【復刻・民泊革命(第4回)】旅館業法、簡易宿所の要件緩和と戦略特区の関係は?

 1年4ヶ月間、2016年1月11日号から2017年4月24日・5月1日号まで計64回にわたって不動産業界紙「週刊住宅」に連載された「民泊革命」。掲載用に編集前の元原稿を民泊大学ウェブサイトで復刻し、過去に取り上げた事実が現在どうなっているか、著者のコメントを合わせて掲載します。


旅館業法緩和に2つのアプローチ

連日報道をにぎわせる民泊、Airbnb。1月29日より東京都大田区が「特区民泊」(正式名称・大田区国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業)による旅館業法適用除外の特定認定の受付を開始し、合法的な民泊のみを紹介する「STAY JAPAN」を運営するとまれる株式会社が申請第1号となった。これにより、条件をクリアした民泊施設が2月中旬にも合法的な事業として、認定される見込みだ。

一方民泊については、戦略特区での取り組み以外に、「民泊サービス」のあり方に関する検討会においても、4月施行を目指して旅館業法の「簡易宿所」の要件緩和等が検討されている。戦略特区という名称が付いているものの、実際は全国レベルの要件緩和の方が特区民泊よりも条件がより緩和される可能性が高い。

 

戦略特区における民泊合法化と4月以降の民泊合法化の違い

例えば、4月以降、現在33㎡以上を要求されている簡易宿所の面積要件が1人あたり何㎡という形に変更される見込みだ。厚労省の担当によれば、現行の33㎡は10人程度の宿泊を想定したので、1人あたり3.3㎡というのが一つの目安になるとのこと。そうなると、居室が5㎡もあれば、1人を収容する民泊が認められる可能性もある。一方、戦略特区では浴室や洗面所などの面積も入れてではあるが、25㎡以上というのが要件になっており、4月以降緩和された要件よりも厳しい。

また、戦略特区の方では、6泊以上の宿泊が必要だが、現行の旅館業法の「簡易宿所」には日数要件がなく、これを緩和する場合は日数の制限をするのが難しい。したがって、日数の点でも4月以降「簡易宿所」の要件の方が戦略特区よりも緩くなる可能性が高い。

要件の違いもあるが、そもそも制度的な違いもある。

戦略特区における「外国人滞在施設」は不動産賃貸業であり、旅館業法の適用除外を受けるという形になり、旅館業法の「簡易宿所」等はあくまで広い意味での旅館業となり、旅館業法の許可を取得する形になる。

いずれにしても、終戦直後の昭和23年に制定され、それから68年経過した旅館業法が、物が溢れ、インターネットやスマホなど、情報の発達した現代にそのままでは通用しなくなってきているという見方が規制改革会議などでは強い。

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