【民泊新法のポイント(第9回)】宿泊者の安全の確保について  民泊弁護士 野村祐美子

今回の民泊新法のポイントでは、住宅宿泊事業者の義務(家主不在型の住宅宿泊事業では、住宅宿泊事業者に代わり管理業務の委託を受けた住宅宿泊管理業者の義務)の一つである、宿泊者の安全の確保のポイントについてご説明致します

住宅宿泊事業者等は、宿泊者の安全の確保のために、届出住宅について

  1. 非常用照明器具の設置
  2. 避難経路の表示
  3. 火災その他の災害が発生した場合における宿泊者の安全の確保を図るために必要な措置

を講じるものとされています


①非常用照明器具の設置と③その他の必要な措置について


①非常用照明器具の設置と③その他必要な措置に関して、届出住宅の建て方と規模等に応じた安全措置の適用の要否については、以下のとおりとされております

安全措置の内容

(告示の条項)

届出住宅の建て方と規模等

一戸建ての住宅、長屋

共同住宅、寄宿舎

家主同居※1で宿泊室の床面積が50m2以下

左記以外

家主同居※1で宿泊室の床面積が50m2以下

左記以外

非常用照明器具

(第一)

×

×

防火の区画等

(第二第一号)

×

※2

×

※2

その他の安全措置

(第二第二号イ~ホ)

※3

×

○:適用あり(原則措置が必要) ×:適用なし(特段の措置不要)

※1 届出住宅に住宅宿泊事業者が居住しており、不在(一時的な不在を除きます。)とならない場合を指します。

※2 複数のグループが複数の宿泊室に宿泊する場合のみ必要となります。

※3 宿泊者の使用に供する部分等の床面積や階数が一定以下である届出住宅の場合は不要となります。

この点については、国土交通省の「民泊の安全措置の手引き」(http://www.mlit.go.jp/common/001216235.pdf)が参考になります(最後のチェックリストも便利です。)。

 

②避難経路の表示について

避難経路の表示のポイントは、

  • 市町村の火災予防条例により規制がされる地域もあるので、条例の規制内容を確認し、規定された事項を表示に盛り込む必要があること
  • 住宅周辺の状況に応じ、災害時における宿泊者の円滑かつ迅速な避難を確保するため、避難場所等に関する情報提供を行うことが望ましいこと

です

なお、上記のほか、消防法令に基づいて、設備や防火管理体制等に関する規制を受ける場合や、市町村の火災予防条例に基づいて、防火対象物使用開始届出書の提出が必要となる場合があるため、規制の適用の有無等について、届出の前に、建物の所在地を管轄する消防署等に確認することが必要です

以上、今回は、宿泊者の安全の確保のポイントについてご説明致しました。

野村 祐美子(のむら ゆみこ)
森・濱田松本法律事務所 弁護士
訴訟等の紛争解決、企業法務全般を幅広く手掛ける。民泊新法・旅館業法など宿泊関連分野にも注力しており、「住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)のガイドラインについて」(ARES不動産証券化
ジャーナルVol.41)を共同執筆。

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