【復刻・民泊革命(第10回)】民泊サービス・検討会 中間整理案出る 上

 1年4ヶ月間、2016年1月11日号から2017年4月24日・5月1日号まで計64回にわたって不動産業界紙「週刊住宅」に連載された「民泊革命」。掲載用に編集前の元原稿を民泊大学ウェブサイトで復刻し、過去に取り上げた事実が現在どうなっているか、著者のコメントを合わせて掲載します。

連日で民泊に関する有識者会議

 先週3月14日は規制改革会議の公開ディスカッション「民泊サービスにおける規制改革」、15日は第7回の「民泊サービスのあり方に関する検討会」と、連日で民泊に関する有識者会議があった。14日の「公開ディスカッション」は、ニコニコ動画の同時中継を26251人が視聴するなど、盛り上がりを見せたが、顔ぶれが過去「検討会」に呼ばれたメンバーとほぼ同じで、議論の骨格は過去の議論をなぞったものだった。

 15日の「検討会」では、4月初めからの簡易宿所の要件緩和を直前に控え、中間整理案が出され、早急に取り組むべき課題と対応策につき、旅館業法における「簡易宿所」の枠組みを利用するため、床面積と玄関帳場(フロント)の要件を緩和する一方、旅館業法の許可にあたり賃貸借契約や共同住宅の管理規約の確認をすべき旨、民泊は簡易宿所の許可を取らないと違法であることを国民・仲介事業者に周知することが示された。

本当に民泊は4月1日以降許可を取れるか?

 ただ、4月1日以降、本当に民泊サービスは、簡易宿所の許可を取れるのか、疑問がある。それは、国の旅館業法及びその施行令や施行細則は、旅館業法の骨格を定めるだけで、地方自治体が細かい血肉にあたる部分を決め、実際に許可を出すことになるからだ。

 例えば、簡易宿所の玄関帳場については法令上必要とされず、厚生労働省からの通知で、これまで一律に「玄関帳場の設置を行うことが望ましい」としていたのだが、4月1日以降その運用を見直し、「定員10人未満の簡易宿所については、玄関帳場の設置を要しない」とするという。しかし、現状では、厚生労働省の従来の通知に基づいて、多くの自治体が条例で簡易宿所の「玄関帳場の設置を要する」としている。

 民泊施設がそれぞれ2000件前後ある、新宿区や渋谷区の保健所に電話で確認したところ、厚生労働省から運用変更の通知があり、条例改正するまでは玄関帳場が必要なので、マンションの一室では許可が取れないとのことだった。ある政令指定都市の自治体職員からは、条例の改正には時間がかかり、10月施行が順当と聞いた。

 なお、玄関帳場が必要ということは、受付に人を置いておかないといけないということである。これは通常の民泊では想定していない要求だ。現在行われている無許可の民泊ではインターネットネットカメラやタブレットを使った本人確認も使われ始めたが、こうした手段が許容される旨、自治体に明確に伝わる必要がある。

 国も規制緩和を行うのは良いが、それが実効的なものになるよう、配慮しなければ意味がないのではないだろうか。

<以上「週刊住宅」2016年3月21日号掲載分>

 

<筆者のコメント>
 
この民泊革命第10回が掲載された2016年3月は、15日に「『民泊サービス』のあり方に関する検討会」の中間報告が出され、4月に簡易宿所の床面積要件について政令改正、フロント要件について通知の改正を控え、民泊に対応して初めて法規制が変る直前ということで検討会も熱が入った時期でした。 しかし、冷静に見た時に、フロントに関する通知の改正については、各自治体の対応を必要とすることがわかり「4月から改正」のスケジュール感がにわかに色あせた感じを受けました。簡易宿所のハードルは、依然として民泊ホストたちには高い状態のままでした。

<筆者プロフィール> 児山秀幸(こやま・ひでゆき) 合法民泊やホステル・ゲストハウスなど簡易宿所の立ち上げや運営支援を手掛ける株式会社TAROコーポレーション代表取締役。旅館業法における「簡易宿所」の営業許可を取得した「タローズハウス鎌倉小町」を運営。Facebookグループ「簡易宿所・民泊ビジネス研究会」の管理人。Airbnbや民泊新法、旅館業法、特区民泊、東南アジア民泊、医療インバウンドなどに関するセミナー・コンサルティングも。

<前回号である第9回記事>

【復刻・民泊革命(第9回)】民泊をめぐる様々なビジネス