中止を求める。

③緊急を要する通報を受けた場合には、必要に応じて警察署、消防署、医療機関等の然るべき機関に連絡したのち、自らも現場に急行して対応を行う。その結果、宿泊拒否等の対応を行う必要がある場合には、甲と処理方針を協議する。ただし、甲との間で調整を行う時間的余裕がない場合には、自ら宿泊拒否等の対応を行うことができる。この場合において、対応の内容及び費用を速やかに甲に通知し、費用負担に関する調整は事後に行うものとする。

④甲及び苦情の申出者に対し必要に応じて処理結果を報告する。

(6)宿泊者による届出住宅への毀損など有害行為に対する措置

①届出住宅への毀損を行うなど宿泊者が法令に違反する行為又は届出住宅の保存に有害な行為を把握した場合には、その行為の中止を求める。

②中止の要求に応じない場合には、甲に法的措置の助言を行う。

(7)長期滞在者への対応

①連泊する長期滞在者には、定期的に面会を行う。特に宿泊契約が7日以上の場合にはチェックイン時に本人確認を行っていない者が届出住宅に宿泊するようなことがないよう、定期的な清掃等の際に、不審な者が滞在していないか、滞在者が所在不明になっていないか等について確認を行う。

(8)チェックアウト後の届出住宅の状況確認(破損、忘れ物等確認を含む)

①チェックアウト後の住宅及び設備の破損の有無や、宿泊者の遺失物の有無等について確認し、宿泊前の状態と大きな乖離がないよう維持する。

②宿泊者の遺失物があった場合には、遺失物法に従って保管、返還、警察への届出等を行う。

 

【別表第2】清掃・衛生業務

(1)届出住宅の日常清掃業務

①届出住宅の設備や備品等については清潔に保ち、ダニやカビ等が発生しないよう除湿を心がけ、定期的に清掃、換気等を行う。

②届出住宅に循環式浴槽(追い炊き機能付き風呂・24 時間風呂など)や加湿器を備え付けている場合は、レジオネラ症を予防するため、宿泊者が入れ替わるごとに浴槽の湯は抜き、加湿器の水は交換し、汚れやぬめりが生じないよう定期的に洗浄等を行うなど、取扱説明書に従って維持管理すること。

③宿泊者が、重篤な症状を引き起こすおそれのある感染症に罹患し又はその疑いがあるときは、保健所に通報するとともに、その指示を受け、その使用した居室、寝具及び器具等を消毒・廃棄する等の必要な措置を講じること。その他公衆衛生上の問題を引き起こす事態が発生し又はそのおそれがあるときは、保健所に通報すること。

④届出住宅で生じたごみその他の廃棄物は、放置しないように適切に搬出し、処理方法に応じて分別集積し、必要に応じて速やかに処理を行う。

(2)寝具・衛生用品の洗濯及び設置

①寝具のシーツ、カバー等直接人に接触するものについては、宿泊者が入れ替わるごとに洗濯したものと取り替える。

(3)備品の管理及び補充

①備品の有無及び残量を確認し、必要に応じて補充する。

 

【別表第3】住宅・設備管理及び安全確保業務

(1)届出住宅及び設備の維持・管理

①台所、浴室、便所、洗面設備、水道や電気などのライフライン、ドアやサッシ等の届出住宅の設備が正常に機能するよう保全する。

②空室時における施錠の確認や届出住宅の鍵の管理を行う。

③外国語を用いて、届出住宅の設備の使用方法に関する案内、届出住宅から最寄り駅までの経路を記載した書面を届出住宅に備え付けることによるほか、タブレット端末への表示等により、宿泊者が届出住宅に宿泊している間必要に応じて閲覧できる方法により案内を設置する。

(2)非常用照明器具の設置、点検、避難経路の表示その他災害発生時の避難体制の確立と宿泊者に対する避難支援

①非常用照明器具を宿泊室及び避難経路に設置し、定期的に点検を行う。届出住宅に同時に複数のグループを宿泊させる場合には、宿泊者使用部分の各居室に、連動型住宅用防災警報器等を設置する。

②避難経路を表示(市町村の火災予防条例の規則内容を確認し、規定された事項を表示に盛り込む)する。

(3)外国語を用いて、火災、地震その他の災害が発生した場合における通報連絡先に関する案内

①外国語を用いて、消防署、警察署、医療機関、住宅宿泊管理業者への連絡方法を必要な時に速やかに確認することが可能な方法により備え付ける。

(4)宿泊者からの建物、設備に対する苦情等への対応

①宿泊者から建物、設備等の不具合について苦情等があった場合には、状況を確認し、必要な対応を行う。

② 建物、設備等に関して修繕等の必要があると認められる場合には、修繕業者に連絡し、見積書を作成させる。工事内容、費用について甲と協議し、甲の合意を得る。修繕業者に対して、工事を発注する。工事終了後、点検を行った上、甲に対し、工事費用の請求を行う。

③ 事故等により、緊急に修繕の必要があり、甲と乙との間で事前に調整を行う時間的余裕がない場合は、乙は②の手続きによらず、修繕を実施することができる。この場合においては、修繕の内容及び費用を速やかに甲に通知する。

(5)諸官公庁等への届出事務の代行

①必要に応じ、官公署、電力、ガス会社等への諸届けを代行する。


住宅宿泊管理受託標準契約書コメント

住宅宿泊管理受託標準契約書(以下「本契約書」という。)コメントは、本契約書の性格、内容を明らかにする等により、本契約書が実際に利用される場合の指針として作成したものである。

全般関係

①本契約書は住宅宿泊事業を目的とした住宅について、住宅宿泊管理業者(以下「管理業者」という。)が住宅宿泊事業者(以下「宿泊事業者」という。)から住宅宿泊管理業務(以下「管理業務」という。)を受託する場合の管理受託契約書である。

②住宅宿泊事業法(以下「法」という。)第 11 条において、宿泊事業者が管理業務を管理業者に委託しなければならない場合が定められている。

③法第 34 条の規定により、管理業者は、管理業務の受託契約を締結したときは、委託者に対し、遅滞なく、同条第 1 項所定の事項を記載した書面を交付しなければならない。本契約書は、同項所定の事項が記載されており、本契約書を委託者に対して交付することにより、法第 34 条の書面を交付したものとすることができる。
また、同条第2項の規定により、本契約書の交付について委託者の承諾を得た場合は、電磁的方法により提供をすることにより、本契約書を交付したものとみなされる。

④実際に本契約書を使用する場合においては、地域慣行、物件の構造や管理の態様等により、契約内容が異なり得る。本契約書は全国を適用範囲とする契約書の雛形として作成したものであり、標準的な管理業務において最低限定めなければならないと考えられる事項について、合理的な内容を持たせるべく作成したものである。

⑤なお、本契約書については、住宅宿泊管理受託契約書の普及状況等を踏まえ、今後、必要な見直しを行うものである。

第3条(契約の当事者)関係

①第3項における「その他甲乙双方が必要と認める書類」には、届出住宅の建築及び維持保全の状況に関する内容が考えられる。

第5条(目的物件及び住宅宿泊管理業務)関係

①本条項は、法第 11 条に規定される委託しなければならない管理業務の範囲について規定するものであるが、住宅宿泊事業は、人が居住し日常生活を営む空間に人を宿泊させるものであるため、特に届出住宅の維持保全に係る業務については、対象範囲を明確に定める必要がある。
 具体的には、届出住宅に設ける必要がある台所、浴室、便所、洗面設備が機能することが必要であるとともに、人が日常生活を営む上で最低限必要な水道や電気などのライフライン、ドアやサッシ等の届出住宅の設備が正常に機能するよう保全することが必要である。また、空室時における施錠の確認や、住宅又は居室の鍵の管理も届出住宅の維持保全に含まれる。また、宿泊者の退室後の届出住宅については、住宅及び設備の破損の有無や、宿泊者の遺失物の有無等について確認し、宿泊前の状態と大きな乖離がないよう維持することが必要である。

②別表第1「(1)宿泊者への届出住宅の鍵の受け渡し」において、下線部については、宿泊者との鍵の受け渡し場所を記載すること。具体的には、届出住宅や管理業者の営業所等、チェックイン等を委託するホテル等のフロントなどが考えられるが、宿泊事業者が直接電子キーなどを用いて鍵の受け渡しを行う場合など、管理業者が鍵の受け渡しを行わない場合には、当該業務を行う必要はない。

③別表第1「(2)本人確認、宿泊者名簿の作成、管理及び備付け」において、下線部については、対面によるか非対面によるかの記載をするものであるが、非対面の場合においては具体的な本人確認方法を記載すること。なお、届出住宅や管理業者の営業所等、チェックイン等を委託するホテル等のフロントなどにおいて、鍵の受け渡しとあわせて対面による本人確認を行うことが一般的な方法として想定されるが、非対面による本人確認方法として、テレビ電話やタブレット端末などによるICTを用いた方法も考えられる。映像による場合、届出住宅等のチェックインを行う場所に宿泊者が現に滞在していることが確認できるよう、当該届出住宅等に備え付けた映像機器等を用いることが考えられる。

④別表第1「(4)騒音の防止のために配慮すべき事項その他届出住宅の周辺地域(同一建物内を含む。以下同じ。)の生活環境への悪影響の防止に関し必要な事項について宿泊者への説明」において、下線部については、宿泊者への説明方法について記載すること。具体的には、必要な事項が記載された書面を居室に備え付けることによるほか、タブレット端末での表示等により、宿泊者が届出住宅に宿泊している間に必要に応じて説明事項を確認できるようにするためのものであり、必ずしも対面による説明が求められるものではない。また、書面等の備付けにあたっては、宿泊者の目につきやすい場所に掲示する等により、宿泊者の注意喚起を図る上で効果的な方法で行う必要がある。当該説明が確実になされるよう、居室内に電話を備え付けること等により、事前説明に応じない宿泊者に対し注意喚起できるようにする必要がある。なお、外国人宿泊者が日本語を指定した場合は、外国語で案内等を行う必要はない。

⑤別表第2「(1)届出住宅の日常清掃業務」において、管理業者は、衛生管理のための講習会を受講する等最低限の衛生管理に関する知識の習得に努めることが必要である。また、住宅宿泊事業に起因して発生したごみの取扱いは、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(昭和 45 年法律第 137 号)に従い、当該ごみは事業活動に伴って生じた廃棄物として管理業者が責任をもって処理しなければならない。

⑥別表第3「(2)非常用照明器具の設置、点検、避難経路の表示その他災害発生時の避難体制の確立と宿泊者に対する避難支援」において、避難経路の表示に加えて、住宅周辺の状況に応じ、災害時における宿泊者の円滑かつ迅速な避難を確保するため、避難場所等に関する情報についても備え付けておくことが考えられる。

⑦第3項は、乙は、甲の承諾を得た上で、管理業務の一部を第三者に再委託することができることを明示したものであるが、再委託先が一方的に変更される可能性がある場合には、その旨を契約上、明示する必要がある。また、再委託先は、管理業者の業務実施体制に大きく影響するものであることから、再委託先を事前に別表第4により明らかにする必要があり、再委託先が変更する度ごとに書面又は電磁的方法により委託者に通知する必要がある。なお、別表第4については、再委託先ごとに欄を作成すること。

第9条(報告)関係

①法第 40 条の規定により、管理業務の実施状況の報告は、法第2条第5項に基づく管理業務に限らず、甲と乙が締結する管理受託契約における委託業務の全てについて報告する必要がある。苦情への対応状況は、管理業務の実施状況に含まれる。

②苦情への対応状況については、苦情の発生した日時、苦情を申し出た者の属性、苦情内容等について、把握可能な限り記録し、報告する必要がある。単純な問い合わせについて、記録及び報告の義務はないが、苦情を伴う問い合わせについては、把握可能な限り記録し、報告する必要がある。

第 14 条(賠償責任及び免責事項)関係

①責任及び免責については、責任の所在の明確化を図る観点から、甲と乙の責任の所在について事前に明示しておく必要がある。損害賠償請求に至った場合にはトラブルに発展することが予見されることから、甲と乙が事前に協議を行った上で賠償責任保険に加入する等の措置をとることが望ましい。なお、法において管理業者の責任とされている事項について、これに反する内容を定めた契約上の特約は無効である。

第 18 条(合意管轄裁判所)関係

①下線部については、地方(簡易)裁判所の名称を記載すること。管轄裁判所は甲と乙が協議を行った上で決めることであるが、例えば、届出住宅を管轄する地方裁判所とすることなどが考えられる。