1年4ヶ月間、2016年1月11日号から2017年4月24日・5月1日号まで計64回にわたって不動産業界紙「週刊住宅」に連載された「民泊革命」。掲載用に編集前の元原稿を民泊大学ウェブサイトで復刻し、過去に取り上げた事実が現在どうなっているか、著者のコメントを合わせて掲載します。
6月13日国土交通省が「宿泊施設の整備に着目した容積率緩和制度の創設について」という通知を各地方自治体に出した。これを受け、東京都の整備局が6月24日都市開発諸制度活用方針などを改定した。2020年の海外訪日観光客4000万人の目標に向け、民泊制度の整備を含め、宿泊施設の確保に政府・自治体も動いている。ただ、まだまだ不十分な点もあるのではないだろうか。
共同住宅を宿泊施設に用途変更しようとすると
昨年2000万人弱だった訪日観光客数を4年後倍増させようというのが政府の目標だ。宿泊施設の不足を全てホテル建設でまかなうのはリスクが大きい。とすれば、既存建物の空いたスペースを簡易宿所転用していくのが合理的だ。それが民泊の一つの効用であるが、旅館業許可を取得するに際し、建築基準法をクリアするのが意外と難しい。
マンションに空き家が多いからと、ホテルに用途変更しようとすると、建物の用途を共同住宅からホテルに変更しなければならない。しかし、容積率いっぱいに建てた共同住宅はホテルに用途変更できない。共同住宅の容積率は、廊下、階段、エレベーターなどの共用部分を容積率算出時に算入しなくて良いが、ホテルは建物全体が容積率に算入されるからだ。
今回の国交省の通知は、容積率を1.5倍以下、300%を上限に容積率を緩和できるようにしたので、各自治体がこれに対応すれば、共同住宅をホテルに用途変更できるケースが増えると思われる。
東京都の方針改定だと、簡易宿所に対応していない
国交省は、ホテル・旅館・簡易宿所のすべてについて容積率緩和をしたのだが、東京都はこのうち、ホテル・旅館だけを認め、簡易宿所は認めなかった。そうなると、マンションの全体や一部を民泊施設して活用するため、簡易宿所に変更することには対応していない。
例えば、60㎡10戸、共用部分を含め700㎡のマンションで、2戸を簡易宿所として許可を得て民泊施設を運用しようとしたら、100㎡を超えるため、用途変更手続をしなければならない。しかし、東京都内で簡易宿所については容積率緩和に対応していないので、マンションとして容積率いっぱいの場合は、変更することができない。