【復刻・民泊革命(第23回)】 検討会の最終答申をどう見るか

 1年4ヶ月間、2016年1月11日号から2017年4月24日・5月1日号まで計64回にわたって不動産業界紙「週刊住宅」に連載された「民泊革命」。掲載用に編集前の元原稿を民泊大学ウェブサイトで復刻し、過去に取り上げた事実が現在どうなっているか、著者のコメントを合わせて掲載します。 

 昨年11月27日から始まり、13回に渡って開催された「民泊サービスのあり方に関する検討会」が6月20日で終了、22日最終報告書が公開された。内容についてはトップ面等に譲るが、第2回から検討会を見てきて感じたことがある。

民泊の現場を知らない人がほとんど

 以前も書いたが、検討会はそのほとんどが民泊の運営をしたこともなければ、民泊に泊まったこともないメンバーで構成されていた。したがって、議論の大部分は、想像の上で民泊を思い描いて良い、悪いを判断したものだ。

後半に入って、民泊を実際に運営する一般社団法人民泊協会やとまれるが呼ばれた回もあったが、その視点が最終報告に活かされたとは考え難い。事業者の目からは、年間180日以内の規制をかければ、そのほとんどが成り立たなくなるのは、明らかだ。

検討会の議論は厚労省と観光庁の事務局がリードしていたが、実際に事業に当たる者の立場をどの程度理解してもらえていたのだろうか。

 

議論の視点が小さくなかったか

 検討会の議論を聞いていると、旅館業法の許可を取らない民泊施設が急激に増えた、騒音やゴミの苦情がある、施設は把握できず宿泊者もわからない、旅館業から取り締まれと言われ、官邸からは観光立国を目指す中宿泊不足を解決し、全国820万戸の空き家を活用しろと言われ、どういう対処なら丸く収まるかを追求した最終報告だった。

 いきなり対処ではなく、少子化の進む中で、観光産業のGDP比を上げていこうという政府の一連の考えに照らし、民泊を良いと考えるのか、悪いと考えるのかをはっきりさせた上で、それをどうコントロールするのが最適か、そのために法制度をどうするかを考えるという進め方もあった。

 また、最終回で全国賃貸住宅経営者協会連合会の稲本事務局長から指摘があったが、2020年4000万人の訪日観光客を迎えるとして、どの程度の宿泊施設があればいいのか、現在の宿泊施設がどの程度で、どの程度が新しく増えるのか、その辺りを客観的に分析して、空き家の活用がどの程度必要か、そのためにはどういう政策を採るべきか、計量経済学的なアプローチは見られなかった。

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