【民泊新法のポイント(第10回)】宿泊者名簿の設置について  民泊弁護士 野村祐美子


今回の民泊新法のポイントでは、住宅宿泊事業者の義務(家主不在型の住宅宿泊事業では、住宅宿泊事業者に代わり管理業務の委託を受けた住宅宿泊管理業者の義務)の一つである、
宿泊者名簿の設置のポイントについてご説明致します

住宅宿泊事業者等は、

  1. 宿泊者の宿泊行為の開始までに、宿泊者それぞれについて、本人確認を行った上で、
  2. 宿泊者名簿を作成し、
  3. 一定の場所に宿泊者名簿を備え付け3年間保存し、
  4. 都道府県知事から要求があったときは提出する

ことなどが必要となります

【①本人確認のポイント】

本人確認は以下のいずれかの方法で行う必要があります。

  • 対面

  • 対面と同等の手段として、以下のA及びBを両方とも満たす、ICT(情報通信技術)を活用した方法等(例えば、届出住宅等に備え付けたテレビ電話やタブレット端末等による方法等)

 A:宿泊者の顔及び旅券が画像により鮮明に確認できること
 B:当該画像が住宅宿泊事業者や住宅宿泊管理業者の営業所等、届出住宅内又は届出住宅の近傍から発信されていることが確認できること

また、住宅宿泊事業者等は、

  • 宿泊者に対し、宿泊者名簿への正確な記載を働きかけること
  • 日本国内に住所を有しない外国人宿泊者に関しては、宿泊者名簿の国籍及び旅券番号欄への記載を徹底し、旅券の呈示を求めるとともに、旅券の写しを宿泊者名簿とともに保存すること
  • 営業者の求めにも関わらず、当該宿泊者が旅券の呈示を拒否する場合は、当該措置が国の指導によるものであることを説明して呈示を求め、さらに拒否する場合には、当該宿泊者は旅券不携帯の可能性があるものとして、最寄りの警察署に連絡する等適切な対応を行うこと
  • 警察官からその職務上宿泊者名簿の閲覧請求があった場合には、捜査関係事項照会書の交付の有無に関わらず、当該職務の目的に必要な範囲で協力することなども必要となります。


【②宿泊者名簿の作成のポイント】

宿泊者名簿には、

  • 宿泊者の氏名、住所、職業及び宿泊日
  • 宿泊者が日本国内に住所を有しない外国人であるときは、その国籍及び旅券番号

を記載する必要があります。

宿泊者名簿の作成にあたっては、

  • 代表者のみではなく、宿泊者全員を記載すること
  • 宿泊グループ(宿泊契約)ごとに宿泊者が分かるように記載すること

などがポイントとなります。

なお、宿泊者名簿の推奨様式については、(http://www.mlit.go.jp/kankocho/minpaku/business/system/regular_report.html)をご参照ください。


【③宿泊者名簿の備付けのポイント】

宿泊者名簿は、以下のいずれかの場所に備え付ける必要があります。

  • 届出住宅
  • 住宅宿泊事業者の営業所又は事務所(住宅宿泊事業者の住宅宿泊管理業務の拠点等)


【その他のポイント】

  • 長期滞在者には、チェックイン時に本人確認を行っていない者が届出住宅に宿泊するようなことがないように、定期的な清掃等の際に、不審な者が滞在していないかや、滞在者が所在不明になっていないか等について確認することが望ましく、特に宿泊契約が7日以上の場合には、定期的な面会等により確認を行う必要があります。

以上、今回は、宿泊者名簿の設置のポイントについてご説明致しました。

野村 祐美子(のむら ゆみこ)
森・濱田松本法律事務所 弁護士
訴訟等の紛争解決、企業法務全般を幅広く手掛ける。民泊新法・旅館業法など宿泊関連分野にも注力しており、「住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)のガイドラインについて」(ARES不動産証券化
ジャーナルVol.41)を共同執筆。

【3月26日(月)開催】”民泊新法直前!民泊管理業者対策セミナー”