民泊新法に「抜け道」か? 厳しい諸要件の管理業者登録 議論呼ぶ「賃貸住宅管理業者」の優位性 6月30日境に状況激変も

住宅宿泊事業法(民泊新法)において、家主不在型運営のホストに求められる「管理業者」への委託。その管理業者登録を企業が行うときには、2年の実務経験などの「高いハードル」が設けられているとされてきたが、「抜け道」ともなり得る登録方法の存在が明らかになり、議論を呼んでいる。この記事では昨年発表された民泊新法ガイドラインを読み解きながら、その存在に触れる。

昨年末に発表された住宅宿泊事業法施行要領(ガイドライン)により、民泊における細かな点が明らかにされた。今回は、その中でも一般の方にはわかりにくい不動産資格などの要件が含まれる、住宅宿泊管理業を行う場合の条件について解説する。

 

住宅宿泊管理業者とは?

まずはじめに整理したいのが、今回解説するのは住宅のオーナーである「事業者」ではなく、オーナーから管理委託を受ける「管理業者」について。1度だけでもオーナーから委託を受けて管理を行う場合は「住宅宿泊管理業」に該当するため、その場合は今回解説する条件を満たさなければ違反となるため注意が必要である。

 

登録に必要な条件は?

条件と言っても、資格要件の部分以外は厳しいものはない。会計書類をはじめとして書類などを揃え、暴力団員など欠格要件に該当しなければOK。唯一のハードルとなるのが、「住宅宿泊管理業を適格に遂行するための必要な体制」が整っているか、という点である。

これについて、具体的な内容が今回のガイドラインで発表されている。

<個人の場合>

  • 住宅の取引又は管理に関する2年以上の実務経験
  • 宅地建物取引士(いわゆる「宅建」)
  • 管理業務主任者(「マンション管理士」は含まれないので注意)
  • 賃貸不動産経営管理士

のいずれかを満たしていること。

<法人の場合>

  • 上記「個人の場合」の条件を満たす従業員がいる
  • 住宅の取引又は管理に関する2年以上の事業経歴
  • 宅地建物取引業免許
  • マンション管理業者登録
  • 賃貸住宅管理業者登録

のいずれかを満たしていること。

 

どの資格がいいのか?

既に上記条件を満たしている個人法人であれば問題ないが、これから個人で新規事業として行おうとする場合、どの条件を満たすのが最も楽なのか。

まず「2年以上の実務経験」だが、これは単に「不動産会社に勤めていればいい」というようなものではなく、「契約実務を伴う業務」に2年以上従事することが求められている。

正直、そのような業務を行うような会社・部署で勤めれば、続いて説明する宅建士や管理業務主任者の資格を取得するようかなりのプレッシャーがかかりますので、資格の取得とどちらが先になるかという程度の話だ。

「宅地建物取引士」だが、これは年1回開催の試験にさえ受かれば取得可能だ。とはいえ、合格率15%前後と難易度はそこそこ高く、有名大学を卒業するような学力があっても半年程度は勉強しないと合格することは容易ではない。

「管理業務主任者」もマンション管理版宅建のようなもので、同じく年1回の試験にさえ受かればいいものの、やはり近いレベルの難易度となっている。

「賃貸不動産経営管理士」は近年創設された資格で、今のところ、半数以上が合格するという比較的難易度の低い試験となっている。難点は、合格後に資格登録をするために結局は「宅建士の資格をもっていること」か「賃貸不動産関連業務に2年以上の勤務経験」が求められることだ。

元民泊ホストである人や民泊代行会社なども含め、本業が不動産に関係のない方が新規事業として始めるには、宅建士か管理業務主任者の資格を取得するのが最短の道となりだが、試験内容の範囲や暗記量などから若干管理業務主任者のほうが易しめと言える。マンション住まいの方は、管理業務主任者の試験内容は実生活にも役立つのでお勧めである。

>>次ページ 法人の資格要件に「抜け道」がある?