【民泊新法のポイント(第19回)】住宅宿泊管理業を的確に遂行するための必要な体制について 民泊弁護士 野村祐美子

今回の民泊新法のポイントでは、住宅宿泊管理業を営むためには、登録を受ける必要がありますが、法の定める一定の登録拒否事由に該当する場合には、住宅宿泊管理業者の登録を受けることができません。

登録拒否事由の1つに、「住宅宿泊管理業を的確に遂行するための必要な体制が整備されていない者」が規定されておりますので、住宅宿泊管理業者の登録のためには、かかる体制の整備が必要となります。今回は、この住宅宿泊管理業を的確に遂行するための必要な体制のポイントについてご説明致します。なお、本連載の中で意見にわたる部分は筆者の個人的見解であり、筆者の所属する法律事務所の見解ではありません。(関連条文等:法25条1項11号、国交省規則9条、ガイドライン3-1.(7)①及び②)

「住宅宿泊管理業を的確に遂行するための必要な体制」として、以下の2つの体制を備える必要があります。

  • 管理受託契約の締結に係る業務の執行が法令に適合することを確保するための必要な体制
  • 住宅宿泊管理業務を適切に実施するための必要な体制

【①管理受託契約の締結に係る業務の執行が法令に適合することを確保するための必要な体制のポイント】

①管理受託契約の締結に係る業務の執行が法令に適合することを確保するための必要な体制とは、住宅の管理に関する責任の所在及び費用の負担等について契約上明らかにし、適切に契約を締結できる人的構成が確保されていることをいい、以下のA又はBのいずれかに該当することが必要となります。

A:住宅の取引又は管理に関する契約に係る依頼者との調整、契約に関する事項の説明、当該事項を記載した書面の作成及び交付といった、契約実務を伴う業務に2年以上従事した者であること

B:Aと同等の能力を有すると認められること

<Bの要件について>

住宅宿泊管理業の登録の申請者が個人である場合には、以下のいずれかの要件に該当する場合にも、Bの要件を満たすものとみなされます。

(a) 宅地建物取引業法に規定する宅地建物取引士の登録を受けていること
(b) マンションの管理の適正化の推進に関する法律に規定する管理業務主任者の登録を受けていること
(c) 一般社団法人賃貸不動産経営管理士協議会の賃貸不動産経営管理士資格制度運営規程31条に基づく登録を受けていること

住宅宿泊管理業の登録の申請者が法人である場合には、以下のいずれかの要件に該当する場合にも、Bの要件を満たすものとみなされます。

(a’) 個人の場合の要件を満たす者を従業者として有すること
(b’) 当該法人が宅地建物取引業法に規定する宅地建物取引業者の免許を受けていること
(c’) 当該法人がマンションの管理の適正化の推進に関する法律に規定するマンション管理業者の登録を受けていること
(d’) 当該法人が賃貸住宅管理業者登録規程に規定する賃貸住宅管理業者の登録を受けていること

【②住宅宿泊管理業務を適切に実施するための必要な体制のポイント】

②住宅宿泊管理業務を適切に実施するための必要な体制のポイントとしては、外国人観光客への情報提供等(法7条)、本人確認措置(法8条)、宿泊者への説明(法9条)、苦情及び問い合わせへの応答(法10条)について、ICT等を用いて遠隔で業務を行うことを予定している場合には、宿泊者との連絡の必要が生じた場合にすみやかに、かつ、確実に連絡がとれる機能を備えた機器の設置等を行う必要があるものとされている点です。また、これらの場合において、住宅宿泊事業者との間で住宅宿泊管理業務の委託を受けている間、常時、宿泊者と連絡を取ることが可能な人員体制を備える必要があり、住宅宿泊管理業者又は再委託先の従業者の交代制によって、従業者が苦情対応で現地に赴いている間も、別の苦情に応答可能であるような体制を常時確保する必要があるものとされています。

以上、今回は、住宅宿泊管理業を的確に遂行するための必要な体制のポイントについてご説明致しました。

野村 祐美子(のむら ゆみこ)
森・濱田松本法律事務所 弁護士
訴訟等の紛争解決、企業法務全般を幅広く手掛ける。民泊新法・旅館業法など宿泊関連分野にも注力しており、「住宅宿泊事業法(いわゆる民泊新法)のガイドラインについて」(ARES不動産証券化
ジャーナルVol.41)を共同執筆。

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