【2018年対談】新法施行で変化する民泊マーケット 民泊専門家が見た昨年の動向と今年の展望

民泊新法(住宅宿泊事業法)の制定や旅館業法の改正など昨年2017年は民泊を取り巻く環境が大きく変わった。新法制定を受けて、関連サービスの充実や大手企業の進出を相次ぐ一方で、民泊稼働数の伸びに前年までの勢いがない。合法・簡易宿所コンサルタント児山秀幸氏と民泊情報メディア「民泊大学」や民泊向け自動チェックインシステム「ABCチェックイン」運営のチャプターエイト社長の高野勇斗氏が、民泊普及を推進する立場からマーケットの現状と展望とテーマに意見を交換した。


拡大する民泊マーケット

児山 秀幸:こんにちは。本日は、2017年の民泊業界まとめと2018年の民泊展望について話したいと思います。

高野 勇斗:よろしくお願いします。

児山:大きくは、3つのテーマで、

1.民泊マーケットはどうなっているか
2.法規制はどう動いているか
3.関連ビジネスはどうなっているか

それぞれで、去年2017年の動きと今年2018年の展望をお話できればと思います。

それでは、最初に民泊のマーケットはどうなっているか。

高野:マーケットは拡大していますね。Airbnbのリスティングが2016年4万超から2016年6万弱ぐらいに増えてますし、大手も続々参入しているので。

児山:この数年日本国内におけるAirbnbでの稼働数を見ていると、

2013年末 日本語版開始
2014年末 約 7000件
2015年末 約25000件
2016年末 約48000件
2017年末 約56000件

こんな伸び方です。去年は伸びが鈍化した年と見ています。

高野:旅館業法の簡易宿所はどうなんでしょうか。僕は簡易宿所もある程度の形態については民泊に含めていますが。簡易宿所を入れないと、伸びは鈍化してるように見えます。民泊と同じプレイヤーがやってるから、拡大しているとも言えます。

児山:簡易宿所でも、カプセルホテルやホステルなど、違う業態もありますが、いわゆるホスト不在型民泊が、大挙して簡易宿所になったのは、確かです。Airbnbに掲載する京都3,000件強のうち、簡易宿所が2,000件弱となったように、簡易宿所を取りながら、Airbnbに掲載している物件も多くなりました。

個人プレーヤーについて言うと、今年の民泊新法施行をにらみ、様子見のホストも多かったと思います。需要がもう一つ伸びず、規制が厳しくなりそうということで、仮想通貨などに主戦場を移したプレイヤーもいました。不動産投資家が簡易宿所事業に参入した例もありますが、自分の知っている方は経営に苦労しています。

高野:キーワードは、大手企業参入と個人の鈍化ですね。個人が撤退する量より大手の参入が多いので、合法化の流れが強くなるでしょう。鈍化した理由は、2つあり、1つが需要供給の問題。もう1つが法律や自治体の取り組みなど取締まりの問題ですね。

児山:民泊ホストと話していると、昨年は、供給の増加ペースが落ちて、売上的には安定している方が多かったです。

ただ、今後マンションの転用(コンバージョン)タイプが続々とマーケットに登場しそうで、これは民泊とマーケットが重なり、個人ホストも厳しくなるかもしれません。福岡や京都では、大手事業者によるマンションの転用タイプも増えています。

高野:マンション1棟を転用するのは、法人または地主ですね。チェックインをICTで自動化する弊社サービス「ABCチェックイン」にも、そういう大手企業からの問い合わせが増えています。

児山:ただ、ゲストがAirbnbなどの仲介サイトを見ると、マンション1棟も、一戸建も同じリスティングに見えますので、個人ホストの顧客を奪う方向に動くことは確実かと思います。

マンション1棟になると、ホテルとして許可を取得するケースも多いので、1室1室は住宅ですが、これを民泊と呼んで良いのかは微妙ですね。ホスト同居型(家主滞在型)に関しては客層が違うので良いのですが、ホスト不在型(家主不在型)民泊への需要を奪う可能性は高いですね。

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