【復刻・民泊革命(第15回)】宿泊需要にどう対応するか

 1年4ヶ月間、2016年1月11日号から2017年4月24日・5月1日号まで計64回にわたって不動産業界紙「週刊住宅」に連載された「民泊革命」。掲載用に編集前の元原稿を民泊大学ウェブサイトで復刻し、過去に取り上げた事実が現在どうなっているか、著者のコメントを合わせて掲載します。 

 政府が訪日外国人観光客数の目標を2020年4000万人、2030年6000万人に倍増したが、十分マーケットがあることに前回触れた。そうなると、ただでさえホテルの空きが足りないのに、倍増する観光客にどう宿泊施設を提供するか、という問題が生じる。

宿泊の需要と供給はどうなっているか

 そもそも、日本ではどの程度観光客やビジネス客が宿泊施設に宿泊しているのか。平成27年は年合計5億5百万人泊で、前年から6.7%伸びている。季節変動があり、一番宿泊数の多いのは8月で5582万人泊、少ないのは1月で3535万人泊だ。

このうち海外観光客が年合計6637万人泊で、全体の13.1%である。仮にこの海外観光客の数が2倍になったとすると、約13%宿泊数が増えることになる。ピークの8月で考えると、6308万人泊に伸びる計算になる。平均1日約210万人泊となる。

 これに対し、全国の宿泊施設の稼働率は、平成27年が年間60.5%である。宿泊施設の形式別に見ると、シティホテル79.9%、ビジネスホテル75.1%、リゾートホテル57.3%、旅館37.8%、簡易宿所27.3%、団体等の宿泊所27.0%で偏りがある。

稼働率から計算すると、全国には約230万人泊できるだけの宿泊施設があるようだ。一見40%近い余裕があるように見えるが、特定の月、曜日、場所、宿泊施設に需要が偏ると、現状で需要を賄いきれないことになる。

ただ、逆に場所や宿泊施設の形式を問わなければ、需要の集中する時期でも、現状のホテル・旅館である程度需要をまかなえる。検討会でも、全旅連から京都では稼働率が高くても、電車で10分の大津では稼働率が20%以上低いという主張があった。その意味では、周辺の宿泊施設の情報を提供する仕組みを整備したり、地方の魅力や利便性に関する情報を旅行会社に提供し、例えばドラゴンルートのような、地方観光のルートをドンドン開発していく必要があるだろう。

 需要の集中する大都市圏の稼働率は、東京のビジネスホテルは昨年7月が93.2%、大阪のビジネスホテルは2月以降85~94%、京都のシティホテルは4、10、11月が94%前後で推移している。一般に80%を超えると予約が取りにくくなると言われるので、90%を越えた月はかなりの難しさになるだろう。ここに海外観光客の倍増が重なると、パンク状態になるのは目に見えている。

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