民泊の全域一律規制「課すべきではない」 シェアリングエコノミー協会、民泊条例に意見書 重松代表理事「挑戦の芽、摘まないで」

一般社団法人シェアリングエコノミー協会は29日、住宅宿泊事業法(民泊新法)に関連する各自治体の条例制定の動きを受け、住居専用地域や自治体・特別区の全域を対象とした一律の制限などは課すべきではないとする意見をまとめ、公表した。代表理事の重松大輔氏は民泊大学の取材に対し、「民泊への挑戦の芽を摘まないでほしい」と語った。

意見書は各都道府県知事や保健所設置市市長、特別区区長、各地方自治体住宅宿泊事業所管担当宛て。

民泊新法では、騒音などによる生活環境の悪化を防止する必要がある場合に限り、地方条例による民泊の追加制限を認めている。制限範囲については「合理的に必要と認められる限度において」としており、2017年12月に政府が公表した民泊新法ガイドラインでも、各自治体全域を対象にした一律の規制やゼロ日規制を不適切としている。

シェアリングエコノミー協会は意見書の発表に際し、「(日本における)シェアリングエコノミーの健全な発展のため、柔軟かつ実態に即した法律・条例の整備を望む」と強調。その上で、曜日による制限についても「制限が必要な理由を具体的事実関係に基づいて検討した上で行わない限り、違法・無効な条例となる恐れがある」とした。

また意見書では、「家主同居型(ホームステイ型)」についても、管理業者による管理が義務づけられている「家主不在型」についても、「責任の所在や問題発生時の連絡先なども明確になっていることから、騒音やごみなどの問題について、現在指摘されている問題がそのまま放置されることはない」と指摘している。

そうした理由から、住居専用地域全域を対象とした⼀律の期間制限については、「生活環境の悪化を防止するための特段の必要性は認めらない」と強調し、特に家主同居型については「より慎重な検討が必要になるものと思料する」としている。

民泊条例や条例案においては現在、平日の民泊実施を禁止する内容のものが多い。意見書では曜日を指定した禁止規制について、曜日に関係なく旅行予定を組む外国人観光客や有給休暇などを活用した旅行を計画する日本人旅行者の存在を挙げた上で、「民泊は事実上国内外の観光客の選択肢から外れる」と懸念を表明。その上で、観光客の来訪や滞在を促進するという民泊新法の目的に反する可能性があるとしている。

シェアリングエコノミー協会事務局の石原遥平氏は民泊大学の取材に対し、「既に住居専用地域での営業を全面的に禁止する条例案の制定に向けた動きも出てきている中、個別具体的な地域のルールを作っていくあり方について、当協会の意見を広く参照していてほしい」とした上で、「各自治体関係者におかれては、バランスのよい意見聴取の機会を与えていただくと共に、法曹によるチェックを是非受けていただきたいと切に願う」と語った。

代表理事の重松大輔氏は「過度の安心安全への配慮による上乗せ条例を各自治体がかけることによって、世界的に普及している共有型経済そのものの発展を阻害することになると考えている」と説明。その上で、「各自治体は立法趣旨をきちんと汲み取り、住居専用地域全体への規制、日数制限などを行うことで民泊にチャレンジしようとするコンシューマーの芽を摘まないでほしい」語った。

意見書全文は下記から閲覧できる
http://sharing-economy.jp/ja/wp-content/uploads/sites/2/2018/01/opinion_180129.pdf

「民泊新法」に対する意見書を公開 シェアリングエコノミー協会