【復刻・民泊革命(第27回)】 民泊 全国の市況を考える

 1年4ヶ月間、2016年1月11日号から2017年4月24日・5月1日号まで計64回にわたって不動産業界紙「週刊住宅」に連載された「民泊革命」。掲載用に編集前の元原稿を民泊大学ウェブサイトで復刻し、過去に取り上げた事実が現在どうなっているか、著者のコメントを合わせて掲載します。 

 民泊施設の数が増え、民泊の稼働率が落ちているとか、民泊施設の数が減り始めたという記事をインターネットで見るようになった。実際のところ、どうなのか。

そもそも観光客の数は?

 円高や中国が4月以降関税を引き上げたことにより、中国人の爆買いが少なくなり、免税店や訪日観光客向けに改装した百貨店が集客できなくなっていることが報じられている。日本に来る海外観光客は、減っているのだろうか。

 昨年の訪日観光客数は1974万人で過去最高を記録したが、今年上半期の訪日観光客数は約1171万人で昨年の上半期に比べ、約28%の伸びになっている。関税が引き上げられた4月以降の訪日中国客に絞っても、5月が50万人強で昨年比31%増、6月が58万人強で昨年比26%増だ。

 これを反映して、ホテル・旅館等民泊を除く宿泊施設の5月の定員稼働率は、昨年40.1%だったのが、今年57.9%でざっと44%の稼働率アップになっている。買物自体は減っているかもしれないが、観光客の数は減っていないのだ。

 

下がっている民泊の稼働率

 ところが、民泊運営者からは、このところ稼働率がかなり下がったという声を聞くことが多い。1~3月期の話だが、2015年と2016年を比較すると、稼働率が65%から55%に約10%下がったという分析もある。

なぜ、これだけ稼働率が下がったのか。需要が約1.3倍に増えているとすると、供給の方が問題になる。

Airbnbに登録されていた民泊施設の件数を調べると、昨年7月末で13295件。約1年後の現在が58546件。約4.4倍に増えている。これだけ増えれば、稼働率が下がるのも当然だ。稼働率が10%低下程度で済めば、むしろ民泊全体のパイはかなり増えていると言えるだろう。

では、現在の稼働率はどれくらいだろうか。民泊データサイトAirlaboで調べると、6月22日~7月21日までの1ヶ月で全国平均が50%だ。東京が57%、福岡が54%、京都が50%で、あとは全て50%以下の稼働率となっている。

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