1年4ヶ月間、2016年1月11日号から2017年4月24日・5月1日号まで計64回にわたって不動産業界紙「週刊住宅」に連載された「民泊革命」。掲載用に編集前の元原稿を民泊大学ウェブサイトで復刻し、過去に取り上げた事実が現在どうなっているか、著者のコメントを合わせて掲載します。
3月29日台東区議会が全会一致で条例を改正し、実質的に区内の民泊を締め出す一方、翌30日官邸は、「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」を開催、民泊サービルのルール整備等の施策により、2020年4000万人の観光客を目指すとする。簡易宿所の許可条件が緩和される4月を迎えたが、相変わらず、混乱気味の印象のままだ。
Airbnb以外にもある仲介サイト
さて、今のところ、外国人観光客による民泊のほとんどは、Airbnbからが多いが、少しずつ他のサイトも増え始めている。
まず、昨年エクスペディアに39億ドルで買収された「HomeAway」。民泊の中でも、大きな部屋中心に、丸ごと貸しに絞り、米国内では、他の人と部屋をシェアする場合のデメリットを強調するCMを作り、シェア型の多いAirbnbを揶揄。話題になっている。民泊を扱うサイトとしては、Airbnbより早く立ち上げられ、先行していたので、依然として有力なサイトである。
日本国内系では、百戦錬磨子会社のとまれるが「とまりーな」で農家民泊、「STAY JAPAN」で特区民泊を扱う。様々なスペースのレンタルを扱っている「スペースマーケット」も今春より参入した。両社は、合法な民泊施設だけを掲載する。
他にも、簡易宿所許可を取得した物件は、通常のホテルが登録する、Booking.comやエクスペディア、場合によっては楽天やじゃらんなどにも登録できる。京都で簡易宿所取得した民泊経営者によれば、Airbnbは価格競争になりやすく、同じ物件でも、正規のホテル向けサイトの方が高い宿泊費で稼働させられると言う。
中国系の有力3サイト
中国のサイトも、メディアで取り上げられ始めた。日本国内で約12000室を登録している「自在客」(ジザイケ)。ホテルや旅館も登録されてしまっていて、民泊だけの実数は不明だが、ホストが2000人ほど登録されていると言う。正確な統計はないが、自在客自身は7割程度がAirbnbと重複しての登録と推測する。
「住百家」(ジュバイジァ)は、東京423室、京都193室、大阪598室で、どちらかと言うと、富裕層に強いと言われている。「途家」(トゥジァ)は、4月1日現在で東京93室、京都140室、大阪41室の登録で、中国国内の民泊に強いそうだ。この中国系の有力3サイトでは、自在客だけが日本に支社を持ち、日本国内での営業に力を入れている。
自在客の日本社長によれば、中国の人々の間では、まだ「民泊」という言葉が使われておらず、「民宿」と呼ばれ、基本的に零細な個人の経営するホテルというイメージらしい。日本で従来使われてきた民宿に近いイメージである。ただ、自在客は、民泊を通して異国の生活や文化を体験することを強調しており、この春節以降「爆買いから体験型へ」という旅行業界の方向転換と相まって急激にイメージ転換する可能性がある。
プラットフォーマ―規制の問題
Airbnb以外は、物件で起きた事故等につき、保険に入っていないので、それはホスト自身で準備することになるが、それ以外にも、苦情窓口の整備、ホストの合法性の確認、旅行業許可要求の可否等、プラットフォーマ―の規制については、海外事業者への規制の可否もあって、難しい問題が山積している。
<以上「週刊住宅」2016年4月4日号掲載分>
<筆者のコメント>
第12回では、仲介サイトの多サイト化と、新法民泊で仲介業者として項目立てされたプラットフォーマ―規制について取り上げました。多サイト化は少しずつ進んでいますが、提携や買収が進んだり、新しい会社が名乗りを上げたりと、目まぐるしく状況が変化しています。また、多サイトでの集客に対応するための管理ソフトであるサイトコントローラ―がAirbnbに対応し始めたので、どのサイトコントローラーがメジャーになるのかも大事なところです。今後も、目の離せない分野と言って良いでしょう。
<筆者プロフィール> 児山秀幸(こやま・ひでゆき) 合法民泊やホステル・ゲストハウスなど簡易宿所の立ち上げや運営支援を手掛ける株式会社TAROコーポレーション代表取締役。旅館業法における「簡易宿所」の営業許可を取得した「タローズハウス鎌倉小町」を運営。Facebookグループ「簡易宿所・民泊ビジネス研究会」の管理人。Airbnbや民泊新法、旅館業法、特区民泊、東南アジア民泊、医療インバウンドなどに関するセミナー・コンサルティングも。
<前回号である第11回記事>