【復刻・民泊革命(第14回)】海外観光客の宿泊需要をどう考えるか

 1年4ヶ月間、2016年1月11日号から2017年4月24日・5月1日号まで計64回にわたって不動産業界紙「週刊住宅」に連載された「民泊革命」。掲載用に編集前の元原稿を民泊大学ウェブサイトで復刻し、過去に取り上げた事実が現在どうなっているか、著者のコメントを合わせて掲載します。 

オリンピック後の宿泊需要をどう考えるか

 3月30日「明日の日本を支える観光ビジョン構想会議」(議長・安倍晋三首相)は、訪日外国人観光客数の目標を倍増し、2020年4000万人、2030年6000万人とした。この政府の目標をどう見ると良いのだろうか。

試しに、2014年の海外観光客数の40位までのランキングを基に考えてみる。1位はフランスで年間8370万人。アメリカ、スペイン、中国と続いて、日本は1341万人で22位。2015年の1973万人を当てはめると17位になる。ベスト20に入っているのだから悪くないとも考えられる。

 しかし、その人口比を調べると、様相が変わる。1位はマカオで2712%、2位は香港で307%。5位のシンガポールは233%。日本は下から見た方が早く2014年が37位で10.6%。昨年の数字を当てはめても36位で15.6%。上位40カ国の中では、ワースト5に入る。

 観光客数が多い40カ国の真ん中程度でどうかと思い、海外観光客数の人口比20位を見ると、ベルギーで人口の75%。日本の人口の75%は9490万人だ。政府が2020年の目標にする4000万人で人口比31.6%、2030年の目標にする6000万人で47.4%となる。

 

年間1億5千万人論も

 元booking.com日本地区統括部長の勝瀬勝則氏によると、全世界の中で日本に地理的に似ているのは、イギリスだと言う。両方とも、大陸のそばにある島国である。イギリスの観光客数は、3261万人。人口比で52.6% だ。このうちおよそ75%がヨーロッパ大陸からの観光客だと言う。確かに、日本でも、東アジアからの観光客が多い。昨年の数字だと、中国、韓国、台湾、香港の4カ国だけで1419万人、71%、アジア全体だと1637万人82%だ。

 勝瀬氏によると、LCCを使って4時間以内にイギリスに来られる範囲、つまりヨーロッパ大陸の人口は3.8億人だが、日本を起点に同じように考えれば、東アジアと東南アジアがすっぽり入り、その人口は20億人程度。イギリスの5倍になる。日本に1億5千万人が観光に来てもおかしくないと言う。

 もちろん、円高の影響もあるだろうし、中国の景気や関税引き上げも心配だ。だが、そのマーケットを見据え、掘り起こす努力は必要だろう。

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