弁護士の野村祐美子です。
今回の民泊新法のポイントでは、①住宅宿泊事業の届出、②住宅宿泊事業者の主要な義務、③宿泊拒否の可否についてご説明致します[i]。
①住宅宿泊事業の届出について
住宅宿泊事業を行おうとする者は、都道府県知事等に届出をすることで、住宅宿泊事業を行うことができます[ii]。この届出は、住宅宿泊事業を開始しようとする日の前日までに行う必要があります[iii]。
住宅宿泊事業の届出を行うにあたり、法律上は、周辺住民に対し住宅宿泊事業を営む旨を事前に説明する義務は課されていないのですが、ガイドラインでは、周辺住民に対し住宅宿泊事業を営む旨を事前に説明することが望ましいものとされています[iv]。ただし、条例で周辺住民への説明が義務付けられる場合もありますので、この点は事前に条例(案)をチェックする必要があります。
なお、ガイドラインでは、住宅宿泊事業者は、住宅宿泊事業の届出を行うにあたって、事業を取り巻くリスクを勘案し、火災保険や第三者に対する賠償責任保険等の適切な保険に加入することが望ましいとされている点にも留意が必要です[v]。
②住宅宿泊事業者の主要な義務の概要について
住宅宿泊事業者は、
・宿泊者の衛生確保義務[vi]
・宿泊者の安全確保義務[vii]
・外国人観光客である宿泊者の快適性及び利便性の確保義務[viii]
・宿泊者名簿の設置義務[ix]
・宿泊者に対する騒音や周辺環境への悪影響の防止に関して必要な事項の説明義務[x]
・周辺地域の住民からの苦情等の対応義務[xi]
・届出住宅について公衆の見やすい場所への標識掲示義務[xii]
・都道府県知事への定期報告義務[xiii]
などの義務を負います。
家主不在型の住宅宿泊事業では、住宅宿泊事業者に代わり管理業務の委託を受けた住宅宿泊管理業者が上記の義務を負います(標識の設置義務、都道府県知事への定期報告義務を除きます。)[xiv]。
③宿泊拒否の可否について
旅館業法と異なり、住宅宿泊事業法では、宿泊拒否の制限が課されていないため、住宅宿泊事業者が合理的な範囲で宿泊者に対し、一定の条件を課すことも住宅宿泊事業法に反しません[xvi]。
ただし、ガイドラインでは、宿泊拒否の理由が、差別的なものや偏見に基づくものである場合には、社会通念上不適切となることもあるため留意することが求められています[xvii]。
以上、今回は、①住宅宿泊事業の届出、②住宅宿泊事業者の主要な義務、③宿泊拒否の可否についてご説明致しました。
野村 祐美子(のむら ゆみこ)
森・濱田松本法律事務所 弁護士
訴訟等の紛争解決、企業法務全般を幅広く手掛ける。民泊新法・旅館業法など宿泊関連分野にも注力しており、「住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)のガイドラインについて」(ARES不動産証券化
ジャーナルVol.41)を共同執筆。
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[i] 本連載の中で意見にわたる部分は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する法律事務所の見解ではありません。
[ii] 法3条1項
[iii] 規則4条1項
[iv] ガイドライン2-1.(1)④
[v] ガイドライン2-1.(1)⑤
[vi] 法5条
[vii] 法6条
[viii] 法7条
[ix] 法8条
[x] 法9条
[xi] 法10条
[xii] 法13条
[xiii] 法14条
[xiv] 法11条
[xvi] ガイドライン1-1.(2)②
[xvii] ガイドライン1-1.(2)②